2013 Fiscal Year Research-status Report
表面プラズモン損失の低減による高効率有機ELの開発とフレキシブル照明への応用
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25410252
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
三上 明義 金沢工業大学, 工学部, 教授 (70319036)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機EL / 表面プラズモン / フレキシブル / 照明装置 / シミュレーション |
Research Abstract |
波動光学と近接場光学を組合せた独自の光学解析アルゴリズムを開発し、申請者が考案したマルチカソード構造を導入した有機EL素子における表面プラズモン効果を解析した。その結果、光学計算の妥当性と新カソード構造による表面プラズモン損失の低減を確認した。主な結果は以下のようである。 ①波動光学に基づく有機EL光学計算ソフトウェア(FROLED)を基本として、近接場光学を含めたプラズモン効果の解析を可能とするマルチスケール光学解析のアルゴリズムを開発した。近接場を含む放射場の計算には、双極子振動と電界を波数の関数としてフーリエ分解し、多重干渉効果を考慮した波動光学と組み合せた。また、有機EL素子内部の伝搬解析には有効フレネル係数と特性マトリクス計算を用い、微細領域の解析にはマックスウェル方程式を定式化した光学的な位相整合条件を用いた。これにより、有機EL素子の光学現象を高い精度で解析することが可能になった。 ②陰極で生じる表面プラズモン損失の低減のため、半透過金属薄膜両界面における反射係数とカソード構造の関係を詳細に調べた結果、プラズモン共鳴の抑制には陰極界面における反射係数の位相制御が有効であることを見い出した。光学補償層の屈折率と膜厚の最適化により、表面プラズモン損失を現状の1/3程度まで低減できることを光学計算により示した。 ③マルチカソード構造を用いた緑色燐光有機EL素子を試作し、マルチスケール解析の設計結果を適用することで光学的視点に立った高効率化設計を行った。その結果、表面プラズモン損失の低減および伝搬波への転換を検証することができ、光取り出し効率50%、電力効率200 lm/Wを得るための基本技術を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、近接場光学を含めたプラズモン効果の解析を可能とするマルチスケール光学解析のアルゴリズムを開発し、有機EL素子の光学現象を精度良く解析することが可能になった。また、表面プラズモン損失の低減に重要な要因を明らかにし、光学損失を大幅に低減できる光学設計への指針を得ること方できた。更に、マルチカソード構造を用いた有機EL素子の試作実験により、表面プラズモン損失の低減および伝搬波への転換を検証することができた。これらの成果は、次年度に予定しているフレキシブル有機EL照明の開発に繋がる基本技術であり、プラスチックフィルムを用いた際の技術課題やその改善方法に対する指針を与えている。今年度はほぼ計画に沿った成果がえられているものと思われ、研究はおおむね順調に推移していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
有機EL素子の高効率化のため、光学損失の約50%を占める表面プラズモンを低減することで光取り出し効率を改善し、外部量子効率70%の有機EL素子の実現を目指す。このため、光線光学、波動光学、電磁光学、近接場光学を統合した独自のマルチスケール解析のアルゴリズムを更に発展させ、近接場のミクロ構造と波動場のマクロ構造の光学現象をシームレスに繋ぐ光学ツールを開発する。同ツールをマルチカソード構造有機EL素子に適用すると共に、光学異方性を制御したフレキシブル基板と組み合わせて伝搬光の光利用率を高め、外部量子効率70%に向けた基本技術を開発する。この値はオール燐光材料を用いた白色発光の電力効率に換算して約200 lm/Wに相当し、主照明(蛍光灯)を置き換える有機EL照明の実現に光学理論の観点から寄与できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度所有額以内での予算執行を心掛けたことで、540円の端数が発生した。 微調整の範囲内であり、特に残金540円の使用計画はない。
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Research Products
(9 results)