2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420202
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 厚行 徳山工業高等専門学校, 機械電気工学科, 准教授 (40450142)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超音波振動 / 衝撃吸収 / 高張力鋼板 / Blaha効果 |
Research Abstract |
自動車などはクラッシャブルゾーンが潰れることなどによって衝撃を吸収するが、歩行者を巻き込む事故など十分に衝撃を吸収できないケースは多い。また、衝突物や衝撃の大きさはそれぞれの事故によって異なるが、従来の技術では瞬時にその衝撃吸収性能を調整することはできない。そこで、超音波を用いて瞬時に衝撃吸収性能を調整できる衝撃吸収装置を考案した。これまでの研究ではアルミニウム合金(JIS A6063)に超音波を印加したときの変形特性や衝撃吸収特性について検討してきた。本研究では、自動車に広く使用されている高張力鋼板(ハイテン)や今後の自動車素材として注目されている炭素繊維強化プラスチック(carbon-fiber-reinforced plastic, CFRP)などに超音波を印加し、衝撃吸収性能を確認する。平成25年度に実施した主な研究内容を以下に示す。 (1)ホーンの材質を変形しやすかったアルミニウム合金(JIS A2017)からクロムモリブデン鋼(SCM440)に変更し、かつ、試料が変形中でも振動を伝えやすくするように、先端はアール形状にした。ホーン変更後の振動特性を測定した結果、ほぼ設計どおりの共振周波数・振動分布になった。 (2)高張力鋼板(WEL-TEN590RE)でも超音波による衝撃軽減効果があることを確かめた。超音波を印加することによって高張力鋼板の変形抵抗は低減し、スプリングバック量および衝撃力がそれぞれ最大で43%および35%低減した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ホーンの素材および先端形状を変え、超音波振動子の最適化を図った。新しく試作した超音波振動子の振動特性を測定した結果、ほぼ設計通りの特性が得られた。大きさの異なる2種類の超音波振動子を試作する計画であるが、現段階で試作できているのは直径 56 mm のボルト締めランジュバン型振動子(BLT)を用いた超音波振動子のみである。現在直径 40 mm のBLTを用いた超音波振動子の設計がほぼ終わったところである。直径 56 mm のBLTを用いた超音波振動子を試作した直後は大きな振動が得られなかったため、各部の接触面にラップ加工を施すなど調整を行った。 高張力鋼板の変形特性および衝撃吸収特性の測定は計画通り実施でき、高張力鋼板においても超音波の印加によって変形抵抗が低減し、衝撃が吸収できることを示した。しかし、実験条件を探ることなどに多くの時間がかかり、CFRPの各種特性など計画通りに実施できなかった実験項目がある。CFRPについては幅 10 mm、長さ 200 mm、厚さ 2 mm のCFRPでは実験データが取得できなかったため、幅 20 mm、長さ 200 mm、厚さ 4 mm のCFRP用に治具を製作し直した。 制御回路および計測システムの製作はまだ途中であり、完成していない。
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Strategy for Future Research Activity |
直径 40 mm のBLTを用いた超音波振動子を試作し、装置を小型化する、小型化した装置の衝撃吸収特性を測定し、明確な効果があれば、自動車のシャシを模した構造体を製作し、落錘衝撃試験を行う。落錘衝撃試験では衝撃力・変形挙動・錘の跳ね返り量などを測定し、超音波を用いた衝撃吸収装置の効果を確かめる。構造体の材質は高張力鋼板(WEL-TEN590RE)および炭素繊維強化プラスチック(CFRP)にする。直径 40 mmのBLTで十分な効果が得られている場合には、更に小型化することも検討する。また、熱可塑性樹脂に超音波を印加し、溶融させることによって衝撃が吸収できるか確かめる。溶融試料としてはホットボンド用固形接着剤などを用いる予定である。制御回路および計測システムの製作も続ける予定である。構造体の落錘衝撃試験以外の実験では超音波振動子を繰り返し使用するため、超音波振動子と変形試料をボルトで締結せずに測定する予定であるが、超音波の効果があまり得られない場合には、ボルトで締結する。ボルトで締結することによって、超音波振動が変形試料に伝わりやすくなる(だだし、ネジ部の故障により、超音波振動子の寿命が短くなる恐れもある)。超音波振動を伝えやすくするため、超音波振動子の先端と変形試料の接触部を研磨することも考える。力率補正・マッチング・入力波形(バースト波など)の変更など電気的な対処もする。それでも効果が小さい場合は、ハイパワー型のBLTを用いることや、1カ所に2本のBLTを設置することを検討する。
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