2014 Fiscal Year Research-status Report
微細・薄膜・積層化によるMg系合金の水素吸蔵量・放出温度の改善とその機構の解明
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25420035
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
納冨 充雄 明治大学, 理工学部, 教授 (70218288)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水素吸蔵合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
① パルスレーザーデポジション(PLD)法によりMg膜,Mg/Ti積層体,Mg/Pd積層体,Mg/Ti/Pd積層体を作製した.Polyimide/Mg積層体とPolyimide/Mg/Ti積層体は0.8MPa,200°Cの水素化条件では水素を吸蔵しないのに対し,Polyimide/Mg/Pd積層体とPolyimide/Mg/Ti/Pd積層体は同条件下において水素を吸蔵した.さらに,Polyimide/Mg/Pd積層体は400から430°Cで水素を放出し,Polyimide/Mg/Ti/Pd積層体は140から200°Cで水素を放出した.そして,PCT測定より,Polyimide/Mg/Ti/Pd積層体は2MPa下においては0.417wt.%の水素を吸蔵し,10MPa下においては0.489wt.%の水素を吸蔵することが分かった.
② 真空蒸着法の一種である抵抗加熱法を用いて,Mg/Fe薄膜にTiを添加した試料を作製した.Mgを薄膜化し,触媒金属Tiを添加することにより,水素との反応効率が向上し,水素吸蔵特性が改善された.Mgの膜厚が14000nm以上のPI/Fe/Mg/Tiの水素吸蔵には200°Cより高温での水素化処理が必要であった.XRD測定によりMgH2のピークが得られた試料の水素放出反応は確認できなかった.
③ ミリング助剤としてステアリン酸を用いたメカニカルアロイング(MA)法によりMg-Ti固溶体の作製を行った.これにより,fcc構造を有するMg-Ti固溶体を作製することができた.さらに,このMg-Ti固溶体は300 ℃の水素化を行うことで,固溶体内の一部のMgが分離し,MgH2を生成した.しかし, Tiが固溶したMgの水素化物が得られず,水素放出温度の改善には至らなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① Mg/Ti積層体,Mg/Fe積層体及びMg-Ti合金粉末を作製し,X線回折によって結晶構造や水素化物の生成状態等を調べることができた.Tiの添加はMgの反応特性を改善する有効な方法であり,その熱的安定性が低いことが確認された.実用化を考える際には,第三元素の添加などによってMg-Tiの熱的安定性を改善することが必要である.
② ポリイミド基板に対してMg/Fe/Tiの順で蒸着させた積層体のMgの膜厚を300nmから13000nmと変化させ,Mg膜厚の影響を調べた.Mg膜厚300nmから13000nmは,水素化後のXRD測定結果において,MgH2の吸収ピークが存在した.次に,Mgの膜厚が14000nmと15000nmの試料では,作製直後と水素化後のx線プロファイルに変化は見られなかった.よって,Mg14000nm,Mg15000nmは水素を吸蔵しなかったと考えられる.
③ Mgの融点が約650 ℃であるのに対して,Tiの融点は約1670 ℃であり,融点差が大きいことから溶融によるMg-Ti固溶体の作製は困難であった.このことはMA法においてもMg-Ti固溶体の作製は困難であることを意味していた.今年度からAsanoらやMawejaらの結果を参考にして,ミリング助剤としてステアリン酸を用い,固溶体化が成功したが,この固溶体の結晶構造はfccであったため,十分な水素吸蔵特性を有していなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
① Polyimide/Mg/Ti/Pd積層体は,一般的な水素化条件において水素を吸蔵した.このことから,試料表面に積層したPdの触媒作用および酸化防止作用がMgの水素吸蔵特性の向上に有効であることが確認された.しかし,Pdは高価かつ重い元素(単位体積あたりMgの約7倍)であるため,実用化を考える際には安価で,かつ軽量な代替触媒の必要である.さらに,重量貯蔵量の増加のために基板の重量を低減することも検討する.
② Mgの薄膜化により,2.5MPa,200℃でPI/Fe/Mg/Ti積層体が水素を吸蔵することが示された.Jainらは,金属を薄膜化することにより水素との反応効率が向上すると報告している.薄膜化したMgはバルクと比較して,表面積が増大する.これにより水素との反応面も増大し,反応効率が向上したと考えられる.さらに,Wangらは,Tiの酸化物TiO2は水素分子の解離を促進すること,水素原子拡散の通路として作用すること等の利点を有しており,水素吸蔵特性を改善する報告している.本研究ではTiを多層膜の最外層に蒸着した.これにより,Mgの酸化を防ぐだけでなく,大気中の酸素と反応してTiO2を生成し,水素吸蔵特性を改善したと考えられる.引き続き,最適な積層構造の条件について調べる.
③ Mg-Ti合金については,MAの条件を検討する.ミリング助剤としては,有機溶剤やステアリン酸及びその塩等のワックス類がある.これらの利用により,fcc固溶体ではなく,安定なbcc固溶体の作製を目指す.
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Causes of Carryover |
当初予定していた積層体の作製に対して,若干,少ないサンプル数である程度の結果が出たため,系統的な実験計画を考慮して,次年度に作製する積層体の予算に回すことにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
積層体の作製のための消耗品の購入に充当する.
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