2013 Fiscal Year Research-status Report
分子プレカーサー法による金属酸化物薄膜太陽電池の形成
Project/Area Number |
25410204
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 光史 工学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10154105)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子プレカーサー法 / 金属酸化物 / 薄膜 / 太陽電池 |
Research Abstract |
当該研究の目的は,独自に開発した化学的湿式法の分子プレカーサー法を用いたp型半導体Cu2O薄膜形成と,Cu2Oを用いた金属酸化物太陽電池の創成である。平成25年度は、基礎的研究を重点的に遂行した。具体的には,分子プレカーサー法で形成したCu2O薄膜の基礎物性評価とCu2O薄膜形成メカニズムの解明である。 EDTAを配位子とする銅錯体を含むコーティング溶液を利用して不活性ガス雰囲気中で熱処理し,Cu2O薄膜を形成した。この薄膜の電子物性は,キャリア移動度,キャリア濃度,抵抗率をホール効果測定で評価し,それを半導体特性とした。分子プレカーサー法で形成したCu2O薄膜の半導体特性は,すでに報告されているPVD法で形成したCu2O薄膜とほぼ同等の値を示した。このEDTAを配位子とする銅錯体を含むコーティング溶液を利用して不活性ガス雰囲気中で熱処理して形成したCu2O薄膜は,II価のCu錯体から0価の銅金属単一層を経由してI価のCu2Oが形成されることがXRDでわかった。これまでに報告されているCu2Oの形成方法は,直接結晶を形成するPVD法や,銅金属を高温で強熱してCuOからCu2Oを形成する直接酸化法,または,p型は確認されていないが酢酸銅を高温で分解して形成するゾルゲル法などがある。このように,他の方法と薄膜形成ルートが全く異なることが,優れた半導体特性をもつCu2O薄膜の形成メカニズムに関係していると考えられた。 これらの背景をもとに,XRDの精密な測定によって,ピーク高さ,半価幅,温度変化から各反応の活性化エネルギーを求めた。また,XPSとAESから,薄膜内部の炭素,窒素,酸素量変化を調べて分子プレカーサー法によるCu2O薄膜の形成メカニズムを報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
化学的湿式法(分子プレカーサー法)によるCu2O薄膜形成において,高い再現性が得られたことが大きな理由と考えている。一般的なゾルゲル法を含む化学的湿式法においては,湿度や温度などの実験条件に著しく影響を受け,その再現性に問題が生じやすい。今回提案している分子プレカーサー法は,優れた半導体特性をもつCu2O薄膜を再現性良く形成可能だった。 このような優れた半導体特性を示す要因には,最近明らかにし報告したように,Cu2O薄膜内部に炭素や窒素などの不純物を含まないことが挙げられる。また,このような高純度のCu2O薄膜が,プレカーサー膜を構成する錯体内の中心金属の銅イオンと,配位子との間で熱反応中に起こる自発的な酸化還元反応によって形成されることが明らかになった。このように,形成膜内部に不純物を含まない理由も,反応機構の研究から明確になった。 以上のとおり,分子プレカーサー法で形成したCu2O薄膜の半導体特性は,反応機構に依存する高純度な組成に寄ることが明らかとなり,これが当初の計画以上に進展した理由と考えられ,基礎的な研究の重要性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に形成したCu2O薄膜の厚膜化や配位子の設計によるキャリア濃度コントロールを試みる。具体的には,実際に太陽電池で使用することを想定し,数μmで光吸収が高いCu2O薄膜の形成を多層化処理またはスピンコート法以外での塗布方法で検討する。また,最終目的である金属酸化物薄膜の形成は,n型半導体薄膜の形成も必要である。報告がある金属酸化物薄膜太陽電池のほとんどは,n型半導体としてZnOを使用している。ZnOは,透明電極としても利用できる上,n型半導体として高いキャリア濃度をもてることが知られている。そこで,今後は分子プレカーサー法でZnO薄膜の形成を試み,形成薄膜をホール効果測定で半導体特性を調べる。また,n型半導体として市販されているZnOを用いたn-ZnO/p-Cu2O金属酸化物薄膜太陽電池の形成を試み,Cu2O薄膜のキャリア密度と変換効率の相関を調べる。したがって,本年度は,金属酸化物薄膜太陽電池形成の基礎的な研究として,主にn型半導体薄膜の形成を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費等で使用した額の端数として生じた。 消耗品費で使用する。
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Research Products
(12 results)