2014 Fiscal Year Research-status Report
くさび形弾性はりにおける波動の無反射・増幅特性を利用した水中推進機の高効率化
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25420182
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
松村 雄一 岐阜大学, 工学部, 教授 (20315922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古屋 耕平 岐阜大学, 工学部, 助教 (40580056)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水柱推進 / 波動制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
進行波型水中推進機の前進推進効率を従前よりも向上させるため,導波体となる弾性体を一様平板ではなく,くさび形状とした場合に,尾ヒレ部に向けて波動が増幅する効果の有効性を検討している.本年度の成果は以下のとおりである.
(1)くさび形弾性体の頭部および尾ひれ部に強制変位を与えることにより,所望の変位とヨー角で駆動部を振動運動させるための制御技術を獲得した.研究実施計画の段階では,従来より研究代表者の実験室で実施してきた力制御によりインピーダンス整合を実現するとしていたが,反射波抑制の制御理論を再検討したところ,変位制御の方が簡単に実験装置を製作できることが判明した.そこで,弾性体頭部に設置した剛体平板の前端と後端の2箇所に対して,それぞれ2台の位置サーボ機構付きリニア・アクチュエータにより強制変位を与え,これら2台で与える時々刻々の変位及びその位相差を位置指令でフィードバック制御することで,弾性体頭部を所望の変位とヨー角で振動運動させるための実験装置を開発した.この装置で水中実験を試みたところ,弾性体の駆動において所望の運動を実現できた.
(2)柔軟な樹脂材料を柔軟な接着剤で層状に接着したくさび形弾性体を作成し,水中において前端から後端に向けて波動を伝播させることにより,波動の振幅増大現象および位相速度低下現象が実際に発生することを確認した.現在,流体-構造連成解析の面から推進力と抵抗力のバランスに優れた最適くさび形状を求められておらず,これを補完するために,実験的に複数のくさび形弾性体を作成して,まずは推進力の面で優れたくさび形状を解明する準備を進めている.その初期検討として,水中推進用のくさび形弾性体として適当な柔軟性を有する材料を探求し,ほぼ所望の性能を有するくさび形弾性体を製作できる段階にある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の二本柱は,制御理論の構築とその実現に向けた実験船の製作面と,水中推進に適したくさび形状を解明する数値解析面である.実験船の製作面は当初計画どおりに順調であるが,数値解析面ではソフトウェアの制約が厳しく,薄板部での流体-構造連成解析が予定どおりに進んでいない.しかし,予定の遅れを実験でカバーするように研究の舵を切っており,以下に詳細を示すごとく,かなりリカバーされつつある.そこで,達成度は概ね順調に進展しているとした.以下,達成度の詳細を示す.
まず,実験装置の製作面では,弾性体が前進する中での各種実験が可能な大型水槽の導入,実験船の製作,水中での波動が適度な変位と位相速度を有するような弾性体の最適素材の調査と実証,ならびにインピーダンス整合制御のための駆動装置の製作という平成26年度に予定していた内容をほぼ達成できた.また,前年度の実績報告書で今後の研究方針として掲げたとおり,実験船の推進を動画解析して推力を求め,これから抗力を差し引いて実際の推進性能を評価する計算法の準備も実施できた.
一方,平成25年度の研究開始以来取り組んできた流体-構造連成解析による最適くさび形状の解明においては,くさび形状の尾ひれ部の薄さが購入したソフトウェアの解析限界を超えており,現在もくさび形状の最適化までは達成できていない.そこで,以下の対策により,この難局を打破できるように取り組み始めている.その対策とは,流体-構造連成解析に頼らずに,理論と実験の両輪から最適なくさび形状を定めることである.理論的に波動が反射しにくく推進効率に優れたくさび形状と,流体抵抗が小さい翼形形状を正負両効果の両極と見て,これらの混入比率を変化させたいくつかのくさび形状により,実際に実験船を推進させて,抵抗と推進のバランス面から見た最適形状を探求する準備を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
現時の課題である流体-構造連成解析については,上記の「研究実績の概要」および「現在までの達成度」のとおり,実験的に複数のくさび形弾性体を作成して,理論的に波動が反射しにくく推進効率に優れたくさび形状と,流体抵抗が小さい翼形形状を正負両効果の両極と見て,これらの混入比率を変化させたいくつかのくさび形状により,実際に実験船を推進させて,抵抗と推進のバランス面から見た最適形状を探求することで対策することにした.
この場合,数値解析に頼らず,実験的に推進力と抗力のバランスを可視化する必要も考えられ,平成27年度には新たにParticle Image Velocimetry(以下,PIV)計測装置を導入して,くさび形弾性体周囲の渦の発生状況などから,推進力と抗力という正負の両効果を可能な限り区別して議論し,そのことによって水中推進機に最適なくさび形状の解明に取り組む予定である.
このことにより,これまでの準備状況と合わせて,水中のくさび形弾性体上での純粋進行波生成を可能として,この推進機により大型水槽内で実験船を推進させ,これを高速度カメラで上方から撮影して画像解析により加速度を求めたり,弾性平板上の波動の定在波率を計測したり,水中にレーザーシート光を照射してくさび形弾性体周囲の渦の発生状況などをPIVで可視化することなどを実施し,これらの実験結果の総合的考察を通して,水中推進機に最適なくさび形弾性体の形状とは何かを検討していく予定である.
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