2014 Fiscal Year Research-status Report
アントシアニンとメソ細孔体の複合化による天然色素系フォトクロミック材料の開発
Project/Area Number |
25410213
|
Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
柴田 雅史 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (00513657)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | フォトクロミック材料 / アントシアニン / メソポーラスシリカ / 複合体 / ルテオリニジン色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
ルテオリニジン色素はフォトクロミック特性(光照射による着色と経時による消色)を示すアントシアニン類であるが、メタノール溶液状態でのみその特性を発現することが知られている。本研究では、 均一なナノ細孔を有する無機粉体であるメソポーラスシリカと色素を複合化することで、ドライ条件など多様な条件で使用できる「フォトクロミック粉体」の開発を目指している。本研究の目的が達成されれば、合成フォトクロミック色素では使用できない化粧品や食品、 肌に直接ふれる日用品、玩具など高い安全性が望まれる分野への利用が可能な「天然色素系フォトクロミック粉体」が得られる。 昨年度までの検討で、ルテオリニジン色素およびルテオリニジン色素を含有するコウリャン(イネ科植物)抽出物を、メソポーラスシリカに吸着させることで、色素濃度の高い複合体(粉体)を得られることを確認した。しかしながら複合体は暗所下での消色をおこしにくく、フォトクロミック性能は充分ではなかった。 平成26年度はルテオリニジン色素のフォトクロミック挙動をより明瞭に発現させるための条件の検討をおこなった。その結果、消色を効率的におこさせるためには、色素が溶液状態であることが必要であることが明らかになった。ただし、従来から研究されているメタノール溶媒系では、毒性および揮発のしやすさから本研究の目的には適さない。そこで、化粧品原料として使用可能な各種溶剤について検討し、エタノール・水混合溶媒および1,3-ブチレングリコール・水混合溶媒において、明瞭なフォトクロミック挙動を示すことを見いだした。特に後者は比較的揮発しにくい溶媒であるので、メソポーラスシリカの細孔中に色素溶液を導入した後、揮発を抑制するような封孔処理をおこなえば、「天然色素系フォトクロミック粉体」が作成できるのではないかと期待される
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、ルテオリニジン色素のフォトクロミック効率の向上、特に消色がおこりやすくなる条件について検討をおこなった。その結果、当初予定していたような、色素がメソポーラスシリカに吸着した状態のままでは消色がおこりにくく、すみやかな消色には色素が溶液状態であることが必要であることが明らかになった。 しかしながら溶媒として、化粧品に使用可能でかつ比較的揮発をしにくい1,3-ブチレングリコール・水混合溶媒が良好であることを見いだされたので、今後はこの色素溶液をメソポーラスシリカ細孔内に閉じ込める(カプセル化)手法を確立することで、予定通りに「天然色素系フォトクロミック粉体」の開発が可能であると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、色素をメソポーラスシリカ細孔内に吸着させた複合体を調製し、その細孔内の親水性疎水性バランスや電荷を調整することで効率的なフォトクロミック特性の発現を目指したが、平成26年度の検討により、有機溶媒・水混合系と色素を共存させることが好ましいことが明らかになった。そこで細孔内に溶媒を閉じ込める方法での「天然色素系フォトクロミック粉体」実現を目指すこととした。 平成27年度は、色素と1,3-ブチレングリコール・水混合溶液をメソポーラスシリカ細孔内で安定化させることと、溶媒が細孔から蒸散や溶出しにくくするための封孔手法について検討をおこなう。 また、コウリャン抽出液からルテオリニジン色素の分離技術の開発については、現在おこなっているHPLCによる分離精製よりも多量に精製可能な、液液抽出とカラムクロマトの組み合わせによる分離精製を検討する。
|
Causes of Carryover |
試薬として購入しているルテオリニジン色素が、価格変更によって予定本数を購入できず、差額が次年度使用額として生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度の予算と併せて試薬を購入する。
|
Remarks |
化粧品材料化学研究室 http://www.shibatalab.org/
|
Research Products
(8 results)