2013 Fiscal Year Research-status Report
多孔質体概念に基づく都市気象予測モデルの構築と新しい防災都市計画
Project/Area Number |
25420157
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
桑原 不二朗 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70215119)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 多孔質体 / 数値シミュレーション / 局地気象予測 / 乱流 |
Research Abstract |
ヒートアイランド現象やゲリラ豪雨に代表される都市気象の予測は,時には命を左右する大事な情報となる.そのため近年では,都市特有の現象をより高精度に予測することを目的として,巨視的モデルが提案されている.中でも,「都市キャノピーモデル」と称される新しい地表面スキームが注目されている.しかし,このモデルは検証が不十分なサブモデリングを数多く含んでいる.特に地表面付近の流れに対するモデリングは十分でなく,高層ビル群の地表面近傍に関する流れを定量的に評価した例は殆どない. 本研究では,高層ビル群が建ち並ぶ都市を想定する.多孔質体都市を模した構造体に対し,まずは3次元で層流場さらに,標準k-モデルを用いて乱流場の微視的数値シミュレーションを実施した.微視的計算結果を,各高度で局所的に空間平均することで,流動場および乱流構造の空間平均鉛直分布を表した.さらに,圧力損失,境界層厚さ,乱流構造の鉛直分布を詳細に検討した. また,地表面付近の構造物の影響は,輻射においても現れ,その境界条件の適格な設定は数値予測の精度をあげる.ただし,地表面付近は複雑な構造物により,太陽光の反射,吸収,再放射などが起こり,温度場は複雑となる.また,構造物に蓄えられた輻射熱はヒートアイランド現象の要因となり問題尾である.そこで,本研究では,人口太陽光源を用いたスケール実験により,構造物を巨視的にどう取り扱うべきかを吟味すべく実験を開始した.地面付近の反射により,地表面付近が高温となる現象,太陽光の角度の影響などを検討した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の狙いは,地気象現象,特に都市気象予測に焦点を当てる本研究においては,以下の点に注目し研究を行うことである.そのために,3つの観点からの検討を実施している.1.多孔質体モデル都市の構築,2.都市の持つ巨視的モデル定数の決定,3”疑似都市東京”の構築とハザードマップ,であるが,本年は,1および2に着手し,一応の成果を得た. 局地気象予測可能な多孔質体都市乱流モデルの導入においては,微視的熱流動場に対する気象現象の支配方程式に対し,空間平均化を施し巨視的支配方程式を導入する.その際,これまで適切に取り扱われなかった熱分散熱伝導率,多孔質体乱流生成項等を厳密に導入し,地表面付近の,温度,速度,乱れ場の詳細な検討を実施し.巨視的数値シミュレーションを可能とした. 周期境界条件を用いたビル群周りの微視的数値計算結果の空間平均による巨視的モデル係数の決定においては,下端に地表面を有し,有限高さのビル群はピンフィンヒートシンクにいた構造を有する3次元構造である.これまで,我々は様々な熱的条件下で微視的熱流動場の数値予測を試みてきた.この手法を都市気候場に適用し,適切な境界条件を適用することで求めた微視的熱流動場を空間平均する手続きにより,巨視的数値シミュレーションに必要なモデル係数の決定を行った.上空の取り扱いに問題があることが判明したが,今後修正しさらなる検討が行える. さらに,多孔質体都市の輻射に対する取り扱いの問題に着手し,実験的,数値シミュレーション的に,微視的に微視的温度分布を把握し,巨視的モデル構築に着手することができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
巨視的数値シミュレーションモデルの精度を高めるため,巨視的モデル定数の決定を行っていく.この中で,輻射の取り扱いにも留意し,適切な取り扱いと,境界条件の設定を提案していく. さらに,実際の都市環境に対する取り組みへとシフトしていく.本研究の最終的な狙いは,3”疑似都市東京”の構築とハザードマップ,である.これを実現するため,以下の2点の狙いを実現する. 気象衛星画像を用いた都市構造の分類マッピング化の“都市東京”への適用として,本研究では,“都市東京”の気候変動について詳細に検討すべく1970年代から観測が始まった衛星あるいは航空のデータをもとに,各時代の都市構造を画像処理によりマッピングを実施する.さらに, 典型的気象条件下におけるシビア気象現象のハザードマップの作成をめざし,巨視的数値予測を実施し,上昇気流の強さに注目しその危険度を分類したハザードマップの作成を試みる.これに加え,都市部の熱的条件等を加え,あらかじめ典型的ないくつかの条件下で数値予測を行うことで,その傾向を把握することが可能であると考える.まずは,“都市東京”に注目し,夏季の局地的集中豪雨に対し,各気象条件のバランスごとに得られるハザードマップの作成を行う. さらに積極的に都市構造及び熱的条件を変更した“防災都市東京”の都市計画マップを作成し,都市型災害を減災するための都市計画についての情報を発信する.
|
Research Products
(6 results)