2013 Fiscal Year Research-status Report
多価重イオンビームの結晶材料の隆起現象を利用した3次元ナノ加工技術の開発
Project/Area Number |
25420061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
百田 佐多生 高知工科大学, 環境理工学群, 准教授 (50299393)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 3次元ナノ加工 / イオンビーム / 結晶材料 |
Research Abstract |
マイクロ・ナノスケールの3次元加工技術の開発のために、1)多価重イオンビームの低エネルギー領域への拡張と、2)結晶の膨張効果を利用した3次元構造体の表面方向の形状変化に関する研究を実施した。 1)本研究は、イオンビームによる結晶の膨張効果に起因する表面形状の変化を、3次元構造体の加工技術として効果的に利用することを目的としている。隆起加工の場合、シリコンなどの結晶材料の隆起高さを0 ~ 100 nmの領域で制御することを目指している。多価イオンビームの高い加速性が100 nm程度の高い隆起生成に適しているのに対して、10 nm程度以下の低い隆起生成や多価イオン効果の有効利用のためには、イオンビームのエネルギーの下限を下げる必要がある。そこで、既存のイオンビーム照射装置にイオンビーム減速システムを設置した。従来は加速電圧の下限が10 kVだったのに対して、この減速システムの利用によって、一旦加速したビームを減速することが可能になった。さらに、ビームを収束するための静電レンズの条件を最適化し、ビーム強度を極度に低減させることなく加速電圧1 kVに対応するエネルギーのイオンビームを生成することに成功した。 2)イオンビーム照射による結晶の膨張効果を表面方向の変形に適用し、3次元構造体の二次加工の可能性を検証した。あらかじめシリコン表面に加工した数100 nmサイズの縞状構造体にKrビームを照射し、凸部の断面形状の変化を観測した。この結果、凸部の表面方向のサイズがイオンビームの照射によって変化し、その変形の度合いがビーム照射量によって制御できることを見いだした。さらに、今回得た表面方向の変形加工の特性は、以前の研究で得られた表面と垂直方向の変形加工と異なる様相を示すことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、H25年度に1)多価重イオンビームの低エネルギー領域への拡張と2)シリコンと炭化シリコン試料を用いた加工特性の評価を予定していた。 1)多価重イオンビームの低エネルギー領域への拡張に関しては、イオンビーム照射装置に設置した減速システムと運転条件の最適化によってビーム強度を極度に低減させることなく加速電圧1 kVに対応するエネルギーのイオンビーム生成に成功した。これはArの9価イオンでは9 keVに対応する。従って、目標を達成したと判断する。 2)シリコンと炭化シリコンを用いた加工特性の評価に関しては、隆起高さの加工特性に関する測定が完了しなかった。これは、イオンビーム減速システムを構成が単純で取り扱いが容易な方式に変更したためビームの軌道計算が新たに必要となり、システムの設置時期が遅延してしまったためである。遅れた部分に関しては、1)で目標を達成したシステムを使ってH26年度中に完了する予定である。これとは別に、H25年度はイオンビーム照射による結晶の膨張効果を隆起方向とは垂直な表面方向の変形に適用し、3次元構造体の加工の自由度を拡張した。これは当初の計画を超えて、加工技術をより高度化させることにつながる。従って、進捗が遅れている部分はあるが、計画以上に進展している部分もあると言える。 以上より、全体としてはおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度以降は、1)結晶材料を使った隆起加工特性の評価、2)加工領域の大面積化の可能性の検証を行った上で、3)加工表面の幾何学的、力学的特性を評価する。 1)H25年度に設置した減速システムを利用して、シリコンと炭化シリコン試料の隆起加工を実施する。イオンビームのエネルギーと照射量を変えて隆起高さを測定し、最高100 nmまでの3次元構造の形成を目標に加工特性を評価する。特に、加工が困難な炭化シリコンに対して、多価イオンビームの有効性を確認する。 2)加工領域の大面積化のために、まずガスミキシング法を使ってビーム強度の増強を試みる。次にラスター照射を適用し、今までビームスポットのサイズ(1~2 mmφ)に制限されていた加工領域を拡張し、10 x 10 mmの領域内でのシリコン試料の隆起加工を実施する。 3)加工した材料をMEMS-NEMSの構成要素として利用することを想定し、表面の平滑度や機械的特性を原子間力顕微鏡やインデンテーション法を用いて評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イオンビーム減速システム設置に遅延が生じたために、H25年度における炭化シリコン試料の購入を見合わせた。 H26年度に炭化シリコン試料を購入する費用として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)