2013 Fiscal Year Research-status Report
自己折りたたみ特性を持つ感温性多層ゲルの開発-2Dから3Dへ
Project/Area Number |
25410229
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
飯澤 孝司 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60130902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 健彦 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10274127)
迫原 修治 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80108232)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 感温性ゲル / コアーシェルゲル / 多層ゲル / 自己折り畳み機能 |
Research Abstract |
10 ㎝角、間隔1㎜ の2枚のガラス板中でアクリル酸と架橋モノマー:メチレンビスアクリルアミドの水溶液を重合し、その後DBUで中和することにより、DAA板を作成した。これを切断することにより、適当な形状のDAA板の作成が可能であった。生成するポリ(N-アルキルアクリルアミド)(PNAA)ゲルの機械的安定性を向上させるため、さらにポリビニルアルコールとグルタルアルデヒドの架橋で強化した相互侵入型分子網目構造(IPN)を持つDAA(IPN-DAA)も作成した。 DAA板と1段目のn-プロピルアミン(NPA)との反応を途中で止めることにより、シェル層のPNAA Iと未反応のDAAからなるコアーシェル型ゲル板を合成した(第1段目の反応)。次にこのゲルを第2段目のNPAと3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピルアミン(DMPA)の混合物を反応させる2段階のアミド化により、感温性の異なるPNAA IとPNAA IIをそれぞれシェル層とコア層に持つ三層(コアーシェル型)ゲル板を合成した。1段目の反応時間を変えることにより、PNAA IとPNAA IIの膜厚比を自由に調整できることを明らかにした。 長さ25 mm、幅 5 mm、厚み0.88 mm のコアーシェル型ゲル板を合成し、この中央を1 mm幅で適当な深さの溝を掘削したテストピースを作成した。コアーシェル型ゲルは対称なので水中で膨潤しても形状が大きく変化しないが、掘削部分は非対称となり、各層の膨潤率の違いから屈曲する。このテストピースの各温度での屈曲特性を測定した。その結果、PNAA I、PNAA IIの感温特性および溝の深さ等により、テストピースの各水温での屈曲角度が大きく変化した。これらに対するゲルの屈曲角度の依存性を明らかにした。測定された屈曲角度は再現性があり、温度スイングにより繰り返し屈曲-伸長が可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初ポリアクリル酸ゲルのDBU塩(DAA)を使用することにしていたが、このゲルの機械的安定性が足りないことから、ポリビニルアルコールとグルタルアルデヒドで強化した相互侵入型分子網目構造(IPN)を持つポリアクリル酸ゲルのDBU塩(IPN-DAA)を用いることにした。 IPN-DAAおよびその反応生成物のIPN-PNNAは、対応するIPN化していない対応するゲルと同様に比較的容易に合成できた。しかも、IPN-PNNAは、旋盤で正確な幅および深さで掘削できることから、屈曲等の再現性が向上し研究が著しく促進された。その結果、H26、27年度に予定していた溝を掘削したテストピースの屈曲性の検討をH25年度中にかなりの部分行うことができた。そこで、当初予定していなかった非対称二層ゲルが屈曲する際、どれくらいの力でどれくらいの仕事ができるか追加の研究を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
溝を掘削して屈曲部を導入する方法(合成法1)については、かなり進行していることから、H26年度はもう1つの手法であるDAA板の表面にマスキングテープを貼り一段階目のアミド化をさせない部位を造り非対称(屈曲)部分を作成する方法(合成法2)に重点を置き、検討を進めたいと考えている。 ゲルは変形する際の大きな応力により、二層の界面でゲルが徐々に破壊されることが予想される。溝を掘削(合成法1)およびマスキング(合成法2)により屈曲部を導入したテストピースが温度スイングによるゲルの変形を繰り返した際のテストピースの安定性、耐久性を明らかにする。これらの結果から、屈曲部の合成法として、合成法1および合成法2のいずれが本目的に適しているか明らかにしたい。 H27年度は、上記の検討で得られるテストピースのデータを基に平面の板から温度変化による多面体形成(2Dから3Dへ)を検討する。まずは四面体形成用の多層ゲルを作成する。さらにここで得られたデータを拡張し、正六面体、正八面体などの正多面体を作成する予定である。ここで得られた結果および知見から、得られた多面体を形成できる非対称な屈曲部位を有する多層ゲル板の感温・屈曲特性を評価する。また、ここで生じた問題点を抽出し屈曲部分の作成法にフィードバックし、改善・改良に努める予定である。 H26,27年度に予定した以外の研究の追加として、本研究で得られる非対称二層ゲルが屈曲する際、どれくらいの力でどれくらいの仕事ができるか明らかにするため、測定装置・測定法について検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H26年度1年間、本専攻では、建物・実験室がリユーアルすることになっており、H25、26年度は、必要最小限の消耗品のみ購入し、大きな備品等の購入を控えている。また、この備品等が必要な実験はリユーアルが完了するH27年度まで延期することにしている。そのため備品・消耗品等の使用額が大幅に変わってしまった。 当初本研究で予定した以外の追加として、本研究で得られる非対称二層ゲルが屈曲する際、どれくらいの力でどれくらいの仕事ができるか明らかにするため、測定装置・測定法について検討しており、この測定のための予算を繰り越した。以上のことのため、大幅な予算の繰り越しが生じた。 リユーアルが完了するH27年度以降、計画に従い備品・消耗品を購入する予定にしている。また、当初本研究で予定した以外の追加として、本研究で得られる非対称二層ゲルが屈曲する際、どれくらいの力でどれくらいの仕事ができるか明らかにするための測定装置・測定法を定め、これに費やす費用を合わせて、速やかに予算を執行する予定にしている。
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Research Products
(5 results)