2014 Fiscal Year Research-status Report
肢再生制御蛋白質におけるGPIアンカー機能の膜存在下での固体NMRによる解明
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25410187
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
三浦 薫(野村薫) 公益財団法人サントリー生命科学財団, その他部局等, 研究員 (90353515)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | GPIアンカー型蛋白質 / 脂質二重膜 / 固体NMR / 肢の再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで蛋白質とアンカーとの結合反応にチオール-マレイミド反応を用いていたが、Prod1は分子内にS-S結合を4つ持つことより、反応のためにProd1のC末端のチオールをフリーにすると分子内S-S結合も切断される可能性があることが昨年度までの結果で分かった。そこで、今年度は蛋白とアンカーの結合方法をチオール-マレイミド反応から酵素(SortaseA)を用いたものに変更した。これに伴いProd1のベクターを改良したことや、蛋白発現の際のコンピテントセルを検討したことにより、Prod1の最終収率を飛躍的にアップすることが出来た。また精製の最終段階でProd1を巻き戻した後にHPLCとイオン交換クロマトグラフィーを用いることで正しくfoldしたProd1のみを精製することに成功した。さらに、SortaseAによる結合反応に合わせてアンカーを合成しなおし、このアンカーをバイセルに組み込んで、バイセル上でアンカーとProd1をSortaseAにより結合させることに成功した。このように調製したサンプルの15N-1H2D固体NMRスペクトルを測定した。未反応のProd1をバッファに溶かしたものに比べて、アンカー型Prod1を膜に挿入したものは、Prod1のアンカーに近い部分のピークのみが観測されたことより、Prod1はアンカーにより膜に繋がれる事で会合を起こしたか、膜と強く相互作用していると考えられる。さらに、アンカーの入った脂質平面膜に蛍光標識したGPIアンカー型Prod1をSortaseAを用いて結合させる事で平面膜にアンカー型Prod1を挿入したサンプルを調製し、これを蛍光顕微鏡で観測した。その結果、大部分のアンカー型Prod1が会合体を形成し、会合体を形成していない一分子のProd1も時間が経つと会合体に吸収されていく様子が観測できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Prod1が分子内に多くのS-S結合を持っていることからこれまではサンプル調製で難航していたが、カップリング反応をシステインを用いないSortaseAを用いた酵素反応に変更したことをきっかけにサンプル調製が順調に進み、NMRや顕微鏡を用いた相互作用解析まで進むことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
13C標識Prod1の13CNMRスペクトルの測定を行い、化学シフトの値より膜上でProd1のコンフォメーション変化があるかを解析する。13Cの化学シフト値は蛋白質の2次構造の変化に敏感なので、この値によりコンフォメーションが解析できる。バイセルに挿入したアンカー型Prod1は、会合体を形成しているために運動性が低くなっているものの、バイセル自体の運動性が高いためにスカラーカップリングを利用したINEPTでも、双極子相互作用を利用したCPでも観測が出来なかった。バイセルは室温でも運動性が高いが低温にすると運動性はさらに高くなる一方、一重相リポソームであるLUVは室温ではバイセルサンプルよりも運動性が低く低温ではさらに運動性が低くなるので、双極子相互作用を利用した測定での会合体部分の解析が期待できる。そこで、LUVを用いたサンプル調製を試みる。膜によるバックグラウンドの影響で測定が困難な可能性もあるが、CDを用いたコンフォメーション変化の解析も試みて、NMRでの結果の確認を行う。さらに、アンカー型Prod1は何個集まって会合体を形成しているかを明らかにするために、平面膜サンプルの蛍光顕微鏡の画像中でProd1が会合体を形成している部分の分子数を蛍光強度から求め、その分布を解析する。
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