2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420095
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡部 修一 日本工業大学, 工学部, 教授 (60220886)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | DLC膜 / 表面自由エネルギー / プラズマ処理 / 表面改質 / 摩擦係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
DLC膜は優れた固体潤滑膜として認知されているが、使用環境によっては膜寿命の観点から課題が指摘されている。そこで本研究では摩擦耐久性の向上を目的に、膜表面の自由エネルギーを任意に制御できる技術開発を行うものである。昨年度は酸素(O2)プラズマを用いた膜形成後の後処理を実施し、液滴法によって測定される表面自由エネルギー値が処理前の値の2倍程度大きくなることを明らかにした。今年度はガスプラズマによる後処理用のガスとしてCF4も加えて実験を進めた。O2とCF4プラズマ処置は、共にPBII法を用いている。この方法はDLC膜を形成する方法と同じで、すなわち膜形成と同じチャンバーを用い、試料を外気にさらすことなく処理を実施している。Si (100)ウエハ基板の上に形成した膜にそれぞれのガスを用いてプラズマ処理を行っている。処理後の膜はAFMを用いて表面の微視的形状変化を、ATR-FTIRを用いてDLC膜表面の化学構造変化を、そしてボールオンディスク摩擦試験機を用いて摩擦特性を調べている。結果から、O2プラズマ処理によって膜表面に水酸基を主体とした層が形成され、その時の表面粗さは0.20-0.25nm程度であること、そしてCF4プラズマ処理によっては、フッ化物基が表面に形成され、その時の表面粗さは0.16-0.21nm程度であることがわかった。すなわちO2プラズマ処理によって膜は親水性表面を示し、CF4プラズマ処理ではDLCが疎水的な表面を示すことを明らかにした。さらに両者の処理をした膜の摩擦特性を比べると、CF4処理の方が摩擦係数がより低くなることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は主として2種類のガスを用いたプラズマ処理が膜の表面自由エネルギーに及ぼす効果についての検討を行った。研究計画ではこのほかに極性基を持つ新たな層を形成する手法を開発すること、ならびにウエットプロセスを重畳させる表面改質についての検討も実施する予定であったが、処理装置の準備の都合で実施することができなかった。さらには処理後の表面改質層の評価法の検討もやや遅れているのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
極性基を持つ新たな層を形成する手法については、CF4ガスによるCVD処理が効果的であることが予備実験で分かっており、この処理条件の検討を進める。そしてウエットプロセスを重畳させる手法についても順次整備していく。さらにこれらDLC膜極表面の物性評価法として、極薄表面の電気抵抗変化を調べることも実施したいと考えている。また湿度雰囲気を制御した摩擦試験も実施し、湿度を変えることによって膜の摩擦係数と表面自由エネルギーの値との間に相関関係があるかどうかを調べることも併せて実施する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度はガスプラズマを用いた処理は実施できたが、極性基を持つ新たな層を形成する手法の開発、ならびにウエットプロセスを重畳させる処理装置の準備が遅れてしまっている。さらには処理後の表面改質層の評価法の検討もやや遅れており、その結果、次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験で使用する消耗品などの物品費以外に、極性基を持つ新たな層はCF4ガスによるCVD処理が効果的であることから、この処理に使用するガスを購入する。そしてDLC膜極表面の物性評価のために、極薄表面の電気抵抗測定器の購入を予定する。さらには湿度雰囲気を制御した摩擦試験を実施するために必要な温湿度計などの購入も予定する。
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Research Products
(8 results)