2014 Fiscal Year Research-status Report
Dual糖鎖クラスター効果による抗ピロリ菌剤の開発
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25410186
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
山ノ井 孝 城西大学, 薬学部, 教授 (20182595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 慶喜 公益財団法人野口研究所, その他部局等, 研究員 (00442567) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗ピロリ菌剤 / 糖鎖 / αGlcNAc / クラスター / シクロデキストリン / デンドリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、胃粘膜の表層粘膜に棲息するピロリ菌がルイスb関連糖鎖に結合し、胃粘膜下層のムチン糖鎖がピロリ菌に対し抗菌作用を有するという二つの知見を基に、従来の抗生物質とは異なる機序でのピロリ菌を標的とした抗菌剤を開発する。すなわち、ルイスb関連糖鎖とムチン糖鎖の二種類の糖鎖から成るハイブリッド糖鎖集積体を用いた高活性な抗ピロリ菌剤の創製を目指す。この抗菌剤はルイスb型糖鎖がピロリ菌のトラップ剤として働き、近傍のムチン型糖鎖が抗菌剤として機能する仕組みを持つ。本研究では、二種 類の糖鎖の集積効果による新しい概念である“Dua1糖鎖クラスター効果”の発現を目指す。実際には、ルイスb型糖鎖とαGlcNAc型糖鎖の二種類の糖鎖から成るハイブリッドタイプの糖鎖分子集積体を化学合成して、抗ピロリ菌活性評価を行う。この抗ピロリ菌活性評価では、二種類の糖鎖の集積効果に基づくDua1糖鎖クラスター効果の有効性の検証を兼ねている。 本研究は、1)糖鎖合成、2)糖鎖分子集積体を構成するスキャフォールド材の設計・合成、3)ハイブリッド糖鎖集積体の効率的合成法の開発、4)抗ピロリ菌活性評価、の構成から成り、研究の成果はこれらの相互の進展に掛かっている。平成26年度は、昨年度に引き続いて糖鎖合成及びスキャフォールド材の設計・合成を行った。さらにハイブリッド糖鎖集積体の合成法の開発を目指し、平成25年度にスキャフォールド材として大量合成したヘプターアジドーβ-シクロデキストリンへの糖鎖導入を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ルイスb型糖鎖とαGlcNAc型糖鎖から成るハイブリッド糖鎖集積体合成する前段階の試験的実験として、構造の異なるいくつかの糖誘導体から選ばれる二種類の糖誘導体を様々な化学量論量を考慮してヘプターアジドーβ-シクロデキストリンへの集積化を検討した。これら二種類の糖誘導体はクリック化学として知られているHuisgen環化反応によって、シクロデキストリンへ導入した。二つの糖鎖を総計で反応点に対して2倍量過剰にして用いたところ、いずれも反応自体は速やかに進行して7置換体が収率良く得られた。構造が似ている糖誘導体ではほぼ導入数が等しくなったのに対して、立体障害が異なると予想される糖誘導体では、導入数に大きな違いが見られることがわかった。さらに、化学量論量を制御すれば、反応性が異なる2つの糖誘導体を用いても導入数を任意に制御できることを明らかにした。これらの成果から、ハイブリッド糖鎖集積体の合成法の原理を確立できたと考えられる。 平成26年度も二種類のルイスb型糖鎖(Fucα1→2Galβ1→3(Fucα1→4)GlcNAc及びFucα1→2Galβ1→3GlcNAc)及びαGlcNAc型糖鎖(GlcNAcα1→4Galβ1→4GlcNAc)の化学合成を併せて行って、目的評価化合物の合成に向けた準備は整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の成果として得られたシクロデキストリンへのハイブリッド糖誘導体集積体の合成情報を基に、ルイスb型糖鎖(Fucα1→2Galβ1→3(Fucα1→4)GlcNAc及びFucα1→2Galβ1→3GlcNAc)とαGlcNAc型糖鎖(GlcNAcα1→4Galβ1→4GlcNAc)から成るハイブリッド糖鎖集積体の化学合成を検討する。スキャフォールド材はシクロデキストリンの他に、メチルL-アラニンをコアとするL-リジン残基を三世代延長したアミノ酸デンドリマー誘導体を用いる。スキャフォールドへの糖鎖の固定化は、Huisgen環化反応以外にも還元的アミノ化反応を利用することで、反応性や導入効率の改善を図る。得られたハイブリッド糖鎖集積体は、マススペクトルによって、二種類の糖鎖の導入率や導入割合を算出する。糖鎖の立体障害等が原因で糖鎖の導入率が悪い場合には、糖鎖とスキヤフォールド分子の間にスペーサーを入れた糖鎖集積体の設計を行う。化学合成されたハイブリッド糖鎖集積体は随時、抗ピロリ菌活性の評価を行う。ハイブリッド糖鎖集積体を用いることでのDua1糖鎖クラスター効果を見積もり、ハイブリッド糖鎖集積体と抗ピロリ菌活性の構造活性相関についても議論する。これらの情報を基に、さらに新たなハイブリッド糖鎖集積休を設計・合成を行う。得られた抗ピロリ菌活性評価を検証して、高度な抗菌活性を有する抗ピロリ菌剤の開発に向けた情報を得ることが最終的な課題である。
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Causes of Carryover |
抗菌活性試験の外部依頼に利用したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
抗菌活性試験に45万円を予定している。
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