2014 Fiscal Year Research-status Report
ナノ構造面による気泡運動制御とマルチスケール解析を用いた二相伝熱機構の総合的理解
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25420160
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
北川 石英 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (80379065)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 気泡運動制御 / 機能面 |
Outline of Annual Research Achievements |
「気泡」は,スケール別に,超微細な「マイクロバブル」から大変形を伴う「ミリバブル」に分類され,現在,機械・化学・船舶・医療の分野において盛んに利用されている.このような状況のもと,多くの場合では,壁面近傍の気泡挙動が,利用効果や機器性能に直接的影響を与える.このため,壁面近傍気泡挙動の人工的制御が可能となれば,気泡注入効果のさらなる向上が期待できる.H26年度では,伝熱面近傍における自然対流気液二相流に着目し,自然対流場の高精度液体温度計測と,上昇気泡群によって誘起される非定常渦の可視化計測を行った.伝熱面の表面性状が親水,伝熱板傾斜角度φの範囲が 0<φ<60°の場合において,以下の知見を得た.(1)気泡注入時では,伝熱板傾斜角度の増加に伴い,温度境界層厚さが厚くなり,φ=40°において最大となる.特に,この傾斜角度では,伝熱面近傍における壁垂直方向の熱交換が連続的かつスムーズに行われる.(2)気泡注入時では,気泡群誘起型非定常渦が,傾斜角度の増加とともに伝熱面に接近する.また,0<φ<40°の範囲では,傾斜角度の増加に伴い,非定常渦の存在頻度が増加するものの,φ=60°の場合ではそれが減少に転じる.同様の傾向は,気泡注入時の熱伝達率の結果においても確認できることから,非定常渦の存在の有無は熱伝達率の増減に大きく関係していると言える.このため,伝熱面近傍の気泡挙動を制御し,非定常渦の発生頻度を増加させることができれば,自然対流熱伝達の大幅な促進が可能となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
撥水面における気泡運動特性を調査する前に,撥水コーティング剤の浸漬時間依存性を調査した結果,時間の経過とともに,コーティング剤の効果が著しく低下することがわかった.これは当初,予想していなかったことであるため,結果として,「気泡運動に対する表面性状(撥水・親水・超親水)の影響」を議論するための十分な気泡速度データを得るには至らなかった.また,液体温度を計測するために,当初は,感温液晶粒子の利用を予定していたが,利用可能な温度範囲が想定に比して極端に狭いことがわかった.このため,代替手法として,トラバース型温度センサーを構築・利用したため,広範囲の条件に対する液体温度計測が実施できなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,コーティング剤の配合や塗布方法に対する最適化を試みており,流速が遅い条件では,既に大幅な改善が得られていることから,今後も,同様の調査を継続する予定である.なお,伝熱板表面を撥水化する場合には,ベースであるカプトンテープに直接コーティング剤を塗布するのに対し,親水化する場合には,親水性を有するステンレス箔を,超親水化する場合には,熱水処理を施したアルミニウム箔を,粘着剤を用いることにより,カプトンテープに貼り付ける.特に,この粘着剤の使用は,熱伝導の低下をもたらすことが予想されるため,粘着剤の熱伝導率や厚さに対して,緻密な調査を実施する予定である.
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