2014 Fiscal Year Research-status Report
知的労働生産性向上のためのウェアラブル頭頸部冷却システムによる基幹脳活性法の研究
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25420236
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
片桐 祥雅 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所グリーンICTデバイス先端開発センター, 研究マネージャー (60462876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川原 靖弘 放送大学, 教養学部, 准教授 (10422403)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 頭頚部冷却 / 暑熱ストレス / 注意資源配分 / モノアミン神経 / 前頭全皮質 / 後頭部脳波α波 / エラー処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
知的労働生産を支える被刺激性のreactive機構と認知処理を必用とするproactive機構の二つの注意機能が拮抗することを持続的注意機能検査法の二つのバージョン(SRT-CPT及びAX-CPT)を用いた試験により明らかにした。さらに、暑熱環境下ではこれらの注意機能は熱ストレスによる覚醒度劣化に応じて変化する一方、頸部冷却を施すことにより覚醒度劣化をproactive/reactiveの資源配分により補償することでproactive機構に係る注意機能を維持していることを明らかにした。 さらに時間ストレスのなる語産生課題で発生するエラーと後頭部脳波α帯強度から算定される深部脳活動度との相関に基づき、proactive機構と深部脳活動との関係を被験者試験により検討した。その結果、深部脳活動度の緩やかな変動成分が高いほどエラーが少なくなることを明らかにした。緩やかな変動成分は腹側被蓋野近傍、速い変動成分は視床の活動に対応することが報告されており、腹側被蓋野近傍のモノアミン神経活動がproactive機構を支持するものと推察した。この緩やかな変動成分と速い変動成分とは負の相関関係にあり、これがproactive機構とreactive機構を拮抗させる原因となっていると考えた。 腹側被蓋野のモノアミン神経系が側坐核経由で前頭前皮質により賦活されることを考慮すると、暑熱環境下でproactive機構を支えているのは前頭前皮質‐深部脳賦活ルートであり、頸部冷却刺激が前頭前皮質を介してこの賦活ルートを活性していると推察した。さらに難易可変の二重課題を含むタスクを実施した被験者試験から、難易度に応じて前頭部の脳血流を可変とする自己制御機構の存在を明らかにした。この自己制御機構は、暑熱環境下でreactive/proactive機構の配分を制御して注意機能を維持することに貢献していると推察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
持続的注意検査から拮抗するreactive及びproactiveの二つの異なる注意機能の存在を明らかにすることができた。特に深部の素早い反応を抑制することで認知処理を行う前頭前皮質の役割を推察するに至った。この結果は、注意機能の神経科学的基盤の全貌をほぼ解明したことを意味するものであり、本研究課題で計画した知的労働生産性を高めるための大脳生理学的基盤の構築をほぼ達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
暑熱環境下で低下する覚醒度をreactive-proactive間の注意資源配分により素早い反応を犠牲にしてまでも認知制御を必用とする注意機能を優先的に維持しようとするメカニズムは人間が進化の過程で獲得した能力であり、人間特有の知的労働生産性を発現する基盤でもある。これが暑熱環境下を含め認知機能を劣化させない根源的能力であると考えられる。こうした注意機能の中核をなす前頭前皮質‐深部脳賦活ルートを対象に、効率よく活性化する頭頸部冷却刺激法の開発に注力する。
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Causes of Carryover |
本研究課題遂行中、注意機能の中核をなす前頭前皮質‐深部脳賦活ルートの重要性が明らかとなったことから冷却部を前頭部に集中させる設計変更を行った。これにともない最終試作を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
冷却対象となる前頭部に展開する静脈網及び前頭皮質神経系のトポロジーを考慮するとともに、深部脳活動の緩やかな変化に同期して制御可能な冷却ユニットの試作を行う。
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Research Products
(11 results)