2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420286
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
市村 正也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30203110)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ワイドギャップ半導体 / 伝導型制御 / 光化学堆積 / 電気化学堆積 / ヘテロ接合 |
Research Abstract |
本研究では、この新しいp型ワイドギャップ半導体CuxZnySのデバイス応用を試み、同時にそのための基礎物性評価を行う。25年度は光化学堆積法を用いてCuxZnyS薄膜を作製し、基礎物性評価とpn接合作製それぞれについて、以下の成果を得た。 [基礎物性評価] オージェ電子分光法による化学組成分析、光電気化学測定による電気的特性評価、および透過率測定による光学的特性の評価を重点的に行った。特に、組成とバンドギャップおよび伝導型との相関を調べた。これまで報告したCuxZnySはp型の伝導性を示すが、ZnSはn型であるから、あるCu組成において伝導型が変化するはずである。そこで、Cu組成の小さなCuxZnySを作製し、伝導型を調べた。その結果、Cu組成比が0.5~0.7%を境界とし伝導型が変化することが分かった。銅の混入によってCu空孔が支配的な欠陥となり、p型伝導を示すと考えられる。 [pn接合作製] n型ワイドギャップ半導体薄膜とのヘテロ接合作製を試みた。n型層としては、ZnO、TiO2、ZnSを用いた。ZnOは電気化学堆積法にて作製した。ヘテロ接合は整流性を示し、弱い光起電力特性も観測されたが、CuxZnyS上に堆積したZnOはやや白濁し、透明なpn接合を得ることはできなかった。ZnOの白濁は表面形状の粗さによるものと考えられる。TiO2薄膜はTiO2のコロイド溶液より電気泳動法にて作製した。しかしTiO2上のCuxZnySは金属リッチな膜となり、透明な薄膜は得られなかった。ZnSは光化学堆積法にて堆積した。熱処理なしのZnS上にCuxZnySを堆積した構造では整流性が観測されなかったが、硫黄雰囲気で熱処理したZnS上のヘテロ構造では整流性が観測された。また可視光に対してほぼ透明であった。以上より、CuxZnyS/ZnS構造が透明なpn接合となることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
伝導型の決定要因理解とその制御のために不可欠な混晶組成と伝導型の関係を明らかにすることができた。溶液イオン濃度などの堆積条件と混晶組成の関係は単純ではないため、多くの堆積条件にて堆積を行い、組成を評価した。そして、ZnSの堆積条件から出発することでCu組成の小さなCuxZnySが堆積できることを見出した。それにより、伝導型が反転するCu組成を推定することができた。伝導型制御という点だけでなく、混晶組成の制御という点においても進展があったと考える。 pn接合作製に関しては、3通りのヘテロ接合の作製を試みて、結果的にZnSとのヘテロ接合において透明なpn接合ダイオードを得ることができた。特性は十分良好ではないが、透明なpn接合が得られたことで、CuxZnySを用いた透明デバイス実現へ一歩前進することができたと考える。ただ、光起電力特性が得られなかったことは残念である。CuxZnyS/ZnS構造は年度終わり近くになってから取り組み始めたため、条件を最適化するに至っていない。 以上より、基礎物性評価、pn接合作製それぞれについて重要な進展があったため、「おおむね順調」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎物性評価、pn接合作製それぞれについて、計画を以下に示す。 [基礎物性評価] 新しい混晶系であるCuxZnySでは相の安定性の検討が不可欠である。本研究ではCuxZnySは室温にて作製されているが、そのような低温堆積では準安定相が形成される可能性がある。またX線回折の結果よりアモルファスである。より高温の熱処理により、CuxZnySという均一な相が保たれ結晶化するのか、それとも二元化合物に相分離するのかを解明する必要がある。そこで、作製した薄膜を硫黄雰囲気および窒素雰囲気において熱処理し、化学組成分析およびX線回折により相の均一性を調べる。とくに、CuxZnyS結晶相の有無を解明する。なお、この実験においては電気化学堆積、光化学堆積の両方の方法で作製したCuxZnyS薄膜を用いる。 [pn接合作製]前年度までに、光化学堆積CuxZnyS/ZnS構造が透明なpn接合となることを見出した。しかし漏れ電流は大きく、また光起電力特性は観測されていない。実際、前年度は様々なヘテロ接合を試作しており、このCuxZnyS/ZnS構造もまだ少数の試料を試作した段階である。よってより良好な特性のpn接合作製のためには、ZnSの光化学堆積条件、熱処理条件の最適化をまず行い、ついでCuxZnySのCu組成などを変えながら実験を繰り返す必要がある。今年度は、光起電力特性を示す透明ヘテロ接合の作製を目指す。 また、電気化学堆積CuxZnyS薄膜のヘテロ接合作製に取り組む。これまでに、熱処理なしのCuxZnyS の上にZnOを堆積し、整流性を確認したが、光起電力は得られず、ZnO膜が白濁した。そこで、硫黄雰囲気で熱処理したCuxZnySでZnOとのヘテロ接合を作製する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品購入の予定であったが、予定より薬品等の消費が少なく、約4万円の残額が生じた。 金額は4万円であり、次年度の消耗品費に合わせて使用する。
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