2013 Fiscal Year Research-status Report
熱可塑性エラストマーのMullins効果に関する構造学的研究
Project/Area Number |
25410226
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
櫻井 伸一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (90215682)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高分子構造・物性 / ゴム材料 / Mullins効果 / X線散乱 / 伸長結晶化 |
Research Abstract |
ゴム材料を繰り返し延伸/緩和変形を行うと物性値(弾性率や応力)が低下する現象が知られているが、本研究ではこの現象の原因を解明することを目的に、繰り返し延伸/緩和過程で小角X線散乱/応力ひずみ/複屈折の同時測定を行う計画である。そのために、小角X線散乱/応力ひずみ同時測定装置を用いて実験を行った。用いた試料は、当初計画の、スチレン-エチレンブチレン-スチレントリブロック共重合体とシクロへキサジエン-エチレンブチレン-シクロへキサジエントリブロック共重合体に加えて、超ハイシスポリブタジエンについても実験することができた。用いた超ハイシスポリブタジエンはさらに、分子量が100万程度~200万というような超高分子量であるという特徴もあり、それゆえ分子鎖が激しくからみ合っている。したがって、未架橋状態でもゴム弾性を発揮し、天然ゴムに匹敵する性能を有することが期待されている合成ゴム材料である。実際、化学架橋せずに繰り返し延伸/緩和変形を行うことができたが、比較のため、また実験を簡易化するために、化学架橋させたものについても実験を行った。 まず、未架橋ハイシスポリブタジエンの一軸延伸結果については、分子量が200万程度の超高分子量試料において、延伸時に明確なネッキングが発現し伸長誘起結晶化が確認された。伸長結晶化と高分子鎖の立体規則性との関係については、現段階で定性的ではあるが、本研究で用いたようなシス含有率が99%超の試料では、通常レベルのハイシス含有試料(シス含率90%前後)と比較して、ずっと伸長結晶化しやすい傾向が見られた。また、延伸時の歪み速度が高いほど結晶化度が増大した。さらに、これらの試料を一定延伸倍率にまで変形後に、そのまま試料の変形を保持させた場合、時間とともに結晶化度が増大することがわかった。延伸時の歪み速度が高いほどより顕著にそのような現象が起こることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、スチレン-エチレンブチレン-スチレントリブロック共重合体、ならびに、シクロへキサジエン-エチレンブチレン-シクロへキサジエントリブロック共重合体を用いた研究を行う予定であったが、実際にはこれらに加えて、研究実績の概要欄に記載したように、超ハイシスポリブタジエンゴムについても実験を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画の通り、平成26年度は、延伸過程の中途段階で延伸を一時停止して試料を定長固定した状態での時間変化の測定と、その後の延伸緩和過程の中途段階での同様の測定を行う。これらの中途停止測定を一定ひずみ間隔で数回行う。さらに、余裕があれば、当初平成27年度の計画として考えていた「自然治癒の実験(1日あるいは数日放置後の測定)」を行う。最終年度(平成27年度)は、研究の総括として、Mullins効果、すなわち、繰り返し延伸にともなう応力低下の要因を解明するとともに、自然治癒が起こる理由も解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、まさに、平成25年度試作予定であったX線散乱同時計測用引張試験機(延伸速度可変特別仕様)のための支出予定金額である。平成25年度に、機能が同程度の機種を所有している研究者との共同研究を行うことができ、その結果、同等金額の支出により、当初計画の性能以上の機種を作製できることが明らかになった。つまり、同じ金額でよりすぐれた性能の装置の試作が可能であることが判明した。しかしながら、その考えに至るまでには、測定を何度も繰り返し行う必要があったため、さらには、装置にアタッチメントを追加するなどの試行錯誤を行ったため、平成25年の年末まで時間がかかってしまった。もちろん、それまでに得た知見は、学会発表を行うことによって成果として公表しているし、また、近い将来、論文発表する予定である。年明けの平成26年1月から、早速、新しい仕様を固め、現時点で業者に試作依頼できる段階にまで達している。 前項「次年度使用額が生じた理由」欄に記載したように、平成25年度試作予定であったX線散乱同時計測用引張試験機(延伸速度可変特別仕様)の仕様を刷新し、これを業者に試作依頼することによって、次年度使用額相等金額を使用する計画である。これによって、当初計画以上の成果をあげることが期待できる。
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Research Products
(6 results)