2013 Fiscal Year Research-status Report
高導電ソフト電極の開発によるイオン伝導アクチュエータの高速応答化
Project/Area Number |
25410222
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
奥崎 秀典 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (60273033)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 導電性高分子 / PEDOT/PSS / 糖アルコール / 熱処理 / 伸縮性電極 / アラビトール / キシリトール / 電導度 |
Research Abstract |
ポリ(4-スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)は代表的な導電性高分子であり,高い導電性と透明性,優れた耐熱性と安定性を有することから,帯電防止材や固体電解コンデンサー,有機ELのホール注入層などに幅広く用いられている。しかし,PEDOT/PSSフィルムは,コロイド粒子表面に存在するPSS間の水素結合のため脆く,電導度は低い。本研究では,糖アルコールの添加と熱処理により,電導度と伸縮性の両方を同時に改善することに成功した。 フィルムの電導度は,アラビトールを40%以上添加することで急激に上昇し,60%で最大となった。また,120 ℃で熱処理することにより,電導度は300 S/cm以上に達し,熱処理前のフィルム(0.4 S/cm)やPEDOT/PSSのみのフィルム(1.2 S/cm)に比べ約2~3桁増加することがわかった。興味深いことに,電導度上昇と同時に,伸縮性が著しく向上することがわかった。PEDOT/PSSフィルムは比較的硬く脆いのに対し,120 ℃で2時間熱処理することにより切断伸度は25%に達し,PEDOT/PSSフィルムに比べ2.5倍向上した。実験結果から,アラビトール添加と熱処理の組み合わせが, PEDOT/PSSフィルムの高導電化・高伸縮化に重要な役割を果たしていることが明らかになった。実験結果から,可塑効果とキャリア移動の促進効果に重要な糖アルコールの特徴は(i)融点が低いこと,そして(ii)脱離温度が高いことと考えられる。すなわち,フィルムの導電性や伸縮性を高めるには糖アルコールが低い温度でフィルム内に均一分散する必要がある。さらに,フィルムの伸縮性を保持するためには糖アルコールが脱離しにくいことが重要である。結果として,これら二つの特徴を備えたアドニトール,アラビトール,キシリトールの五炭糖アルコールが高伸縮性・高導電性を有するPEDOT/PSSフィルムの作製に最適であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子ペーパー、タッチパネル、有機トランジスタ、フレキシブル太陽電池など有機エレクトロニクス素子の作製において、柔軟で伸縮性を有する配線や電極材料の開発が不可欠である。一方、小型、軽量、柔軟、動作音が無い高分子ソフトアクチュエータが人工筋肉や発電素子として注目されており、伸縮性電極に関する研究が活発に行われている。本研究では、さまざまな糖アルコールについて検討を行い、電気・力学特性が糖アルコールの構造に大きく依存することを明らかにした。特に、アラビトールやキシリトールの添加・熱処理により、伸縮性と導電性をあわせ持つフィルムの作製に成功した。得られた研究成果は、伸縮性を有する導電材料として有機エレクトロニクスやソフトアクチュエータへの応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン伝導アクチュエータの活性層にはイオン液体/エラストマーゲルを用いる。しかし、以前の検討からイオン液体とシリコーンの相溶性は低く、数ギガオームの高抵抗を示したことから、本研究では主にポリウレタンを用いる。ここで、極性の低いイソシアネート成分とイオン液体の溶解性が低いことが懸念されるため、ポリオール成分との組成制御可能なポリウレタンを用い、イオン液体の組成をできる限り高める工夫をする。さらに、高速応答させるにはアクチュエータの薄膜化が不可欠であるため、溶液からキャスト製膜可能な熱可塑性ポリウレタンの使用も念頭に置く。得られたイオン液体/ポリウレタンゲルは、高導電ソフト電極と同様の物性評価と構造解析を行う。ここで最も重要なのは、ゲルのイオン伝導度である。アクチュエータの駆動はポリウレタン中のイオン液体の移動に基づくため、イオン電導度を高めることが高速応答化には不可欠である。そこで、交流インピーダンス法から得られるコール・コールプロットを等価回路解析し、イオン伝導度が最大になるよう最適化をはかる。得られたイオン液体/ポリウレタンゲルを、PEDOT/PSS/糖アルコールから成る高導電ソフト電極で挟むことで、アクチュエータ素子を作製する。
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Research Products
(13 results)