2013 Fiscal Year Research-status Report
産業用ヒト型双腕ロボットの巧妙なプレート操り動作による転がりボールの運動制御
Project/Area Number |
25420075
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
廣垣 俊樹 同志社大学, 理工学部, 教授 (80275172)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 産業用ロボット / 協調制御 / 双腕 / プレート操り / 自動化 / 数値制御 |
Research Abstract |
産業用のヒト型双腕ロボットの両腕に600×450×20mmの木製プレートを保持して,表面が薄いゴムがコートされた鋼球製ボール(直径22mm)を載せ,ボールの操り動作の基本性能を調べた.プレート上にボールの転がり円運動を生成した定常状態を対象にして,ロボットの両腕の協調運動によるプレートの旋回角度運動入力に対する,転がりボールの円運動の直径出力から周波数応答特性(ボード線図)を取得して考察した.すなわち,プレートの操り運動により,プレート上のボールの任意の運動の制御を目的にしており,そのための基礎データとして周波数応答特性を取得した.プレートのサイズは,ヒトが生活で扱う盆と同程度に設定している.またプレートのボールにすべりが生じないように表面を薄いゴムで覆った鋼球製のボールを用いたが,表面のゴムの粘弾性などにより生じる運動系の減衰の影響が大きいことが判明した.すなわちゴムによる減衰係数が大きく,系を安定させるためには良いが高い周波数特性が必要な場合,周波数応答における位相の遅れの問題が無視できないことが判明した.また得られた基礎データに基づいてシミュレーションにおける検討も並行して遂行した.その結果,ボールの運動軌跡が,接線連続や曲率連続な線の場合には大きな問題にはならないと考えられるが,申請のような接線不連続な線を描かせるには,ボールとプレート間のすべりを生じない制約条件下で,系の減衰係数を小さくする必要性が生じる可能性が判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
双腕ロボットの両腕にプレートを保持して,双腕の協調運動制御によりプレートに旋回角度運動を与え,プレート上のボールの転がり運動を制御する点で実験およびシミュレーションの両面から比較的順調に研究は遂行している.ボールとプレート間のすべりを防止と系の応答性のトレードオフ問題が生じているが,プレートまたはボールの表面の材質の組み合わせを工夫することで,当該の問題を解決できるもの予想される.転がり運動の制御は,その安定性が問題と予想していたが,接線連続または曲率連続な軌跡程度までは十分に安定性が確認できた.予備検討により,表面にゴムが薄くコートされた鋼球を選定した成果でもあるが,ヒトがプレートを操り同様のボールで転がり運動を制御する場合と比較して,十分に高い安定性と再現性を達成できた.ボールの種類とプレートの材質などの組み合わせ問題を考えると,一般性や普遍性が保証されるだけのデータが取得できた訳ではないが,プレート上で任意のボールの転がり軌跡運動を生成するための目処としては十分な結果と考える.事前の検討と先行研究での考察より,接線不連続線の転がり運動軌跡は理論的に誤差ゼロにはならないことが判明している.しかしながら接線不連続な転がり軌跡線の生成においても,実用上は問題にならない程度に運動軌跡誤差を小さくできる目処が見えてきた.したがって,初年度の取り組みとして十分な成果を達成したものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
プレート上に接線不連続なボールの転がり軌跡を生成させるためには,プレートに与える角度入力運動に対するボールの転がり運動の周波数特性の改善が不可欠である.プレートとボール間のすべりを防止する手法を検討すると共に,ボール自身の慣性モーメントと慣性質量の比にも着目して,転がり運動制御の手法として両面から改善手法を検討する予定である.予想される結果としては,ボールとプレートのすべり摩擦係数およびボールの慣性モーメントと慣性質量の比の組み合わせ問題になるものと考えられる.もう一方の問題として,用いるヒト型産業用ロボット自体の指令に対する運動の周波数応答特性が考えられる.工作機械などの制御機器に比べて,産業用ロボットの応答性は低い.さらに双腕であるため,マスター腕とスレーブ腕の同期誤差の問題の生じる可能性がある.今後は,これらの課題に取り組み,それぞれの制約条件の定量化を行う.その結果に基づき,接線連続の転がり軌跡線を想定した場合の,軌跡誤差(特に接線不連続点における)とボールの転がり運動速度の関係を明確化する.どちらにしても,接線連続や曲率連続な転がり軌跡線においては十分な制御性が確認できたので,そこからどれだけ周波数特性を改善できるかがポイントになる.制御対象とするボールとその接触対象であるプレートの組み合わせ問題,さらに双腕ロボット自体の応答特性の問題の両面から,ボールの転がり運動制御の精度を向上させる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほぼ計画通りに使用したが,価格変動の影響により僅かな額の差異が生じた.研究の計画に大きな影響はない範囲の僅かな差である. 次年度に使用する.
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Research Products
(3 results)