2014 Fiscal Year Research-status Report
多孔質の機能を活用した可撓性パッシブ水素生成器の開発
Project/Area Number |
25420152
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
奥山 邦人 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60204153)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 多孔質 / 水素 / パッシブ / 反応器 / 廃熱利用 / 熱工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 触媒を担持した多孔質粒子の充填層からなる可撓性反応器を用い,廃熱源からの熱のみにより液体燃料から水素を得るパッシブプロセスに関して,多孔質層内の現象の解明と反応器設計の指針を得ることを目的としている。触媒を担持した多孔質粒子を充填したリボン状反応管(または細い反応管)の下端を原料液に浸し,管上部に排熱を模擬した熱を加える。加熱区間内に乾燥領域が生成,温度が上昇し触媒の作用により水素を含む気体が生成して管上部出口から流出する。蒸発分の原料液は毛管力により下端から自動吸引され,加熱部からの熱により予熱され蒸発し加熱部に流入する。乾燥部の形成と蒸発部からの乾燥部への蒸気流入,反応,流出がプロセスの成否を決める。 1年目(平成25年度)は, 反応管上部を加熱した際の充填層内液体含有率分布と温度分布の変化を実験により調べ,また乾燥域が生成する条件について,液体含有率分布に対応した毛管力と粘性流動に基づく理論モデルによる解析を行った。加熱量の増加とともに加熱区間の液体含有率が減少し、乾燥域が形成して反応温度まで上昇した状態で蒸気生成が持続することを実験的に確認し, また乾燥域が形成する条件と影響因子を物理モデルにより示した。 2年目(平成26年度)は,反応管上部を加熱して乾燥域を形成する状態において,反応管上端からの蒸気流出と反応管下部からの毛管液供給が同時に進行する定常流れが成立するには,加熱部内の蒸気流の圧力損失が毛管液供給力以下になるよう加熱区間長さを調整する必要があること,また反応収率に影響する乾燥部内の流れ方向温度分布は,加熱部上下端の含水状態により顕著に影響されることを実験により明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は、先ず, メタノールと水の混合液を試料液に用いた場合の液供給部・蒸発部の実験と解析を行い, 乾燥部の形成条件を確認するとともに,蒸発部から流出する気体の組成を調べ, 供給液組成との関係を調べ、次に, 組成をメタノールの水蒸気改質反応のそれに予め調整した原料ガスを, 触媒を担持した多孔質粒子を充填した反応部に導入して温度・流量等を変化させ反応特性を実験的に調べる予定であった。 しかし, 液体含有率の電気抵抗測定法による再現性の確認や,含水率分布のヒステリシス現象の影響の調査,含水多孔質体加熱時の定常蒸発流条件の調査,加熱部内の乾燥部の温度分布に与える影響因子の調査などに予想のほか時間を要し,混合液における加熱時の乾燥域形成実験や原料ガス導入による気相反応特性実験まで進めることができなかった。 しかしながら,これまで行ってきた詳細な実験検討から,含水多孔質粒子充填層の加熱による乾燥域形成条件,定常流実現のための必要条件,乾燥域の温度分布への影響因子などが明らかになったので,当初の予定内容に研究を進めていくことが可能な状態になっているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
先ず, メタノールと水の混合液を試料液に用いた実験を行い, 乾燥部の形成条件を調べ, 出入口間の物質収支から定常流状態の確認を行い,乾燥域の温度分布について調べる。加熱部の蒸発区間における流動・伝熱過程に関する理論モデルによる解析結果と実験結果を比較検討する。 次に,触媒を担持した多孔質粒子充填層についてメタノールと水の混合液を試料液に用いた実験を行い, 乾燥部の形成条件を調べ, 出入口の物質収支から定常流状態の確認を行い,乾燥域の温度分布について調べる。加熱部から流出する気体の組成を調べ,供給液組成との関係や反応収率について調べる。 さらに, 反応器内の蒸発区間と反応区間(乾燥部)それぞれにおける流動・伝熱・反応過程に関する理論モデルを接続した反応器全体の特性を解析し,実験結果と比較検討を行うとともに,より効率よく反応が進行するため蒸発部と反応部それぞれに求められる要件を実験及び理論解析により明らかにする。以上の結果をもとに, 本提案の反応器を設計するための基本的な指針を得る。
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