2014 Fiscal Year Research-status Report
アガロースゲルを用いたゲル中の物質輸送現象に関する研究
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25410231
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
金田 勇 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (30458129)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | agarose gel / compression / solvent transportation |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は前年度に完成した測定系を用いてアガロースゲルの圧縮荷重の緩和と体積変化の同時測定を行った。圧縮荷重は指数関数的に減衰し、一定の残留応力値に落ち着く傾向が確認された。一方でゲルの体積変化も同様の挙動を示し、それぞれの時定数は一致していた。この結果は圧縮拘束により発生した応力はゲルからの溶媒の流出によりゲル体積が減少することで減少したことを示す。言いかえれば応力の挙動を観察することでゲルからの溶媒輸送挙動を推定できるということが出来る。この結果を踏まえてアガロースのネットワーク構造を変化させた場合に溶媒輸送挙動がどのように変化するかを調べることを試みた。アガロースゲルはそのゾルーゲル転移温度付近でゲル化させるとスピノーダル分解により、アガロース濃厚相と希薄相にミクロ相分離し、その粗密構造がゲル化で凍結されるということが報告されている。この現象を利用して、アガロースゲル調製時のクエンチ温度をゾルーゲル転移温度付近の40℃から10℃の間の数点で行い、得られたゲルで同様の測定を行った。ゾルーゲル転移温度に近い温度でクエンチしたゲルは溶媒流出速度が速くなり、またゲルの外観も不透明になった。このサンプルを小角光散乱測定で調べた結果、数100nm程度のサイズの構造がゲル内に存在することが明らかになった。これは上述のスピノーダル分解により生じたミクロ相分離構造がゲル化により凍結され、それによってゲル内に大きなボイドが生じて、それが溶媒の流路となり溶媒流出速度が大きくなったと考えられた。また溶媒添加効果についての実験も進め、アルコール類についてのデータ取得も取得しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では平成26年度中にアガロースゲルを用いた圧縮拘束時の溶媒輸送挙動を解析する実験系を確立し、論文を投稿することを目標としていたが、研究実績の欄に記載した通り実験データを取得し、これらのデータを基に論文を執筆し、投稿・受理され出版されている。添加物効果についてはメタノール、エタノールおよび多価アルコールであるグリセリンの添加効果についての実験に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はゲル状食品からのフレーバーリリースあるいは離水防止などの実用的課題に対する基礎的な知見を与えるものと期待される。すでにアルコール類の添加効果を確認中であるが、実際の呈味成分である糖類の添加効果を調べてゆく。特に本課題で用いているアガロースは実際に食品にゲル化剤として応用されている原料であるのでこのような研究は食品工業分野で期待されていると思われる。アガロースゲルの力学物性および熱物性に対する糖類添加効果は研究報告が見られるものの、本課題で注目している溶媒輸送現象に対する研究例はほとんど見られない。また、平成27年度は本課題の最終年度であるのでこれまでの研究成果の発信活動も進めてゆく(学会発表および論文執筆)。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入が計画を下回ったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は最終年度なので主に研究成果報告活動に研究費を使用する The7th International Symposium on Food Rheology and Structure (Zurich, June 2015)レオロジー討論会 (神戸 2015年9月)での成果報告の旅費として500,000円程度。論文投稿に関する費用として50,000円程度(主に英文校正依頼費)。その他実験に関わる消耗品購入費用として使用する予定である。
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