2013 Fiscal Year Research-status Report
水を含む二成分混合系の静的および動的な濡れのメカニズムの分子スケール解析
Project/Area Number |
25420123
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 康隆 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30346192)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子シミュレーション / 濡れ / 液滴 / 水―アルコール混合系 |
Research Abstract |
水とアルコール混合物で構成される液滴の固体壁面上における濡れについて分子動力学法を用いた解析を行った.特に平衡状態における分子スケールの液滴について,マクロスケールにおける接触角と固液,気液,固気の界面張力の関係を示すYoungの式の拡張の可能性を検討した.具体的にはアルコールとしてメタノール,およびイソプロピルアルコール(IPA)を用い,固液間に電気的,すなわちクーロン力による相互作用を有さないファンデルワールス力のみを仮定した無極性の固体壁面に対して,水とアルコールの混合液滴を接触させた場合,アルコール濃度の増加に従って濡れが良くなることが分かった.またメタノールとIPAでは,液滴内の分散状態や,固液,気液の界面における局所的な濃度が異なることが分かった.これらを踏まえ,気液,固液界面における界面濃度をギプスの分割面を用いた表面過剰量から定量的に算出した.またYoungの式の成立の可能性を検討するため,様々な水-アルコール濃度の準一次元的な系を作成し,この系における圧力テンソルの空間分布からBakkerの式を介して界面張力を求め,表面過剰量と界面張力の関係を求めた.これにより,前述の液滴系における固液,気液,固気界面張力を見積もりが可能となり,界面張力の釣り合いから予想される接触角と,分子スケールで観測される接触角が一致する,すなわちYoungの式が成立することを示した.これらの成果を査読付き国際学会誌に投稿,発表したほか,国際学会を含む複数の学会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
水を含む二成分混合系の静的および動的な濡れのメカニズムの分子スケール解析というテーマに関して,前述のように2種類のアルコールについて,無極性の固体壁面について平衡状態におけるYoungの式の成立を確認した.既に国際学術誌で発表していることなどを考えれば,当初の計画通りに順調に研究が達成されていると考えている.また前述の水―アルコール系においては別途作成した準一次元系において界面張力を見積もったが,並行して行ったLennard-Jones系における平衡状態における液滴の計算では,液滴内の応力テンソルの空間分布を直接的に算出し,系を別途作成することなく,対象とする液滴そのものから固液,気液,固気界面張力を直接抽出することに成功した.これらをYoungの式に代入したところ,同じく界面張力の関係から予想される接触角と観測される接触角が一致することを確認できた.この成果も国際学術誌で発表している.これをLennard-Jones系における動的な濡れに拡張した計算を行っており,こちらについても国際学会における発表を予定しているなど,動的な過程の解析についても既に,ある程度の成果が得られており,順調に研究が達成されているといえる.これらを総括すると,3年間の研究計画についての1年目の成果としては,当初の予定以上に進んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の展開として,現段階では固液間に電気的,すなわちクーロン力による相互作用を有さないファンデルワールス力のみを仮定した無極性の固体壁面を用いているが,実在の固体壁面は,その表面を修飾するOHなどの官能基が電気的な相互作用を有することが明白であり,これらの影響を考慮することが第一段階の目標である.固体壁面としては,実験的に比較的構造が明確に規定されているSiO2表面を想定しており,これをOH基で修飾したものを壁面として用いて解析を行う予定である. また,動的な濡れについては,Lennard-Jones系において液滴内の応力テンソルの空間分布を直接的に算出することに成功しており,速度分布を含めて,マクロスケールの流体力学で扱うべき物理量の空間分布の情報がほぼ全て得られる見込みが立っていることから,これらをもとに非平衡,非定常な濡れの過程における液滴の濡れ広がりの速度を支配する要因を明らかにし,モデル化することが主な目標となる.引き続き予定している国内,国際学会での発表による接触的な情報交換も,これらのモデル化の足掛かりとなると考えている.
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