2013 Fiscal Year Research-status Report
自己組織化能を有する有機分子薄膜の輸送特性に関する分子論的研究
Project/Area Number |
25420145
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊川 豪太 東北大学, 流体科学研究所, 講師 (90435644)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自己組織化単分子膜 / 分子動力学 / 界面熱輸送 |
Research Abstract |
自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer, SAM)は,固体表面の修飾技術として広く研究が進んでおり,表面の物理化学的特性を分子スケールから柔軟に制御する技術として応用が進んでいる.本研究では,分子動力学シミュレーションを用いて,SAMを介した熱物質輸送機構を明らかにすることを目的とし,分子スケールから新規界面修飾材料をデザインする際に有効となる分子レベルの設計指針を模索することを目標に研究を行っている.本年度では,界面を構成する材料であるSAMと溶媒の組み合わせに対し,界面における熱輸送効率がどのように変化するか明らかにした.特に分子修飾技術の工業・産業応用を考慮した場合,幅広く用いられる固体材料についての検討が重要である.ここでは熱伝導素材として一般的に使われている銅の固体基盤に対し,疎水性および親水性末端官能基を持つSAMを修飾して,水溶媒との間に形成される界面での熱輸送効率(界面熱抵抗)を調べた.また,SAMが理想的な形で吸着しない場合も考慮し,吸着密度を変化させた場合の界面熱抵抗についても解析した.その結果,銅基盤表面は活性が高くSAM分子との強い相互作用によって,界面における分子スケールのラフネスが大きいことがわかった.また,表面におけるSAM分子の吸着密度が低くなると,水溶媒とSAM界面でのラフネスが大きくなる傾向があり,その結果として界面熱抵抗が減少する傾向が明らかになった.以上の結果から,銅基盤とSAMの組み合わせについても有望な界面熱抵抗低減技術となることが示唆される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,自己組織化有機分子薄膜および溶媒との界面における熱物質輸送特性を支配する分子論的機序を明らかにすることが目的である.今年度では,SAMと溶媒間の熱輸送機構の解明に関して,修飾基盤のバリエーション,SAM末端基のバリエーション(メチル末端基(-CH3)およびヒドロキシル基(-OH)),およびSAM吸着密度の変化について詳細に解析を行った.以上のように今年度の目標としては概ね達成できているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSAM末端修飾基について,さらにバリエーションを増やし溶媒との親和性(界面自由エネルギー)を明確にした上で,界面熱抵抗との関連性を明らかにする.また,界面における熱輸送特性に加え,有機分子薄膜内部の熱伝導特性に着目し,SAMアルカン鎖の秩序性と熱輸送効率との関連性について研究を行う.熱エネルギー輸送については,輸送を担う構成要素を微視的スケールで分解して測定可能な解析手法を利用し,SAM界面における熱輸送機構を明らかにする.また,界面自由エネルギーの解析手法についてもこれまでに提案されている手法(熱力学的積分法や自由エネルギー摂動法)を検討・導入することで対応する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費として数値計算結果を保存するためのHDDメディアを購入する予定であったが,当該年度中では既存の数値計算設備で十分であったので,次年度使用額が生じた. 数値計算結果を保存するためのHDDメディアは今後分子動力学シミュレーションを行うに従い,それらが必要となることが予想されるため,次年度に使用する予定である.
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Research Products
(4 results)