2013 Fiscal Year Research-status Report
人工生命技術による海藻の物理特性シミュレーション法の確立と流動制御
Project/Area Number |
25420206
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hokkaido Information University |
Principal Investigator |
古川 正志 北海道情報大学, 経営情報学部, 教授 (70042091)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 雅人 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (40292057)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 人工生命 / 物理モデリング / シミュレーション / 海藻バイオマス |
Research Abstract |
本研究の目的は,火力発電所等から発生する大量のCO2を利用した海藻培養おける海藻の成長にともなうからみやちぎれの現象を,人工生命技術である物理モデリングに基づくシミュレーションによって明らかにし,海藻内に循環させる水流の制御によって,そうしたからみやちぎれを防止する技術を開発することにある.そのために具体的に以下のような内容の研究を実施し,成果を得た. [海藻の物理特性の測定] バイオマス海草であるホソエダアオノリと近い性質を持つカモンバを旭川高専の協力の下で引っぱり試験を行い,その機械性質を計測した.計測結果,カモンバは上に凸な弾性曲線を持ち,塑性変形領域を持たず,約0.5kg重で破断するのが明らかとなった.この機械特性をちぎれのモデリングを行なう上で不可欠な特性である. [海藻の幾何モデリング] 申請時においては,海藻の成長する幾何モデルをL-システムで実施していた.しかし,海藻が成長し密集するにともなって,L-システムによるモデルでは枝の生長空間が他の海藻によって占有され,海藻自体を成長させられないことが判明した.従って,新たに生長の幾何モデルを検討し,確率的生長モデルを開発した.このモデルにより,海藻は,自律的に枝を伸ばせる空間を見つけ出し,生長できるモデルとなることを確認した.本成果は,特に成長後期の密集した海藻の中での成長をモデル化できる点で,重要な成果である. [水流モデルの確立] 水流モデルとしては,粒子群法と格子ボルツマン法を検討した.その結果,格子ボルツマン法が,シミュレーションによって,実時間の物理モデリングを実施する上では優れていることが明らかとなった.実際に,海藻培養水槽を物理モデル化し,水中において仮想粒子の流れの可視化シミュレーションを行なった所,きわめて良好な水流モデルを実現できることが判明した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
[海藻のちぎれ,粘着力及びからみのモデル化] 幾何モデルに対しては,L-システムを再検討し,確率的成長モデルを開発した.これにより相互干渉により成長をモデル化できなかったL-システムの欠点を克服した.また,ちぎれを起こすのに必要な引張り力が明確でなかったが,カモンバの機械特性を引っぱり試験機によって計測し,現実に即した物理モデリングを可能とした.粘着性やからみについては,異なる海藻モデル間の剛体カプセルに対して平均接触数,重心平均距離,観測接触時間の相互間の値を計算し,海藻間の状態を把握する方法を開発した.これらによって,海藻間の状態を把握することが可能になり,当初の目標以上に進捗することができた. [海藻水中環境の構築と制御] 人工生命の遊泳行動実現において採用した浮力と簡易抗力を海藻モデルのプリミティブであるカプセル剛体モデルに生成し,ほぼ,培養水槽内の海藻のモデルの挙動を実現できることをシミュレーションによって確認した.ついで,格子ボルツマン法による水流の速度を計算し,その速度をカプセル表面に生成し抗力を計算することによって,水流による海藻の挙動を制御できることを明らかにした.特に,格子ボルツマン法を採用することで,物理モデリングの積分計算時間による海藻の水槽内での動きと,シミュレーションの可視化による描画速度をほとんど一致させることができたのは,予想外の成果である.これによって今後に行なうからみとちぎれを防止する流動制御を可能とする見通しができた. [海藻の流動シミュレーションの実現] 当初は,上記二つの研究が実現した上で本研究を実施する予定であった.しかしながら,上記研究が目標通りに達成されたので,すでに指定した水流をモデリングする方法に着手し,それを用いたシミュレーションを開始している.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後,以下の課題を主に実施する. [海藻のちぎれ,粘着力及びからみのモデル化] 海藻のカプセルによる物理モデリングの正当性,成長にともなう海藻の成長と密集度の関係,密集した時のからみの生成のモデリング等を,今後シミュレーションを通して解析する.現在採用しているモデルは剛体モデルであるため,やわらかいモデルを行なえるかを,弾性モデルによって行なえるかも調査する.なお,物理モデリングでは弾性モデルを布に対して行なえることが知られているので,その検討を実施する.シミュレーションには,相当の計算量が予想されるので,高速のEWS(エンジニアリング・ワークステーション)を購入して実施する予定である. [海藻の流動シミュレーションの実現] 今後の研究を推進する核心的事項である.具体的にからみを解消するための技術開発を行なうために,以下を本年度以降の研究課題とする.(1)水流あるいは泡(エアバブル)による水流の生成法の開発,(2)そのために,格子ボルツマン法によって水流を実現するための適切な境界条件の設定方法の研究,(3)からみとちぎれを解消するための適切な水流の生成とその速度の決定法,(4)定常流,非定常流に於けるからみとちぎれの状態の解析と,泡(エアバブル)によるからみの解消を行なう際のバブルの吹き出し場所及び個数の最適化をシミュレーション実験に基づいて実施,である.また,現実の海藻の挙動との比較検討を行うために,琉球大学工学部機械工学科の助言を求める. なお,研究成果は,自律システム国際会議(IAS13)や機械学会,精密工学会において公表する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初,2012年度に購入予定のエンジニアリングワークステーション(EWS)MAC PROが仕様変更となり,その新モデルの発売日が12月と延期されたため,購入を今年度とした.なお,仕様変更にともない,その性能はIntel Xeon E5(12MB L3キャッシュ),Turbo Boost使用時最大3.9GHz,6コアと大幅に向上したことにもよる. エンジニアリング・ワークステーションを格子ボルツマン法を利用した水流の流体計算と海藻の挙動シミュレーションに使用する.
|