2014 Fiscal Year Research-status Report
多価重イオンビームの結晶材料の隆起現象を利用した3次元ナノ加工技術の開発
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25420061
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
百田 佐多生 高知工科大学, 環境理工学群, 准教授 (50299393)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 3次元ナノ加工 / イオンビーム / 結晶材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
主な成果は1)Si, SiC結晶を使った隆起加工特性の評価、2)加工表面の力学的特性の評価、3)ナノ構造体の表面方向の形状制御 の3点である。 1)Si以外の結晶として高硬度で加工が困難なSiC結晶へArビームを照射し、SiC表面に隆起構造を形成することに成功した。90 keVのエネルギーでArビームを照射したところ隆起高さが照射量とともに増加し、Si結晶と同様に隆起高さがイオンビームの照射量で制御できることを示した。隆起高さは、同一の照射条件で±2 nmの精度で再現することができた。また、最大で約25 nmの隆起高さを得た。この隆起高さは、同一条件でArビームを照射したSi結晶に対して約2倍となった。 2)Krビームを照射したSi結晶表面の機械的強度(硬度、ヤング率)を、ナノインデンテーション法で評価した。隆起構造が形成される照射条件ではSiの非晶質化が完全ではないため、観測された機械的強度の低下は完全な非晶質状態よりも抑制することができた。機械的特性の深さ方向の連続測定によって、機械的特性の深さ方向の変化が、KrビームがSi結晶中に生成する欠陥の深さ分布を反映していることを示した。また、Krビームの照射量の違いがヤング率よりも硬度により強く反映されることがわかった。 3)あらかじめSi表面に加工した縞状構造体にKrビームを照射し、凸部の断面形状の変化を観測した。この結果、凸部の表面方向の変形の度合いが、初期の縞状構造のサイズによって変化することが分かった。また、Si表面の500nm径の穴構造にKrビームを照射し、照射量によって穴径を制御できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、1)加工領域の大面積化の可能性の検証、2)加工条件が隆起表面の形状や機械的特性におよぼす影響の評価、3)進捗状況の国内学会や論文での発表を予定していた。 1)Si結晶にArビームやKrビームのラスター照射を施し、それまでビーム径(~ 2mmφ)で制限されていた加工領域を10 mm x 10 mmまで拡張して加工することを達成した。ガスミキシング法に必要な2系統のガス導入システムを構築したが、ビーム強度向上のための最適化まで到達しなかった。これはガス導入システムのもれのためにイオン源に導入ガス以外に大気成分が混入したためである。H27年度の初旬にこの不具合を解消予定で有り、ビーム強度の増強を達成した上で隆起加工のために使用する予定である。1つ目の項目に関しては若干の遅れが生じていると言える。 2)H25年度に未達成であったSiとSiCの特性の評価に関して、H26年度に研究を実施しそれぞれの結晶で加工特性に関する知見を得た。また、SiCがSiより2倍の隆起高さが形成されることを示した。また、KrビームをSi結晶に照射し、照射条件が機械的特性に及ぼす影響に関して知見を得た。さらにこの結果からは、ナノインデンテーション法が材料表面の変質層の厚さ等を評価する手段として利用可能であることが分かった。また、表面方向の膨張が構造体のサイズに依存することも分かった。2つ目の項目に関しては、当初の計画を超えて、進展があったと言える。 3)進捗状況は国内学会で2回、国際会議で2回発表した。また、隆起加工に関する論文1本が掲載され、機械的特性に関する論文1本は査読中である。3つ目の項目に関しては当初の計画を達成したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は、1)イオンビームを照射したSiC結晶表面の機械的特性の評価、2)強度を増強したイオンビームを用いた加工領域の大面積化の検証行った上で、3)段差構造を持つ3次元構造体の加工を試みる。 1)加工した材料をMEMS-NEMSの構成要素として利用することを想定し、イオンビームを照射したSiC表面の平滑度や機械的特性を原子間力顕微鏡やインデンテーション法を用いて評価する。 2)ガス導入部に発生した不具合を解決し、ガスミキシング法によってビーム強度を増強する。強度を増強したイオンビームとラスター照射を併用し、10 x 10 mmの領域内でのSi, SiC試料表面に隆起加工を実施する。H25年度に設置した減速システムを利用した低エネルギー(< 10 keV)のイオンビームの照射や、多価イオンビームによる高エネルギー(> 100 keV)での照射によって、最高100 nmまでの隆起構造の形成を目標に加工特性を評価する。 3)今までに得られた知見を統合し、場所によって隆起高さが異なる(段差構造を持つ)構造体の形成を試みる。このために、エネルギー・照射量など条件が異なる一連のイオンビーム照射を実施する。 4)研究成果をまとめ、国内外の学会や論文で成果を発表する。
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Research Products
(5 results)