2013 Fiscal Year Research-status Report
ポリビニルアルコール系高性能エネルギー変換材料の開発
Project/Area Number |
25410220
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
塩谷 正俊 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10196363)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ポリビニルアルコール / ヨウ素 / 膨潤 / アクチュエーター / メカノケミカル / ケモメカニカル |
Research Abstract |
本研究は,ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素処理を施すことによって,従来にない膨潤特性及び力学特性を持つ新たなエネルギー変換材料を得ようとするものである。この材料に対してX線回折による構造解析及び力学試験を行った。また,この材料が従来にない特性を示すことは,溶媒で湿らせた布で拭いた板の上でこのフィルムがジャンプを繰り返すことに表れているため,ジャンプする過程におけるフィルム形状の変化を画像処理を用いて定量的に解析した。これらの結果,以下のことが明らかとなった。(1)フィルムのジャンプは,フィルムの上下面でそれぞれ膨潤,脱膨潤が起こってフィルムが屈曲すること,及び上に凸な形状から下に凸な形状への変化が,徐々にではなく座屈を伴って起こることに起因する現象である。(2)ジャンプの運動エネルギーは膨潤エネルギーに由来するものであり,ケモメカニカルシステムが形成されている。(3)フィルムの弾性率が高いために,座屈が起こる応力も高く,座屈が起こるまでの時間も長い。このため座屈が起こるまでの間に,ジャンプするに十分な大きさのエネルギーが膨潤エネルギーからひずみエネルギーに変換されて蓄積される。(4)緩和時間スペクトルに極めて長時間の成分が含まれているために,フィルムの変形に伴うエネルギーの散逸が少ないことも,高いジャンプを可能にしている一因である。(5)物理化学的考察によると,材料の各種特性の中で弾性率のみが高くなると膨潤エネルギーが低下することがわかる。従って,この材料の大きな膨潤エネルギーは,この材料と溶媒の相互作用パラメーターが大きな負の値をとっていることに起因すると推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヨウ素処理条件の最適化を図るために,数多くの異なる条件でヨウ素処理PVAフィルムを製造して,その構造・物性を解析・測定することを計画していた。試料の作製に予想以上の時間を要したため,一部は今後検討することとした。しかし,この材料の膨潤メカニズムの特異性や従来の高分子ゲルとは大きく異なる力学特性など,基本的な点は明らかになった。以上から,概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヨウ素処理条件の最適化を図るために,さらに多くの異なる条件でヨウ素処理PVAフィルムを製造して,その構造・物性を解析・測定する。平成25年度の研究で,ヨウ素処理PVAと溶媒の相互作用パラメーターが大きな負の値をとっていると推定した。これを実証するために,吸着等温線の測定などにより相互作用パラメーターを定量化することを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では,平成26年度の早い時期に放射光施設を利用してヨウ素処理PVAのナノポア構造を解析することを予定しており,平成25年度中にこの実験の準備を行う費用を計上していた。本研究に関する実験は高エネルギー加速器研究機構放射光科学研究施設の課題として採択されたが,平成26年度前期中にはビームタイムが配分されない見通しとなったため,実験準備の費用を平成26年度に繰り越して使用することとした。 放射光を利用して膨潤過程における微細構造変化を解析する。また,吸着等温線測定装置を作製し,ヨウ素処理PVAと溶媒の相互作用パラメーターを決定する。
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