2013 Fiscal Year Research-status Report
不規則構造内のリチウム単原子の電子分光によるその場検出
Project/Area Number |
25410246
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 雄太 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 主任研究員 (90392620)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / ナノカーボン |
Research Abstract |
本研究課題は、物質中に存在するリチウム原子・イオンを直接検出し、空間的分布と化学状態をその場で明らかにする分析手法の確立を目的として、透過電子顕微鏡(TEM、STEM)観察および高感度の電子エネルギー損失分光(EELS)測定を実施するものである。とくに低次元構造や非晶質、結晶中の構造欠陥や粒界に、ランダムに存在する個々のリチウムのEELSスペクトル像による可視化の実現を目標とする。具体的には、一次元構造体であるカーボンナノチューブ(CNT)や、二次元物質であるグラフェンなどを対象として、その内部や層間に挿入したリチウムのEELSイメージングを行い、周辺構造とくに欠陥との相互作用を明らかにする。同時に、検出条件の最適化や定量性の検討を行い、幅広い分野に応用可能な分析手法としての確立を目指している。初年度である平成25年度は、とくに一次元構造体である単層(SW)CNT、ならびにそれらにフラーレン分子を挿入したナノピーポッドを使用し、これらの試料にドープしたリチウムイオンのその場検出に取り組んだ。このうち、ナノピーポッド試料を使用したTEM-EELS実験では、フラーレン分子とナノチューブの内壁に囲まれた狭小空間に閉じ込められたリチウムイオンを検出することに成功している。一方、SWCNTにリチウムのみを挿入した試料においては、大気への暴露に起因するとみられる試料の劣化が障害となった。とくに電顕観察用試料の作製時や電顕装置への試料挿入時における、大気曝露の防止が課題であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績概要のとおり、本研究課題は初年度はほぼ当初の研究計画に沿って実施されており、有用な基礎データが得られつつある。同時に実験手法に関して課題も明らかになっているが、その対策に関する具体的指針も得られていることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度からは、二次元構造であるグラフェンの層間に挿入されたリチウムの検出にも取り組み、グラフェン面内に実際に存在するトポロジカル欠陥(5員環、7員環など)と個々のリチウムイオンとの相互作用に関して、実験的検証を行う。これらの実験と並行して理論的検証を進めるとともに、使用する加速電圧やビーム電流量など検出条件の最適化を図り、さまざまな物質に応用可能なリチウム単原子の検出法としての確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品購入時に競合見積りを徹底した結果、当初計画時の参考見積り価格に比べてわずかながら低額での調達が行えたため、差額が発生したことによる。 物品費に組み入れ、当初計画時には考慮しなかった消費税増税分の支出に充当する。
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Research Products
(1 results)