2013 Fiscal Year Research-status Report
液晶エラストマーを利用したフイルム型ディスプレイ設計の基礎的研究
| Project/Area Number |
25410214
|
|---|
| Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
| Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
|---|
Principal Investigator |
平岡 一幸 東京工芸大学, 工学部, 教授 (50267530)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
| Keywords | 液晶エラストマー / 液晶 / 高分子 / フイルム型ディスプレイ / 液晶ディスプレイ / 人工筋肉 / アクチュエーター / 高分子液晶 |
|---|
| Research Abstract |
ポリシロキサンを主鎖に持つ側鎖型液晶エラストマーとポリエステル系主鎖型液晶エラストマーの両方について、応力印加架橋により配向試料を作成し、相転移に伴う分子配列変化と巨視的な物性変化を検討した。
(1)側鎖型液晶エラストマー：二軸性の応力印加架橋により巨視的なC2対称性を持つキラルスメクチックC(SmC*)エラストマーを作成し、昇降温における形状変化を定量的に評価するとともに、X線回折により分子再配列の解析を行った。試料作製は2つの異なる応力印加過程における架橋を試みた。一つ目は、架橋反応時にせん断力を印加し分子の傾く方向を揃えることで均一配向させた試料(以下、せん断変形試料)であり、今一つは2段階の一軸延伸により均一配向させた試料(2段階延伸試料)である。前者のせん断変形試料の場合、SmC*相からSmA相にかけて、層方線方向は変化せずダイレクターが傾いた。さらにダイレクターの傾き角θの変化に伴い試料形状も菱形から直方体へと変化した。一方、2段階延伸試料の場合、SmC*相における昇降温に際してダイレクターは不変であり層の回転が確認された。層回転に伴う分子再配列は試料形状にはほとんど反映しなかった。
(2) 主鎖型液晶エラストマー：ビベンゾエート(BB)を骨格部とする主鎖型液晶ポリエステルBB-n(nは骨格部間のアルキル鎖の炭素数)を用いて検討した。BB-4*(2Me)/6ポリマーの重合時に3官能性の1,2,6,ヘキサントリオールを加えることで、スメクチック相を有する主鎖全体がメソゲンで構成された液晶エラストマーを合成した。重合途中で試料を取出し、等方相-液晶相転温度近傍にて一軸応力により8倍程度延伸しながら2次架橋を行った。得られた配向液晶エラストマー(配向秩序パラメーター0.74)は、液晶相‐等方相転移を含む昇降温において500%以上の自発的・可逆的な伸縮変形機能を有した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に記載したように、ポリシロキサンを主鎖とする側鎖型液晶エラストマーとポリエステル系の鎖型液晶エラストマーの両方について、応力印加架橋により配向試料を得ることに成功した。側鎖型液晶エラストマーでは、2段階延伸により得られた均一配向SmC*エラストマーが、「大きな光軸変化」と「小さなせん断変形」という矛盾した機能を併せ持つことを見出した。この試料は変形少なく光軸変化できるので、フイルム型液晶ディスプレイ材料として適していると考えている。また主鎖型液晶エラストマーにおける検討では、全メソゲン型の主鎖型スメクチック液晶エラストマーを用いることで、500％以上の自発的・可逆的伸縮機能を持つ材料の開発に成功した。望外の成果なので、当初の予定にはなかったが、この主鎖型スメクチック液晶エラストマーを用いた大変形試料の開発を今後の研究に加えたい。一方、電界印加架橋については大きな進展は見られず今後の検討課題として残った。また、赤外分光分析を用いた解析についても大きな進展が見られず今後の検討課題として残った。以上を鑑みると、平成25年度は研究実施計画からやや遅れていると判断した。
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成25年度で得られた側鎖型液晶エラストマーならびに主鎖型液晶エラストマーを対象として、昇降温時の構造と物性の変化について検討を引き続き行い、加えて電場誘起の分子再配列と形状変化の評価を行う。全メソゲン型の主鎖型スメクチック液晶エラストマーについては、同試料を用いた大変形試料の開発を今後の研究テーマに加える。具体的な予定は以下の4点である。
(1) 外場変化（温度や電界）による分子配列と形状変化の検討：平成25年度で得られた試料[(a)一軸配向試料(側鎖型・主鎖型)、(b)２段階延伸によるポリドメイン試料(側鎖型)、(c)せん断によるモノドメイン試料(側鎖型)]を対象にして、昇降温時の分子配列変化と形状変化、ならびに電場誘起による変形を観測する。
(2)新規試料の探索：主鎖型液晶エラストマーについては一軸延伸のみでなく二軸応力印加による配向試料作製を検討する。側鎖型液晶エラストマーについては、コレステロール誘導体など新規メソゲンを検討する。加えて架橋剤密度と変形機能の関係について検討を加える。
(3)大変形試料の開発：従前は主鎖型スメクチック液晶エラストマーを用い「液晶-等方相転移温度直下」にて「破断しない程度の応力」を加え応力印加架橋を施してきた。26年度は、応力印加架橋時の「温度」や「印加応力」などについて組織的検討を行い、重合条件の最適化を図る。
(4)赤外分光分析を用いた解析: 平成25年度で得られた試料等について、赤外分光分析によりメソゲンの配向と高分子鎖の広がり状態を評価する。
|
