2014 Fiscal Year Research-status Report
天然ナノ複合材料を用いた医用接着・シーリング剤の開発
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25410227
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
斎本 博之 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20186977)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | キチン / キトサン / 医用材料 / 生体接着剤 / ナノファイバー |
Outline of Annual Research Achievements |
意義、重要性、解決方法 傷口や外科手術の切開部分の接合、シーリングについては、従来、縫合がなされてきた。しかし、縫合には時間がかかり、近年増加している内視鏡による処置に適さない他、縫合できない臓器がある等の問題があった。また、血液製材を用いた生体接着剤にはウィルス感染の危険があった。 これらの問題を解決する方法の開発が要望されており、本研究では、以下の戦略で新規な手法の開発をめざした。1.天然由来の高分子材料であるキチン、キトサンの利用により、生体適合性、生分解性というメリットに加え、ウィルス感染の危険が無い安全な材料が期待できる。2.「キチン質への重合性官能基の導入」と「キチン或いはキトサンナノファイバーとの複合材料化」の併用で、迅速な硬化と材料強度の改善の両方を期待できる。 具体的な内容と成果 1.キチンそのものは水に不溶であるが、カルボキシメチル基と末端アクリル型の側鎖を導入した本研究のキチン誘導体(HMA-CM-キチン)は、水溶性と硬化性を併せ持つ新材料である。今回、このHMA-CM-キチンに、申請者らが開発した高強度のキチンナノファイバー(CNF)及びファイバー表面をキトサン化したキチンナノファイバー(S-DACNF)の分散液にブレンドする条件を検討し、均一な混合に成功した。次にコラーゲンフィルムをモデルに用いた接着強度試験を行ったところ、HMA-CM-キチンのみの場合よりも改善が見られた。特に、破裂圧試験では、接着・シーリング機能について格段の強度改善が達成された。 2.上記の接着モデル実験の結果を踏まえたラットを用いた接着機能試験においても、良好な結果が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(平成25年度)に検討した「カルボキシメチル基と末端アクリル型の側鎖を導入した本研究のキチン誘導体(HMA-CM-キチン)」と「高強度のキチンナノファイバー(CNF)及びファイバー表面をキトサン化したキチンナノファイバー(S-DACNF)」という2種類の新材料をブレンドする条件を、平成26年度にはさらに最適化した。得られた複合材料について、接着及びシーリング実験モデルにおいて試験した結果、HMA-CM-キチンのみの場合に比較して、接着性能の改善が見られた。特に、破裂圧試験では、格段の強度改善が達成された。さらに、ラットを用いた接着性、生体組織反応の検討でも異常が見られなかったことから、安全性と利便性の両立が期待できる。また、組織学的評価、免疫細胞の挙動評価でも良好であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の2年目には、開発モデルとした「カルボキシメチル基と末端アクリル型の側鎖を導入した本研究の誘導体(HMA-CM-キチン)」と「高強度のキチンナノファイバー(CNF)及びファイバー表面をキトサン化したキチンナノファイバー(S-DACNF)」という2種類の新材料をブレンドした新複合材料について接着性能と生体反応チェックのための動物実験に着手できたので、最終年度(3年目)においては、2年目と同様に、年度当初に「カルボキシメチル基と末端アクリル型の側鎖を導入した本研究の誘導体(HMA-CM-キチン)」及び「各種キチンナノファイバー」の新鮮なサンプル調製を行い、ブレンド比等の最適化を行うと同時に、接着硬化後における物性の検討を進める。
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Causes of Carryover |
新規に調製したブレンド材料の機能をラットで評価した際、予想していたバラツキよりも数値の再現性が良かったことから、追加評価を必要としなかった。従って、サンプル数、試験数が計画を下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度においても、重合性材料として劣化の無い新鮮な実験サンプルを年度開始時に調製して試験する予定であり、そのための経費として使用する計画である。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Biological adhesive based on carboxymethyl chitin derivatives and chitin nanofibers2015
Author(s)
Kazuo Azuma, Masahiro Nishihara, Haruki Shimizu, Yoshiki Ito, Osamu Takashima, Tomohiro Osaki, Norihiko Ito, Tomohiro Imagawa, Yusuke Murahata, Takeshi Tsuka, Hironori Izawa, Shinsuke Ifuku, Saburo Minami, Hiroyuki Saimoto, Yoshiharu Okamoto, Minoru Morimoto
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Journal Title
Biomaterials
Volume: 42
Pages: 20-29
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Effect of chitin nanofibril combined in rayon animal bedding on hairless mouse skin and on a three dimensional culture human skin model2014
Author(s)
I. Ito, T. Osaki, K. Tokuda, T. Asami, Y. Takamori, S. Kurozum, S. Ifuku, H. Saimoto, T. Imagawa, K. Azuma, T. Tsuka, Y. Okamoto, S. Minami
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Journal Title
Journal of Chitin and Chitosan Science
Volume: 2
Pages: 82-88
DOI
Peer Reviewed
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