2013 Fiscal Year Research-status Report
金属-絶縁体転移物質を応用した放射率可変素子の研究
Project/Area Number |
25420174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
太刀川 純孝 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 主任開発員 (90470070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 智彦 東京理科大学, 理学部, 教授 (30311129)
桑原 英樹 上智大学, 理工学部, 教授 (90306986)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 機能材料 / 宇宙機 / セラミックス / 放射率 / 熱物性 |
Research Abstract |
放射率可変素子(SRD:Smart Radiation Device)は、宇宙機表面のラジエータ材料として使用する熱制御デバイスである。宇宙機自身の温度によって自律的に赤外放射率が変化することにより、宇宙機の温度を自動的に一定化させる働きがある。それによって、低温時に必要となるヒータ電力を削減する効果がある。SRDは、2003年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」に搭載され、その機能と効果が、軌道上において確認された。しかし、今後の惑星探査ミッション等において、より高性能なSRDが求められており、常温付近を境に、より放射率が大きく変化する材料が必要である。本研究の目的は、放射率可変素子(SRD)の性能向上のための材料探索である。なお、「はやぶさ」に搭載されたSRD材料はペロブスカイト型Mn酸化物(ABO3:Aサイト=La,Sr,Ca Bサイト=Mn)である。 予備実験により、Bサイト置換(MnサイトのGa置換)によって、高温側の電気抵抗率が低温側の電気抵抗率よりも大きく上昇することが確認できていた。これにより、SRDの性能向上(Δεの増加)の可能性が期待できる。しかし、Bサイト置換だけの場合、Δεは増加できるが、同時に転移温度が低くなってしまうことがわかった。そのため、Aサイトの元素も置換することによって、金属的にした。具体的には、Caの一部をよりイオン半径の大きなSrで置換することにより、Aサイトの平均イオン半径を大きくする(バンド幅制御)。これにより、結晶の歪を小さくし、電子トランスファーを大きくすることで金属的にしている。 従来のようにAサイトだけで元素置換を行った場合、Δεを増加させると転移温度が下がり、転移温度を上げるとΔεが減少してしまうが、BサイトでΔεを制御し、Aサイトで転移温度を制御すれば、Δεの増加と転移温度上昇の両立が可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定: 従来のAサイト置換と異なるBサイト置換試料を作製、電気抵抗率や赤外放射率を測定し、その効果を確認する。 実施結果: BサイトであるMnをGaで置換した結果、Δεを増加することができた。しかし、Aサイト置換同様、転移温度が下がってしまうこともわかった。そこで、Aサイト置換とBサイト置換を同時に行うことにより、Δεを増加させつつ、転移温度を上げることができることがわかった。従って、当初の予定どおり、Bサイト置換による性能向上の効果を確認することができ、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、Bサイト置換(MnサイトをGa以外の元素で置換)を行い、その効果を調べる。 また、これまでに行ってきた異なる価数を持つAサイトイオンの固溶によりキャリアー濃度を変化させた実験結果と比較するために、Mn酸化物試料の酸素含有量を化学量論比からずらすことによってキャリアー濃度を変化させた試料を作製し、その結晶構造、電気伝導度および光学特性を調べ、酸素欠損(過剰)の効果を検討する。さらに、従来のAサイト無秩序型ペロブスカイトMn酸化物のAサイトをイオン半径が大きく異なる元素を組み合わせることによって秩序化させ、無秩序型に比べて金属-絶縁体転移温度の大幅な向上を目指す手法も試す予定である。
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Research Products
(5 results)