2013 Fiscal Year Research-status Report
室温イオン液体中におけるリチウムイオン電池用黒鉛系負極の電気化学的挙動の解明
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25410248
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
宇井 幸一 岩手大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60360161)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リチウムイオン電池 / 室温イオン液体 / 負極 / 黒鉛 |
Research Abstract |
本年度は、室温イオン液体/黒鉛系負極の界面設計に関する基礎的知見を得るため、熱安定性の高いアニオン種を含む室温イオン液体中における黒鉛系負極の電気化学的挙動の解明に着手した。黒鉛系負極に天然黒鉛、室温イオン液体にリチウム塩を含むN, N-ジメチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム-ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミド (DEME-TFSA)を用いて、以下の項目を実施した。 1. 黒鉛系負極の表面に形成する固体電解質界面(SEI)の成分とその形成機構の解明:有機溶媒系電解質(有機溶媒系)では初回充電時、黒鉛粒子の表面に還元生成物(析出物)からなるSEI被膜が形成される。そこで、FE-SEM/EDXを用いて元素分布を測定した結果、初回充電後、黒鉛粒子表面にOおよびFを含む析出物が覆っていることがわかった。また、XPSの結果から、その析出物が主にLiF、C、OおよびSから成ることがわかった。なお、有機溶媒系では、SEI成分中にアルキルリチウムカーボネートを含むが、本室温イオン液体系ではその存在が検出されなかったので、今後、より詳細な分析を要すると考えられる。 2. 室温イオン液体中における黒鉛系負極の初回充電反応の解明:黒鉛系負極の充放電特性に関する予備検討を行った。室温イオン液体中における初回充放電特性は有機溶媒系とは異なり、比表面積が大きくなると良好であった。また、交流インピーダンス法により得られた電荷移動抵抗から求めたLi(I)イオンの脱溶媒和過程の活性化エネルギーは、有機溶媒系より室温イオン液体系の方が大きかった。 以上の結果、初回充電過程でTFSA-イオンの還元分解による副反応が発生し、LiF、O、CおよびSから成る析出物が黒鉛粒子表面を覆うこと、また、室温イオン液体系と有機溶媒系ではLi(I)イオンの脱溶媒和過程が異なることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 黒鉛系負極の表面に形成する固体電解質界面(SEI)の成分とその形成機構の解明 実施計画に示したFE-SEMとXPSによる黒鉛粒子の表面分析を行い、析出物(SEIをイメージ)の成分を同定し、その形成機構を解析しているので、概ね順調に進展していると判断した。 2. 室温イオン液体中における黒鉛系負極の初回充電反応の解明 実施計画に示した周波数特性分析器を購入し、黒鉛系負極の充放電特性に関する予備検討を行った。上記波数特性分析器を用いて、交流インピーダンス法による解析を行い、Li(I)イオンの脱溶媒和過程の活性化エネルギーを算出し、有機溶媒系より室温イオン液体系の方が大きいという定量結果を得た。これは室温イオン液体/黒鉛系負極の界面設計に関する有意義な情報と考えられるので、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は概ね順調に進展したので、当初の研究実施計画を実施していく。平成26年度は前年度に得られた結果を基にして、以下の項目2及び3を実施する。なお、前年度の項目1もより詳細な分析を行っていく予定である。 2. 室温イオン液体中における黒鉛系負極の初回充電反応の解明 周波数特性分析器を付設した電気化学測定システムを用いて、交流インピーダンス法による黒鉛系負極/室温イオン液体電解質界面の構造及び反応を時定数分離により詳細に調べ、初回充電反応を解明する。 3. 室温イオン液体中の黒鉛系負極の電気化学的挙動に影響を及ぼす要因の特定 項目1の黒鉛粒子の表面分析・表面観察及び項目2)の黒鉛系負極/室温イオン液体電解質の界面構造に基づき、SEIの成分とその形成機構を含む黒鉛系負極の初回充電反応を解明し、室温イオン液体中における黒鉛系負極の電気化学的挙動に影響を及ぼす要因を特定する。また、得られた結果を取りまとめ、研究成果の国内外への発表を試みる。
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