2013 Fiscal Year Research-status Report
レアメタル分離に疎水基―金属配位水反発を利用した大環状ホスト分子含有樹脂の開発
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25410192
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
大渡 啓介 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70243996)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | レアメタル / イオン認識 / 大環状ホスト分子 / イオン交換樹脂 / 抽出 / 分離剤 |
Research Abstract |
レアメタルの個別分離剤の開発のために、大環状ホスト化合物であるカリックス[4]アレーン誘導体を母体とする抽出試薬、ならびにカリックス[4]アレーン誘導体を含有するメチレン架橋型樹脂の開発を行った。分離剤開発の概念として、申請者は分離剤の疎水基が錯体を形成する際に金属イオンに残存する配位水と反発して分離能を発現しているメカニズムを提案している。 平成25年度は抽出試薬としてアルキル鎖が異なる4種のトリアルキル―モノ酢酸型p-t-オクチルカリックス[4]アレーンを、メチレン架橋型樹脂としてp-位を脱アルキル化したトリアルキル―モノ酢酸型カリックス[4]アレーン樹脂を調製し、アルカリ金属イオン類の抽出挙動と吸着挙動について検討した。各分離剤の調製は、原料のp-t-オクチルカリックス[4]アレーンおよび脱ブチル型カリックス[4]アレーンからO-トリアルキル化、エステル導入、加水分解の3段階反応により行った。これら分離剤によるアルカリ金属イオンの抽出および吸着はpH依存性を示し、イオン交換によって取り込まれることが明らかとなった。選択性については、抽出では5つのアルカリ金属イオンのうち明確なリチウム選択性が観察された一方で、樹脂として吸着を行った場合には、セシウム選択性を示す結果となった。ナトリウムイオンを鋳型として合成されるカリックス[4]アレーンがリチウムイオン選択性を示すことは意義深く、導入するアルキル鎖の立体障害はナトリウムに対するリチウムの選択性に大きく影響することが分かった。樹脂の方では最も大きなセシウムに選択性を示し、他の4つのイオンについてはほぼ同様の選択性を示したことから、脱水和の影響がアルカリ金属イオンに対する選択性に大きく関わっていると考えられる。抽出挙動についてリチウムとナトリウム充填後のNMRスペクトルにより関与する配位部位とアルキル鎖の影響を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H25年度は4種のアルキル鎖が異なるトリアルキル―モノ酢酸型カリックス[4]アレーンを調製し、アルカリ金属イオンの抽出挙動について検討を行っている。抽出試薬としてアルカリ金属イオンの中で最も小さなリチウムイオン選択性を示すことを見出しており、目的の1つは達成できている。また、リチウムとナトリウム充填前後の抽出試薬の1H-NMRスペクトルについて比較検討を行っており、金属配位部位を明確にすると共に、分離に及ぼすアルキル鎖の影響についても言及できている。しかし、アルキル鎖と金属イオンに残された配位水との反発の有無については検討が至っておらず、次年度以降の検討課題である。 また、イオン交換樹脂についてもトリアルキル―モノ酢酸型カリックス[4]アレーンを含有する3種のメチレン架橋型樹脂を調製し、アルカリ金属イオンの吸着挙動について検討を行っている。残念ながら、抽出におけるイオン選択性を維持する結果が得られていないが、水和水の影響が大きいと考えられることから、次年度以降の検討課題とする。 以上、概ね研究の進捗状況は順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、抽出挙動については、金属に残された水和水についての調査、アルキル鎖との疎水―親水反発の有無についての検討を行う。イオン交換樹脂については、メチレン架橋型の樹脂でリチウム選択性を示さなかったことから、その理由についての検証、ならびに多孔性樹脂に抽出試薬としてのトリアルキル―モノ酢酸型カリックス[4]アレーンを含浸した含浸樹脂を調製し、アルカリ金属イオン類の吸着挙動について検討を行う。 また、メチレン架橋型樹脂を調製する際のトリアルキル化におけるストロンチウムの鋳型効果に着眼し、カリックス[4]アレーンのローワーリムをエチレン鎖などで架橋した抽出試薬の開発を行い、ストロンチウムの選択的抽出について検討を行う。 また、抽出挙動の応用として、トリアルキル―モノ酢酸エステルおよびモノ酢酸アミド型カリックス[4]アレーンを電極素子とするリチウム選択性電極の開発も併せて行う。 本研究は分離剤の疎水基が錯体を形成する際に金属イオンに残存する配位水と反発して分離能を発現しているメカニズムを提案しているので、この仮説の立証をしっかり行い、新たな分離剤開発の概念に組み込みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度は物品として計上していたpHメーターの価格が当初計上額よりも低いことが分かった。また、学生謝金を当初計上していたが、使用できないことが分かった。 この差額分について、主としてH26年度の旅費(溶媒抽出国際学会ISEC2014)、論文の別刷り料など、活発な成果報告目的に有効に使用したい。
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Research Products
(9 results)