2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒト体幹支持におけるエネルギ吸収と下肢の筋配列による機構特性の関係
Project/Area Number |
25420229
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
藤川 智彦 大阪電気通信大学, 医療福祉工学部, 准教授 (80321420)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 生体機構制御 / 動作筋電図学的解析 / 拮抗二関節筋ペア / 協調活動 / 腓腹筋 / 大腿直筋 / ハムストリングス |
Research Abstract |
本研究において,前年度までにヒトは踵着地の体幹保持時に大腿部の二関節筋である前面の大腿直筋と後面のハムストリングスの拮抗筋ペアが同時に活動することが明らかになり,本年度は着地時の姿勢支持の相違による比較,すなわち,跳躍後の体幹支持を足底面である踵部で保持する場合と足趾である拇趾部で保持する場合における2条件に着目して,動作筋電図学的解析をおこなった.特に,体幹を鉛直線上に保持した跳躍・着地の運動において,皮膚表面双極誘導法により,筋群の筋電位を計測した.計測した被験筋は股関節の一関節伸筋である大臀筋,膝関節の一関節伸筋である外側広筋と内側広筋,大腿部前面の股関節を屈曲,膝関節を伸展させる二関節筋である大腿直筋,大腿部後面の股関節を伸展,膝関節を屈曲させる二関節筋である内側ハムストリングスと外側ハムストリングス,足関節の一関節伸筋であるヒラメ筋,足関節の一関節屈筋である前脛骨筋,下腿部後面の膝関節を屈曲,足関節を伸展させる腓腹筋内側頭,腓腹筋外側頭の主働筋から同時計測できる8筋を選択した.この結果,昨年度の着目点となった踵着地時の大腿部の拮抗二関節筋ペア(大腿直筋とハムストリングス)の同時放電がすべての被験者で確認できた.さらに,足趾である拇趾による着地と足底面の踵着地を比較すると,大腿部の筋活動に大きな変化が無く,下腿部後面の腓腹筋の筋活動が大きく追加されていることが明らかになった.すなわち,従来から明らかになっている下肢下腿部後面の二関節筋である腓腹筋の筋活動は着地時の衝撃吸収の緩和および体幹重心へ床反力を向ける機能だけでなく,足趾着地の衝撃力の緩和後に,滑らかに体幹重心の支持を足趾から踵である足底面に移行させる機能を含んでいることが明らかになった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はヒトがオープンループで運動制御を可能にしている機構,すなわち,一般的なコンピュータによる運動制御ではなく,ヒトの筋配列の機能を応用した機械的メカニズムによる運動制御を明らかにすることを目指している.特に,この研究では,激しい運動や急激な負荷(大きなエネルギや衝撃)において,肉離れのような筋損傷や歩行困難となる剥離骨折が生じやすい下肢の二関節筋群である腓腹筋,大腿直筋,ハムストリングスの3筋の活動に着目し,着地時の体幹保持における筋活動とその機能を明らかにすることを試みた.研究計画では着地時の運動特性の解析を大きく3段階で設定し,1つ目に動作筋電図学的解析を主とした評価,2つ目にモデル解析を主とした数値的な評価,3つ目に臨床応用を目指した現場での評価の順で進めることにした.本年度は初年度であるため,計画通りに,動作筋電図学的解析を主とした評価をおこなった.この結果,推察されていた下肢の二関節筋群に大きな筋活動があり,踵着地時の体幹保持において,すべての被験者で大腿部の拮抗二関節筋ペアである大腿直筋とハムストリングスの同時放電が確認できた.さらに,足趾着地時の体幹保持において,大腿部の拮抗二関節筋ペアと下腿部後面の二関節筋である腓腹筋の同時放電も確認でき,腓腹筋が足趾着地でのエネルギ吸収だけでなく,体幹保持の接地点を足趾支持から足底面支持に滑らかに移行させる機能があることが推察できた.このような結果を得られたことから,研究は計画に沿っておおむね順調に進展しており,体幹保持におけるヒトの筋配列の機能を応用した機械的メカニズムによる運動制御の解明が進んでいると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は運動時の体幹保持における下肢の二関節筋群である腓腹筋,大腿直筋,ハムストリングスの3筋の特性を動作筋電図学的解析を用いて明らかにした.その結果,研究計画に沿った3項目(動作筋電図学的解析を主とした評価,モデル解析を主とした数値的な評価,臨床応用を目指した現場での評価)のうちの1つ目の結果をほぼ順調に得ることができた.来年度は計画に沿ったモデル解析を主とした数値的な評価をおこない,動作筋電図学的解析で得た結果に基づいて,理論的または数値的な評価をおこなう予定である.特に,モデル解析は踵着地の運動評価である大腿部の筋配列を中心としたモデル解析と,足趾着地の運動評価である下腿部の筋配列を中心したモデル解析の2段階に分け,大腿部の拮抗二関節筋ペアの同時放電のエネルギ吸収について理論的な解析をおこなった後,足趾着地の運動評価である下腿部の筋配列を追加したモデルにより,下腿部の二関節筋である腓腹筋によるエネルギ吸収の理論的な解析をおこなう予定である.なお,常に筋電図学的解析で得た結果を検証しながら,モデル解析を進め,動作筋電図学的解析の再実験等もおこないながら,結果の完成度を高めていく予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はヒト着地時の下肢の筋活動を動作筋電図学的解析により明らかにすることが主となっていたため,研究上では最も基礎となる確かなデータを集約する状況であった.そのため,学術講演会などの参加が予定より少なく,旅費としての経費が少なかったと考えられる. 次年度の研究成果が明確になった時点で,学術講演会に参加する予定であるため,本年度の繰越はそのまま次年度の旅費になる可能性がある.しかし,次年度のモデル解析の進展状況に大きく関わるため,基本的には動作解析の評価に必要なソフトウェアの購入費の補助として使用する予定である.
|
Research Products
(4 results)