2013 Fiscal Year Research-status Report
極低温環境用マイクロ電歪・圧電アクチュエータの試作研究
Project/Area Number |
25420091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
神田 岳文 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30346449)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 機能要素 / 圧電アクチュエータ / 極低温環境 |
Research Abstract |
本研究は、複合極限環境、具体的には極低温、強磁場環境下で使用することの出来るマイクロアクチュエータを、圧電・電歪材料を駆動源として実現することを目標としている。このためにアクチュエータ材料、アクチュエータ構造、設計・制御を目的としたモデル化の3点について研究を進める予定である。本年度は、極低温環境内でアクチュエータと、これに用いる材料の評価を行うために、液体ヘリウム温度付近でのアクチュエータ評価環境を整備するとともに、駆動源となるアクチュエータ材料に関する検討を中心に研究を進め、さらにアクチュエータ構造に関わる振動子構造の検討を行った。 アクチュエータの駆動に用いる材料の検討として、これまで用いていない電歪材料を駆動に用いることを目的として、リン酸ガリウム、チタン酸ストロンチウムの低温環境における駆動特性の評価を行った。これらの材料を低温環境において振動子の駆動に用いるために、低温環境において分極処理を行い、低温環境での結晶構造にそった分極状態とすることを試みた。リン酸ガリウムについては室温における分極処理の場合と異なり、低温環境での分極処理により電気的測定による共振状態に大きな変化が見られた。一方チタン酸ストロンチウムについてはこのような変化は見られなかった。 次に、アクチュエータ構造に関わる振動子構成について、振動性能(減衰の小ささ)を維持、もしくは向上させながら低温環境で熱応力の影響の少ない状態を得るために、主として材料に着目して検討を行った。低温環境において材料の非線形的な特性を考慮した振動解析により比較し、予圧調整の必要なく、振動性能の高い振動子の製作を行った。この結果、室温から低温環境まで、予圧調整の必要がない振動子を実現することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圧電材料の低温環境での分極処理を行い分極処理が成功しているかどうかの評価を行った。PZTの再分極処理では、分極処理前の最大のアドミッタンスが9mSであったが、再分極処理を行うことで最大のアドミッタンスが16mSまで向上したことを確認した。また、リン酸ガリウムの分極処理では293Kで行った際では、アドミッタンスの値に変化が確認できなかったが、4.5Kにおいて分極処理を行うとアドミッタンスの値が大きくなった。以上により、提案した低温環境での分極処理という手法により、従来使用していなかった材料をアクチュエータの駆動源とすることの可能性を示した。 次に、ボルト締めランジュバン型振動子の胴体とナットには振動性能の高い材料を使用し、ボルトには胴体とナットとは熱膨張係数の異なる材料を用いることで、熱応力を低減し、予圧調整の必要なく、振動性能の高い振動子の製作を行った。振動子の胴体とナットに熱膨張係数の大きい材料を使用し、ボルトに胴体とナットで用いた材料よりも熱膨張係数が小さい材料を使用し、圧電素子へ発生する熱応力を有限要素法により算出した。その結果から、最大の熱応力が最も小さかった組み合わせで振動子を構成することを決定した。293Kから4.5Kにおいて、振動子のアドミッタンスを測定することで、各温度における最適締め付けトルクの評価を行った。各温度の最適締め付けトルクはどの温度においても1.0Nmと一定であった。この結果から、圧電素子に発生する熱応力の影響が小さいことが確認された。これにより、振動子の胴体とナットに熱膨張係数の大きな材料を使用し、ボルトに振動子胴体とナットに用いた材料よりも小さい熱膨張係数を持つ材料を用いることによって熱応力を抑えることができた。以上により、室温から低温環境まで、安定的に駆動可能なアクチュエータの駆動源となる振動子を得ることに成功した
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き駆動源としての振動子の検討を進めるとともに、アクチュエータの試作・評価を行う。 初年度、電歪材料に関する低温環境での駆動特性に関する評価を行い、特に低温環境での分極処理について興味深い知見を得ている。引き続きこの手法について振動子としての性能を評価するために、低温環境での駆動状態の測定を行い、圧電定数の比較を行う。これにより、低温環境での分極処理に関する条件を明確に得ることを目標とする。極低温領域で相転移を生じる材料に対してこの処理を行うことによって、常温状態とは異なる特性が得られると考えられることから、初年度に扱わなかった材料についても検討対象とする。 アクチュエータの試作・評価については、初年度に得られた、熱応力変化の小さい振動子を用いた駆動実験を行う。室温から極低温までの温度環境において、予圧調整の必要がない安定的な駆動を得ることを目指す。 極低温環境用アクチュエータの設計において、有限要素法を用いた熱応力解析、モーダル解析、発生変位・力の周波数応答解析は、振動子設計のうえで重要な手法である。しかし、アクチュエータの設計(各種パラメータの最適化)においては、振動子だけでなく移動子を含めたアクチュエータ全体のモデルを用いる必要がある。等価回路解析の手法を用いてアクチュエータ全体のモデル化を行う。このモデル化においては温度環境の影響を考慮し、極低温環境でのアクチュエータ駆動実験の結果により有効性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験装置の仕様変更により、当初計画時の価格に比べて安価となったため。ただし、この変更による研究計画への影響はない。 初年度に得られた成果により、圧電材料評価について検討事項の追加が生じたため、これにより必要となる消耗品の購入に使用する予定である。
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