2014 Fiscal Year Research-status Report
熱可塑性エラストマーのMullins効果に関する構造学的研究
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25410226
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
櫻井 伸一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (90215682)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 熱可塑性エラストマー |
Outline of Annual Research Achievements |
ゴム状の高分子鎖が、微結晶やガラス状のミクロドメインを物理的架橋点として ネットワークを形成した材料を、熱可塑性エラストマーと呼ぶ。非晶性ブロック共重合体の 場合、ガラス状態にある球状ミクロ相分離構造が物理的架橋点の役目を担う。我々はこれま でに、シリンダーに転移する能力を持つ非平衡な球状ドメインから成る熱可塑性エラストマ ーフィルムを、一方向に圧縮変形し、配向シリンダーが形成される過程について調べてきた。 今回は、一軸延伸下における非平衡な球状ドメインの熱処理にともなう構造変化を明らかに するために、フィルムが破断しないよう延伸状態を保持したまま 2 次元小角 X 線散乱 (2d-SAXS)測定を行った。 用いた試料はポリスチレン-ポリエチレンブチレン-ポリスチレントリブロック共重 合体(SEBS)である。ポリスチレン(PS)の体積分率は 16%。キャスト法によって、膜厚 0.3 mm の as-cast film を作製した。3 倍延伸しフィルムの表側および裏側の表面からスライドガラスを押しつけ、その状態を保持したままネジで強く固定した。次に、チャックからフィルムを解放し、余分なフィ ルムは切り取った。このようにして作製したスライドガラスで延伸状態を保持したフィルム をあらかじめ 170°Cに熱しておいたヒーターブロック内に入れ、時分割2d-SAXS 測定を行った。その結果、170°Cで熱処理を行うと、延伸方向に平行な方向のピーク強度が激減し、4 点ストリークへと変化した。この 4 点ストリークは時間が経過しても残存した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的以上に、合体によるシリンダー構造への転移が可能な非平衡な 球状ドメインを用いたシリンダー構造の配向制御 ― 延伸固定状態での熱処理 、やSEBS トリブロック共重合体が形成する非平衡な 球状ミクロ相分離構造からなる BCC 格子の配向が与える転移後の シリンダー構造の配向への影響について、成果があがった。これらの成果は高分子学会や日本ゴム協会の年次大会にて発表予定である。 “SEBSトリブロック共重合体が形成する非平衡な球状ミクロ相分離構造からなるBCC格子の配向が与える転移後のシリンダー構造の配向への影響”, 日本ゴム協会2015年年次大会, 2015年5月21日;“合体によるシリンダー構造への転移が可能な非平衡な球状ドメインを用いたシリンダー構造の配向制御―延伸固定状態での熱処理”, 日本ゴム協会2015年年次大会, 2015年5月21日;“SEBSトリブロック共重合体が形成する非平衡な球状ミクロ相分離構造から配向したシリンダー構造への転移における初期BCC格子の配向の影響”, 第64回高分子学会年次大会, 2015年5月27日 “球状ミクロ相分離構造を有する熱可塑性エラストマーの一軸延伸過程における応力ひずみ曲線と2次元小角X線散乱の同時測定”, 第64回高分子学会年次大会, 2015年5月27日; “球状ミクロ相分離構造を形成するSEBSトリブロック共重合体の一軸延伸過程における応力ひずみ曲線と2次元小角X線散乱の同時測定”, 第61回高分子研究発表会(神戸), 2015年7月17日
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Strategy for Future Research Activity |
小角X線散乱/応力ひずみの同時測定は問題なく行うことができ、上述のような成果を挙げることができている。問題は、複屈折の同時測定である。当初の計画では、レーザービームを用いた測定を行う予定であったが、このような定点測定では、測定結果にばらつきが生じ、論文発表できるレベルまでの成果が得られたとは言いがたい。一方、近年、偏光性能を有する高速カメラが開発され、昨年、市場に売り出された。そこで、その装置を購入し今年度はそれを活用した複屈折の同時測定を行うことができるようになった。つまり、フィルム状の試料を延伸していく過程をリアルタイムで映像として記録することができるが、それは単なる映像ではなく、偏光情報を持った映像であるので、延伸されているフィルムの全ての位置における分子鎖配向係数を評価することができるのである。したがって、飛躍的にその成果の学術レベルを向上することができる。
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Research Products
(8 results)