2014 Fiscal Year Research-status Report
レアイベント計算技術を基盤とした相変態ナノキネティクスの解明
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25420007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 祥太郎 東京大学, 生産技術研究所, 特任講師 (10401134)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 分子動力学 / レアイベント / 相変態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度までに実施した変位型相変態現象に関する基礎的な分子動力学解析に対し,新たにレアイベント技術を適用することを開始した.具体的な解析対象は昨年度同様,固体酸化物形燃料電池の電解質材料であるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)のcubic相からtetra相への相変態現象とした.レアイベント技術ではバイアス原子間ポテンシャルの構築が不可欠となる.本研究では新たに酸素原子のc方向変位情報をオーダーパラメータとしたバイアス原子間ポテンシャルを導入した.また,系全体で平均化したオーダーパラメータとすることによって,相変態現象に関わる原子が複数に及ぶ集団的特性にも対応するよう改良を行った.まず酸素空孔とドーパント材を含まないジルコニアに適用した結果,従来分子動力学法では観測できない温度領域において,本手法を用いることで明確な相変態現象を観測することが可能となった.また,その際の活性化障壁が系の温度に強く依存し,温度が高いほど障壁が高くなる傾向が明らかとなった.酸素空孔を含むYSZに本手法を適用するためには,酸素拡散の影響を考慮したバイアスポテンシャルの構築が必要となることがわかった.そこで変位情報にあるしきい値を設けることで,拡散に関与する酸素原子を除去し,新たにYSZ用のバイアスポテンシャルを構築した.その結果,YSZについても相変態現象が観測可能となり,活性化障壁のイットリア濃度依存性,ならびに温度依存性についても評価することが可能となった.また,本相変態はメゾスケールのYSZ焼結体中で発生し,相変態によってマクロなイオン導電率が低下することが知られている.マクロな導電率とミクロな現象との関係を調査するため,既存コードを用いてメゾスケールのYSZ焼結解析も行い,YSZ焼結体の構造モデルの導出も実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相変態現象のレアイベント計算を行う上で必要不可欠である原子間ポテンシャルの構築に着手し,ジルコニアを対象にレアイベント計算に成功した.またイットリア安定化ジルコニアについても,新たに専用のポテンシャル構築を達成することができており,研究はおおむね順調に進展しているといってよい.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本解析の定量性を議論するため,バイアスポテンシャル構築に含まれる各種パラメータの設定について十分検討を行う.また計算セルサイズの効果についても検討を行い,実験との対応について考察を行う.同時に,ドーパント材が相変態に及ぼす効果を原子スケールから明らかにするため,イットリウム以外に実用上重要となるカルシウムなどのドーパント材について同様の解析を実施する.次年度は本課題の最終年度であり,得られた結果のまとめ,対外発表を行う.
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Causes of Carryover |
当初の予定より本解析が大きな計算機サーバーを必要としないことが見込まれたため、計算機際ーバー用の追加設備の購入が本年度は少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、本課題の最終年度であるため、国際学会を含めた成果発表に使用を予定している。
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Research Products
(4 results)