2014 Fiscal Year Research-status Report
熱可塑性CFRP積層板のせん断切断機構の解明と最適化
Project/Area Number |
25420022
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
黄木 景二 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (70281194)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 損傷力学 / 熱可塑性CFRP / せん断切断 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,熱可塑性CFRP積層板に焦点を絞り,成形条件(成形温度と成形圧)と切断刃形状がせん断切断挙動に及ぼす効果を明らかにした。熱可塑性CFRP積層板では熱硬化性CFRP積層板と異なり,せん断切断によって層間はく離が発生しないことが明らかになった。そこで微視的な切断加工品位のパラメータとして,理想切断面からの突起部と損失部を合わせた投影面積を用いた。その結果,成形温度は45℃が最適であることが判明した。一方,成形圧は1気圧から5気圧(0.1~0.5MPa)まで変化させて,成形された積層板の繊維分布状態の観察とせん断切断挙動を調べた。その結果,比較的低い成形圧力(例えば0.17MPa)では繊維の分布が比較的均一で成形による潜在欠陥(割れ,空孔)は少なく,高い平均せん断応力(切断時の最大せん断力/切断面積)が必要であるが,成形圧力が高い場合(例えば0.5MPa),繊維束が偏在するとともに,潜在欠陥が増加し,平均せん断切断に必要な応力が低下する傾向が見られた。低い成形圧力のほうが加工品位は高い。 一方,切断時のクリアランス(上刃と下刃の隙間量)の効果については主として熱硬化性CFRP積層板に対して調べた。ある一定以上のクリアランスでは切断時の平均せん断応力はクリアランスによらず一定となる。 また熱可塑・熱硬化CFRPともに,シャー角と刃先角を付けると平均せん断応力が低下するが,加工品位に関してはある最適な組み合わせがあることが示唆される実験結果が得られ,今後の課題が明確になった。 最後に粒子法を用いたせん断切断挙動のシミュレーションをクロスプライ積層板について行い,0度層の破断,90度層のマトリックス割れおよび0度/90度層間のはく離などの損傷を含んだ切断現象を再現することができ,マクロシミュレーション法を確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的①「粒子法によるマクロ切断解析」については,0度層の破断,90度層のマトリックス割れおよび0度/90度層間のはく離などの損傷を含んだ切断現象を再現することができ,マクロシミュレーション法を確立できた。 目的②「支配的パラメータの探索による切断条件の最適化」については,切断加工品位を微視的損傷の観点から検討した結果,最適な刃の形状(シャー角,刃先角)の見通しを得ることができた。さらに,熱硬化・熱可塑CFRPそれぞれに対して,切断温度とクリアランスの最適値を見つけることができた。ただし,シャー角,刃先角の組み合わせについてはさらなる詳細な検討が必要であり,今後の課題である。 以上より,上記のような達成度であると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の課題として挙げたシャー角,刃先角の組み合わせの詳細な検討を行う必要がある。具体的には,両パラメータを変化させた9種類の上刃を作製し,加工品位が最良となる上刃形状を探索する。これにより刃の形状の最適化だけでなく,切断メカニズムの解明を進めることができる。 また実用的な積層構成である擬似等方積層板に対して,最適な成形条件・切断条件(温度,刃の形状,クリアランス)における加工品位を調べ,最適条件の最終的な検証を行う。これにより,実用化への可能性を探索することができる。 最後にミクロ切断シミュレーションを行う。粒子法ではミクロ切断シミュレーションが困難である可能性があるため,有限要素解析などを援用することで,マルチスケール解析が行えるよう工夫する。
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