2014 Fiscal Year Research-status Report
嵩高いシリル基で保護された糖受容体の一段階合成と3位選択的グリコシル化反応の開発
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25410170
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
幡野 健 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (40332316)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 嵩高いケイ素置換基 / 糖水酸基 / 速度論的保護 / 位置選択的グリコシル化 / オリゴ糖合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度には、C3位置選択的グリコシル化反応における嵩高いシリル保護基の汎用性の調査を行った。グルコース以外の単糖(ガラクトース、マンノース、N-アセチルグルコサミン)について、グルコース同様に嵩高いシリル基でそれら単糖類のC1及びC6位の水酸基を保護したのち、グリコシル化供与体とのグリコシル化反応を行い、そのグリコシル化位置選択性の調査を行った。シリル基にはt-ブチルジフェニルシリル基を用いた。 一部の単糖類では遊離の水酸基が複数残存するために、それらによって分子内水素ネットワークが形成され、これが原因でC3位以外の遊離水酸基でもグリコシル化反応がおこることが判明した。そこで、この分子内水素ネットワークの形成を阻害する目的で少量の極性溶媒を添加して同様にグリコシル化反応を行った結果、C3位だけにグリコシル化が達成されることが新たに分かった。従って、上述した単糖からシリル化により誘導された糖受容体のグリコシル化反応は、全て100%の位置選択性でC3位に起こることを今回明らかにした。 さらに、ラクトースのC1,C6及びC6'位の水酸基をt-ブチルジフェニルシリル基により保護したグリコシル化受容体を市販のラクトースから、1段階の反応により収率36%で合成した。これに対して、グルコース誘導体をグリコシル化受容体として用いたグリコシル化反応では、極性溶媒を添加剤として少量用いることでC3'に位置特異的にグリコシル化反応が起こった。このグリコシル化受容体は、インフルエンザウイルス接着糖鎖であるシアリルラクトース合成におけるグリコシル化受容体ともなり得る。今回、そのようなグリコシル化受容体を簡便な方法により合成できたことは、シアリルラクトースの大量生産にむけた応用にも期待が持たれることとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、4種類の単糖の水酸基を部分的にシリル基で保護することにより、これらをグリコシル化反応におけるグリコシル化受容体として用いるとC3位で位置選択的にグリコシル化反応がおこることを実験的に確認した。これは、嵩高いシリル基の立体障害により、立体障害の少ない遊離水酸基へのグリコシル化反応が優先されているものと考えられる。このことを2糖であるラクトースにも適応させることに成功し、インフルエンザ結合性糖鎖であるシアリルラクトース合成に不可欠なグリコシル化受容体の合成も達成することができた。シリル基の結晶性を利用した再結晶による生成物の精製までには、現時点では到達していないが、当初の計画を若干上回るペースで研究が進行しているために、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、計画書通りに生理活性なオリゴ糖合成に挑戦する。具体的には、26年度合成に成功したラクトースより誘導されるグリコシル化受容体を用いて、インフルエンザ結合糖鎖であるシアリルラクトース、およびデングウイルス結合糖鎖であるラクトネオテトラオースの合成を試みる。また、別途、従来の合成方法でも同じオリゴ糖の合成を検討し、実際に用いる溶媒量、シリカゲル量、作業時間などを比較し、本方法が工業的なオリゴ糖合成に対して優位であることを証明してみる予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、当該年度交付額の0.004%に満たない。概ね予定通り予算執行したと判断している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、化学合成に必要な薬品購入の一部に充てる予定である。
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