2013 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッド界面制御と破骨細胞制御による新しい骨再生医療用生体吸収性材料の創製
Project/Area Number |
25420036
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 基嗣 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (30346085)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 骨再生医療用生体吸収性材料 / ハイドロキシアパタイト / 生体吸収性ポリマー / 界面制御 / 破骨細胞 / 細胞挙動制御 |
Research Abstract |
本研究では,粒子/母材間の界面接着状態を飛躍的に改善可能なハイブリッド界面制御,最適な母材の選択,剛性変化を設計することによる破骨細胞の基質融解挙動制御を組み合わせて,治療初期は人工骨そのものが骨機能代替を果たすとともに,骨芽細胞による骨形成を促進するだけでなく,破骨細胞による人工骨分解・吸収を両立し,加水分解によって人工骨が「やわらかく」なると破骨細胞を徐々に不活性に制御することが可能な,高特性・高機能な骨再生医療用足場用ハイドロキシアパタイト粒子/生体吸収性ポリマー複合材料を創製することを目的とした.これにより,生体材料・複合材料・細胞挙動の知見を組み合わせた新しい材料システムの構築に寄与することを目指している.1年目の成果は,以下のように要約される. 1)フーリエ変換赤外分光光度計を用いて,ハイドロキシアパタイト粒子表面へハイブリッド界面制御を施した際に二種類の生体親和性ポリマー(ペクチンとキトサン)が付着している表面積率を推定する方法を構築した.また,修飾する生体親和性ポリマーの量を変えたハイドロキシアパタイト粒子を用意し,修飾可能な最大量を導き出した.その結果,修飾可能最大値は,ペクチン:11 [wt%],キトサン:0.5 [wt%]となった. 2)修飾表面率を変えたハイブリッド界面制御ハイドロキシアパタイト/ポリ乳酸複合材料の引張試験をおこなった結果,修飾表面率の増加とともに破壊特性が向上した. 3)弾性率を変化させた基質(コラーゲン,キトサン,ポリカプロラクトン)上で培養した破骨細胞の代謝挙動を観察した.その結果,破骨細胞の分泌物産生挙動は足場の基質弾性率の影響を受けることが明らかとなった.特に,10 [kPa]前後の弾性率を越えると破骨細胞への分化数が増加しはじめ,100 [kPa]程度の弾性率を越えると不活性な破骨細胞が活性化され始めることが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の推進にあたって,まず,当初計画にはなかった界面制御効率(ハイドロキシアパタイト表面修飾率)の評価および制御方法の構築が必要となった.これまでの取組みで,ハイドロキシアパタイトに対する最適な修飾高分子量が明らかとなり,安定した複合材破壊特性を発現させることが可能となった.しかしながら,当初計画で初年度に実施する予定であったハイブリッド界面制御が適用可能な生体吸収性ポリマーの探索が未達成である.また,種々の材質・弾性率の基質上での破骨細胞培養実験から,破骨細胞が活性化し得る材質・弾性率の目安を得ることができた.このことから,細胞培養関連の計画の大半は達成したと言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず,現状で未達成であったハイブリッド界面制御が適用可能な生体吸収性ポリマーの探索を進める.キトサン・ポリカプロラクトン・ポリブチレンサクシネート・ポリグリコール酸などの種々の生体吸収性ポリマーにハイブリッド界面制御ハイドロキシアパタイトを分散し,引張試験を行って,ポリマー単体と比して破壊特性が大きく向上するものを探索する.また,ハイブリッド界面制御ハイドロキシアパタイトを含有する基質上での破骨細胞培養実験をおこなう.また,ハイブリッド界面制御ハイドロキシアパタイト/生体吸収性ポリマー複合材料の破壊試験・加水分解試験をおこなう.これにより,破壊特性・加水分解特性・細胞挙動を最適化しうる材料システムを絞り込む.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試行錯誤的な実験が多く発生したため,消耗品費は予定より多く消費した.次年度はさらに実験量が増えることが予想されるため,多額の消耗品費が必要となる.一方で,本予算で購入予定であった精密万能試験機オートグラフを別予算で購入できた.また,海外で開催される国際会議での発表を一定の実験結果がでそろうまで見送ることとしたため,結果として次年度使用額が生じた. 試行錯誤的な材料試験・細胞培養実験を大量に実施するため,細胞試料とその関連試薬だけでなく,多種の生体吸収性ポリマー・修飾高分子・光解離性保護基をはじめとする消耗品が大量に必要であり,これらを購入する.また,ヨーロッパで開催される国際会議をはじめとして成果を発信するため,旅費が必要となる.
|
Research Products
(3 results)