2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420286
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
市村 正也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30203110)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CuZnS / ワイドギャップ / p型半導体 / 光化学堆積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、p型ワイドギャップ半導体CuxZnySのデバイス応用を試み、そのための基礎物性評価を行った。前年度は電気化学堆積CuxZnyS薄膜について相安定性を調べたが、27年度は主として光化学堆積CuxZnyS薄膜について相安定性を調べた。室温で堆積されるCuxZnyS薄膜は、電気化学堆積によるもの、光化学堆積によるものいずれもアモルファスであり、光電気化学測定においてp型の伝導性を示す。硫黄雰囲気中で400℃までの温度にて熱処理をしたところ、200℃まではアモルファスであり、またp型伝導性も熱処理前と同様に観測された。300℃からX線回折でZnS(111)回折ピークが現れ始め、熱処理によってZnS相の形成が確認された。Cu組成は熱処理温度の上昇とともに減少し、最初に5%程度であったが400℃熱処理後は検出限界以下になった。一方、光電気化学測定では、300℃処理によりp型の応答が弱まり、400℃熱処理後はp、n型の反応が同程度観測され真性状態であることがわかった。比較のため、Cuを含まないZnSを光化学堆積法にて堆積させ400℃熱処理を行ったところ、応答は明確なn型であった。したがって、CuxZnySの熱処理によりZnSが形成されるものの、Cuがアクセプタとして働き、伝導型に影響を与えていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
光化学堆積により作製したCuxZnySについて相の安定性を調べ、また同じ方法で作製したZnSと比較することで、添加不純物としてのCuの働きを調べた。前年度の成果と合わせ、作製方法が異なっても相安定性など基礎的な性質に変わりがないことも確認できた。このように、基礎物性評価については新たな知見が得られた。一方、pn接合作製およびデバイス作製については、ZnO、ZnSとの接合作製を試みたが、特性を向上させることが出来なかった。本来ならデバイス応用をもっと進展させるべきであったので、「やや遅れている」と評価した。 27年度には前年度の成果に基づき3編の論文を出版し、さらに1編が採択されている。また国際会議での発表も1件あった。研究成果の発信は積極的に進めることができた。また、本研究の開始時点ではCuxZnySを透明p型半導体として利用しようとする試みは皆無だったが、その後いくつかの研究グループが研究をするようになった。特に、メキシコ、インド、台湾、中国のグループは、その論文の中で本研究の論文を引用し、透明p型として研究する意義を主張している。このようにCuxZnySが注目を集めるようになってきたことは、本研究の成果といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
CuxZnySについては、基礎的な実験は終えたと考えている。前項で述べたように、この材料系の透明p型材料としての有用性を実証することはできたと言える。一方、pn接合デバイスへの応用については、他の研究グループの成果も参考にしながら、薄膜作製方法の見直す必要がある。 これまでの成果の発信も進めていきたい。28年度には国際会議での招待講演が1件予定されており、さらに論文をもう一編、投稿準備中である。 また、材料研究としては、本研究でこれまで得た知見を踏まえ、新たな透明p型材料の探索も行っていきたい。電気化学堆積、光化学堆積で作製した膜では、わずかな量のCuの添加で、常にn型を示していたZnSがp型になることがわかった。他のn型半導体でも同様の価電子制御(伝導型の制御)が可能かどうか、これから探ってみたい。
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Causes of Carryover |
これまでの成果をまとめ公表する作業が遅れている。現在論文作成作業中で、これから投稿予定である。また学会発表も行いたい。8月に海外で開催される国際会議にて発表(招待講演)する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際会議(インドネシア)への参加旅費、および論文投稿費用としての使用を予定する。また、発表準備に必要な追加実験の経費としても一部を使いたい。
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