2014 Fiscal Year Research-status Report
高温超伝導回転機内の電磁環境における超電導コイルの交流損失評価・低減に関する研究
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25420247
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小川 純 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60377182)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高温超電導 / 交流損失 / 磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画は高温超伝導モータ、高温超伝導発電機などの高温超伝導回転機の界磁巻線に使用される高温超伝導コイルに生じる交流損失特性の把握と低減を目的としている。回転機内の交流損失を把握するためには、鉄心による交流損失への影響と回転磁界による交流損失特性の把握が重要となる。巻線となる超伝導コイルの損失は磁性体の影響を受けることは知られているが、交流損失特性へ及ぼす影響について研究が行われていない。交流損失は超伝導回転機の効率と安定性に直結するため交流損失特性の把握と低減が重要である。このような背景から本研究は回転機内を模擬した電磁環境における交流損失特性の調査を行い超伝導回転機設計に関する実用的な知見を得ることを目的としている。よって以下の4つの内容について調査を行うこととした。 ①鉄心が高温超伝導線材の交流損失特性に及ぼす影響への明確化 界磁巻線に使用される高温超伝導線材は金属中に埋め込まれているため、交流損失が生じる過程で金属の磁性の影響を受けることが予想される。このため線材レベルにおいて、線材の位置と溝の形状が交流損失特性に及ぼす影響について調査を行う。 ②回転磁界に晒された電磁条件における高温超伝導線材の交流損失評価 回転機内に生じる回転磁界に晒された電磁条件を模擬するために、回転磁界中に高温超伝導線材を配置し交流損失評価を行う。 ③レーストラック型高温超伝導コイルの作成 超伝導界磁巻線に使用される超伝導コイルはレーストラック状であることが基本であるため、レーストラック型超伝導コイルの詳細な交流損失特性を明確にする。 ④高温超伝導回転機内に配置された高温超伝導レーストラックコイルの交流損失特性評価と低減方法の提案 レーストラック型コイルと鉄心の位置関係が交流損失特性に及ぼす影響について評価を行う。実験結果をもとに配置方法、コイルの巻き方に関して定量的な評価を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度に行った変圧器中における交流損失特性を発展させ、高温超伝導線材を複数本積層したときの交流損失特性について実験的に評価を行った。具体的なアプローチとして、鉄心内に複数本超伝導線材を積層したものを挿入し、それぞれの線材に生じる交流損失測定を行った。また、これとは別にレーストラック型超電導コイルを作成し、レーストラックコイルの直線部分の一部を鉄心で囲いこの時の交流損失特性について測定を行った。 積層した条件における測定では、超伝導線材を3, 5本積層させ高温超伝導線材のそれぞれの表面に熱電対を配置し、交流損失特性の評価を行った。この結果より、単線の状態では損失は通電電流の値に対し3乗の傾きを示すのに対し、積層した場合には傾きが2乗近くになることが示された。また、損失の特性は内側よりも、外側の線材の損失が大きく生じることが示された。積層本数を増やすことにより、内側の線材の特性は鉄心の影響を受けにくいことが実験的に証明された。 レーストラック型超電導コイルの測定では、一部分を鉄心で囲ったことによる損失の変化を電気的測定法により評価し、鉄心で囲うことにより損失が通電電流に対し2乗の特性を示すことが示された。上記の線材を積層した特性とよく一致することから、これらの実験により損失特性が大きく変化し鉄心中では損失が増大し、コイルの最内層と最外層で特に損失が増加することが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度に実施した変圧器用鉄心内に挿入し積層した条件における交流損失特性が予想外の特性となったことにより、様々な検証実験を行った結果、調査に時間を費やした。また集中的に実験を行ったため27年度計画していた実験を先行して実施した。このため、回転磁界中における交流損失の実験準備が遅れたが全体としては順調に研究が推移している。26年度の測定結果をもとに鉄心内に挿入された超伝導コイルのどの部分で損失が増大するか示されたため、27年度は損失を低減するためのコイルの構成を提案する。これに伴い、提案に基づきレーストラック型超電導コイルを作成し損失低減効果について検討を行う。 また、回転磁界中における交流損失の評価のための装置の設計および評価を行う。すでに回転磁界発生用の装置を有するため、これを改良し超伝導線材に対し回転磁界を印加し損失を評価する計画である。
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Causes of Carryover |
本研究は鉄心を使用した研究と回転磁界中での評価を主として行っている。鉄心を使用した実験結果が予想と異なりこのため検証実験などを重点的に行い、次年度の研究内容を先行して行った。この結果、回転磁界中での評価は次年度行うこととなり、このため実験装置の購入が次年度にずれ込んだため助成金の使用計画に相違が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
回転磁界を印加するための実験を行うため繰り越した予算を当初の計画通り使用する予定である。
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