2013 Fiscal Year Research-status Report
歯科技工士が現有の作業場に簡単に導入可能なオールセラミック義歯製造技術
Project/Area Number |
25420054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 裕之 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90284158)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オールセラミックス義歯 / オンデマンド成形 / アルミナ / 医療材料 |
Research Abstract |
交付金決定後に,改めて新規購入の3Dプリンターの選定を行った.すると,元々は可塑性樹脂射出方式の3Dプリンターを想定していたのだが,H25年度中旬に,小型で安価な紫外線硬化方式の3Dプリンターが別途発売されることが明らかとなった.それらの仕様を精査したところ,紫外線硬化型の方が寸法精度に優れているために,そちらに照準を合わせて予備実験を行うことにした. このプリンターは,熱硬化系の樹脂を使用するため,本研究で狙っている,アルミナ成形後の,型ごとの加熱による熱分解脱型が不可能になる可能性がある.そこで,本体購入の前にこのプリンターで使用する樹脂の熱分解特性を確認したところ,酸素を遮断した蒸し焼き状態にすれば,400℃程度でほとんど全て熱分解することが分かった. そこで新規のプリンターを購入し,歯の内形状をもつ薄肉の型をプリントしたところ,肉厚0.4mm以上あれば型がプリントできることが分かった.これに,太さ2.5mm以上の足を付け成形型底部に固定して,アルミナ泥漿に浸漬して高速遠心成形法(HCP)により成形したところ,型の浮き上がりもなく,また型の崩壊なく,緻密にアルミナ粉末が充填した成形体を得ることが出来た. これをそのまま取り出して,炉内で加熱して脱型したところ,型が熱分解時に収縮するために成形体が崩壊することが多かった.この点は改良の余地がある. また,本法で得られた成形体は焼結密度が低かった.これはおそらく,樹脂からのコンタミネーションの影響であると考えられる.次年度以降は,これらの問題を解決していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定より寸法精度の高い,熱硬化型の3Dプリンターを使って,歯の形状の空隙を持つ樹脂型を作ることができ,これを高速遠心成形法(HCP)において埋設成形しても型の崩壊なしにアルミナ成形体を得ることが出来た.ここまでは,他のセラミックスプロセスと比べて,かなり簡便にはの複製が可能になることが明らかになった. ただし,樹脂型の熱分解除去と,焼結製の確保には課題が残されている.この部分を,次年度以降集中的に解決していく. 以上,研究全体の進捗状況としては,概ね予定していた程度の進歩が認められる.
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Strategy for Future Research Activity |
3Dプリンターによる樹脂型の作製と,これをアルミナ泥漿柱に埋設したHCP成形技術に関してはほぼ問題ないので,それ以降の熱分解脱型と焼結に関して,主に実験を集中していく予定である. 型の分解方法としては,最初から型に複数の切れ目を入れておき,型が収縮する過程で,早い段階からバラバラにばらけるような工夫を試みる予定である. 焼結製の確保は,おそらく現状では樹脂の微量成分が成形体中に残留し,これがアルミナの密度上昇を阻害していると考えられるので,仮焼結体の段階で,酸洗をして,取り敢えず焼結密度の改善が認められるかどうかを確認する.その後,焼結製阻害成分が特定できたら,プロセスの最初からその除去が可能かを検討して,出来ればコンタミフリーの成形体が直接得られるようなプロセスの可能性を模索していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は3Dプリンターと3Dスキャナーを同時購入する予定であったが,本学科に本年度より3DーCADシステムが一括購入されうこととなり,それを使用した方が研究の進め方がスムーズだと言うことで,スキャナーの購入を見送った.その代わり,ベンチャー企業の試作品の傾向が強いが,本研究の目的に合致した,寸法精度の高い紫外線硬化型の3Dップリンターを二台購入し,これらの機械を,発売元とと適宜情報交換しながら使いこなす研究体制を敷いた.ただし,当初の計画と購入機器に変更があったため,予算が一部残留した. 3Dプリンターの仕様が変わっているために,研究結果においても報告したように,熱分解脱型の時に,酸素を遮断する処理が必要となる.現有の焼結炉に,そのような工夫が組み込めるような方策を採ることとする.また,アルミナ焼結体の焼結製が劣化しているが,これも樹脂の残留成分によるものと思われるので,これを除去する方策に,研究申請時に比べて多くの予算を割く必要が生じてきている.
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