2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25410174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 俊樹 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70171775)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 銅イオン / ブルー銅タンパク質 / デノボ設計タンパク質 / 4-へリックスタンパク質 / 酸化還元電位 |
Research Abstract |
ブルー銅タンパク質は高い酸化還元電位を示すことが知られている。以前に作成した4つのαーへリックスからなる4本鎖へリックスバンドル型の人工ブルー銅タンパク質の銅イオン回りの環境を親水場、疎水場にすることで、さらに高い、あるいは低い酸化還元電位の調節を行った。親水場にはセリンやアスパラギンを入れ、疎水場にはフェニルアラニンやイソロイシンを加えた。タンパク質は対応する遺伝子を大腸菌で発現させアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等を用いて精製した。構造をCDスペクトル、会合を分析用超遠心で調べたところ、元のタンパク質と同様にほぼ1量体のαーへリックス構造であることがわかった。タンパク質そのものを用いた酸化還元電位の測定に大量のタンパク質を用いても小さなシグナルしか得られなかった。そこで、タンパク質に金結合ペプチドを結合した。金電極にこのタンパク質を固定化して酸化還元電位を測定したところ、微量で大きなシグナルが得られることがわかった。これまでに作成した変異タンパク質の酸化還元電位を測定したところ、銅イオン回りの環境を変えてもあまり変化は得られなかった。これらのタンパク質の紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、600 nmと450 nmの比が変わっており、親水、疎水の環境だけでなく、銅イオンの配位構造の変化も関連していると考えられる。今後は銅イオンの配位構造を変えずに親水、疎水場を変える工夫や新たな銅イオンの配位構造の設計を行う予定である。 3本鎖へリックスバンドル型のタンパク質の2カ所にジスルフィド結合を配置して、熱や有機溶媒中でも安定な構造を持つタンパク質を設計した。このタンパク質を作成した。αーへリックス構造を有し、熱や有機溶媒中でも安定化が見られた。詳細な構造やルテニウムなどの金属イオンの配位を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4-へリックスバンドルタンパク質の銅イオン回りに親水性残基や疎水性残基を加えてもタンパク質の構造や、銅イオンの結合には影響しなかった。しかし、酸化還元電位の変化は見られなかった。当初は親水あるいは疎水環境で酸化還元電位が変化すると予想をしていたが、銅イオンの配位構造の変化も影響することがわかった。このことは今後の方針の指標となった。 有機溶媒や熱に安定になった3本鎖へリックスバンドル型のタンパク質が構築できた。ルテニウムなどの金属イオンを配位させるのに必要な条件で安定なタンパク質を作成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で示したように銅イオン回りを親水あるいは疎水環境でも酸化還元電位が変化せず、銅イオンの配位構造の変化も影響することがわかった。このことを踏まえ、銅イオン回りの環境と銅イオンの配位構造のの関連について調べる。また銅イオンの配位構造や配位するリガンドの種類を変えたタンパク質を作成する。例えばブルー銅タンパク質とは配位構造が異なる機能が未知のレッド銅タンパク質が見いだされている。この配位構造を4-へリックスバンドルタンパク質内に作成し、酸化還元電位を測定する。 有機溶媒や熱に安定になった3本鎖へリックスバンドル型のタンパク質にルテニウムなどの金属イオンを配位させる実験を行い、活性を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今回は装置の修理費が発生しなかったため、大学からの基盤経費を研究に用いることができた。タンパク質が不安定であったためにEPR測定の条件設定に時間がかかった。そのため、予定していた全ての変異体を作成できずその費用が残った。しかし、今回作成した変異体から論文が出せるほどの結論が出せている。 銅イオンの配位構造を変えたタンパク質の作成、酸化還元電位の測定を行う。同時にヘモシアニンモデルタンパク質やSOD活性を持つタンパク質の設計、作成を行う。また、これまでに幾度となく行ってきたがまだ成功していないタンパク質ー銅イオン複合体の結晶化を試みる。これらの実験には多くの蛋白質変異体や多くのタンパク質量が必要となるが速やかに行う。
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