2014 Fiscal Year Research-status Report
燃料性状と火炎構造が炭素質PMのナノストラクチャに及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
25420144
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
林田 和宏 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80369941)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 燃焼 / 拡散火炎 / 粒子状物質 / ナノ構造 / レーザラマン分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素質PM(すす粒子)はディーゼル排ガス等に含まれる有害物質であり,炭化水素燃料の不完全燃焼により生成する.そのナノストラクチャは,燃料性状および火炎内における炭素質PMの生成・成長挙動等の履歴で変化すると考えられているが,その詳細については不明な点が多い.本研究では,炭素質PMのナノストラクチャに及ぼす燃料性状と火炎構造の影響について明らかにすることを目的としている. 前年度の成果で,炭素質PMのナノストラクチャは炭素質PM成長時の熱履歴の影響が大きいことが示唆されたため,平成26年度は火炎温度と火炎内滞留時間が炭素質PMのナノストラクチャに及ぼす影響を調べることを目的とした.これまで対象としてきた拡散火炎に加え,燃料流に空気を添加した部分予混合火炎を測定対象とし,火炎温度と滞留時間の異なる複数の火炎で生成する炭素質PMのナノストラクチャを比較することで,火炎内における炭素質PM成長時の熱履歴の影響について検討を行った. 燃料にはエチレンを用い,火炎サイズを同一として,拡散火炎と当量比の異なるいくつかの部分予混合火炎を形成した.そして,火炎中心軸上に沿って炭素質PMを採取し,そのナノストラクチャをレーザラマン分光法で解析した.その結果,当量比の低い火炎ほど炭素質PMを構成する炭素結晶子のサイズが大きいことが分かった.火炎サイズは同一であるので,当量比の低い火炎の方が滞留時間が短いにもかかわらず炭素結晶子サイズが大きくなる理由として,火炎温度の影響が考えられる.火炎内における炭素質PMの成長は,温度が高くなると水素引き抜きアセチレン付加反応(HACA)機構が支配的になるとの報告がある.したがって,火炎温度が高い当量比の低い火炎ほど,HACA機構によって炭素質PMの表面成長が進行したため,炭素結晶子が成長したと考えることができる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の主な目的は,燃料性状と火炎構造が炭素質PMのナノストラクチャに及ぼす影響を明らかにすることであるが,前年度の研究では燃料性状の影響について,今年度の研究では火炎構造にかかわる火炎温度と火炎内滞留時間の影響に関する新規的な知見が得られており,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は火炎構造の影響について引き続き検討を行う.具体的には,炭素質PMの主な酸化剤であるOHラジカルの濃度分布測定を行い,火炎内における炭素質PMの酸化がナノストラクチャに及ぼす影響について調べる.また,火炎内における炭素質PMの生成量が比較的少ない場合は火炎先端が閉じた「Closed Flame」に,多い場合は火炎先端が開いた「Open Flame」となるが,火炎サイズや燃料性状を調整することで火炎先端の開き具合を変化させ,これにより火炎構造を変化させた実験を行う.
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