2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420104
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊澤 精一郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90333856)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 境界層遷移 / 前縁部受容性 / 渦度攪乱 |
Research Abstract |
一様流に含まれる乱れ(主流乱れ)は,翼の前縁のように速度や圧力が急激に変化する領域で境界層中に入り込み,下流で成長して乱流遷移を引き起こす種となる.もちろん主流乱れは境界層外部の一様流中に常に存在しており境界層はその影響を受け続けるが,一般にその影響は無視できるレベルにあるとみなされている.初年度は,物体前縁部の受容機構を調べるにあたり,まず風洞実験により一様流中の局所的な乱れに対する境界層そのものの受容性を明らかにすることから始め,数値計算により境界層が乱流化しやすい環境について探った.これらの研究は,修士研究の一環として行われた. 前者については,境界層への影響を極力排除した翼型の外乱発生装置を設計して局所外部乱れの導入を図り,境界層の成長に及ぼす影響について調査した.その際,装置後縁部から下流に向かってシート状の噴流を噴射することで,装置自身が作る速度欠損を補いつつ乱れだけを導入するようにした.定常噴流と脈動噴流を用いた実験の結果,境界層外を流下するスパン方向に一様な乱れは,境界層内部の速度変動の成長には直接的な影響を及ぼさないことがわかった. また,後者の数値計算については,遷移過程に現れるストリーク構造に着目し,その低速ストリークに対して壁面から噴流を噴射することで境界層を乱流化させることを試みた.その結果,流れ方向に連なる符号の異なる縦渦の相互作用が乱流の初生に関わっていることが強く示唆された.なお,一部の数値計算には,本学サイバーサイエンスセンターの並列コンピュータを使用した.計算コードの高速化については,ひとまず乱流研究に使用しているコードに関してセンターのスタッフより技術的なアドバイスを受け,演算時間比で最大76倍程度の性能向上を実現した.今後も適宜アドバイスを受けながら計算を進める予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的である主流乱れと前縁部受容機構の関係を明らかにするにあたり,まず境界層の乱流化を促進する環境について着目し,境界層外部の一様流中の局所的な乱れが境界層の成長に及ぼす影響や乱流境界層の初生構造について調べるところから始めたため,新たな計算コードの開発まで手が回らなかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
数値計算については既存の差分法ベースのコードを中心に進め,必要に応じて新たなコードを開発することとする.また,風洞実験については,平板上流に外乱導入装置を設置し,赤外線カメラを用いて境界層が遷移する様子を計測し遷移点を特定する.これらの結果を踏まえ,主流乱れ,受容係数,遷移点の3者の関係を整理し,乱れの受容現象の解明を目指す.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に購入予定であった赤外線サーモグラフィーは,当初予定していた価格(178万円)よりも安く購入(147万円)することができたが,3月に購入したため支払いが4月にずれ込み,会計処理上次年度の支出に繰り込まれることとなった. 実質的な予算の繰り越し分(6.6万円)は,次年度の大型計算機使用料にあてる予定.
|