2014 Fiscal Year Research-status Report
酸化膜に希土類元素を導入したMOS構造による紫外および可視発光素子の研究
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25420293
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
松田 敏弘 富山県立大学, 工学部, 教授 (70326073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 栄之 富山県立大学, 工学部, 准教授 (80223402)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 半導体 / 希土類 / 発光 / シリコン / MOS |
Outline of Annual Research Achievements |
シリコン系材料によってLSIと共存可能な紫外および可視領域のエレクトロルミネッセンス(EL)発光素子の開発を目指して、今年度は、希土類元素としてTb、Gd、PrおよびCeを導入した酸化膜を持つMOS型発光素子を作製し、物理的、電気的および発光特性の解析を行った。 [Tb]、[Gd]、[Gd+Ta]、[Pr+Ta]、[Pr+Ce]を含む有機コート材をSi基板にスピンコートした後、熱処理によって発光層を形成し、ITO電極をゲートとするMOS型発光素子を作製した。[Tb]の試料について、有機コート材塗布後の熱処理雰囲気中の酸素分圧比を20、90、100%と変化させた。また、容量-電圧(C-V)特性を測定し、パルス電圧(交流)駆動での発光特性について検討した。 [Tb]の試料では、熱処理雰囲気の酸素分圧比は、発光スペクトル形状には大きな影響を与えなかったが、酸素100 %で同程度の発光強度を得るためには熱処理時間を長くする必要があった。直流および交流のいずれの駆動方式でも明るい緑色のEL発光を確認した。発光スペクトル形状は駆動方式には依存せず、C-V特性の電圧依存性はほとんど見られなかった。 [Gd]、[Gd+Ta]、[Pr+Ta]、[Pr+Ce]のいずれの試料からも白色系のEL発光を確認した。[Gd+Ta]の試料の発光スペクトルは、300 nm付近の鋭いピークと、450 nmになだらかなピークを示した。[Pr+Ce]の試料では、350と480 nm付近にピークを持つスペクトルを示した。 [Gd+Ta]、[Pr+Ce]の試料について、断面TEMとXPSを用いて、発光層である希土類元素を含む酸化膜の断面構造と組成を解析した。酸化膜の表面には(Gd + Ta)/(Pr + Ce)-Si-O層があり、Si基板との境界までの下層には、よりSiリッチな希土類を含む酸化膜層が形成されていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希土類を導入した酸化膜を持つMOS型発光素子について、下記のように計画に基づいて研究を進めた。解析可能な紫外領域の波長範囲をさらに広げるために、新たな分光器を導入してEL発光特性解析システムを構成した。希土類元素としてTbを導入した試料で、熱処理雰囲気や、EL電圧駆動方式、I-V特性、C-V特性の検討を行った。また、Gd、Pr、Ce、Taを用いた試料から白色系の発光を確認し、EL分光特性を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
青から紫外領域の波長成分を持つEL発光を示すことが明らかになった希土類元素として、Gd、Pr、Ce等を導入したMOS型発光素子の作製と発光特性の解析を行う。また、Ba、Taなどのアルカリ土類金属や遷移金属などの元素の添加が、発光強度やスペクトルに与える影響を検討する。さらに、酸化膜形成後の熱処理追加も含めた熱処理条件を検討し、作製条件の最適化を図る。これらの試料について発光素子の酸化膜の表面からシリコン界面までのXPS、TEM等による物理的解析と、I-V特性等の電気的特性や交流電圧の印加による発光についての解析を行い、EL分光特性の結果も総合して、希土類イオンの励起・エネルギー遷移と発光機構について検討する。
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Causes of Carryover |
紫外領域に対応した分光器および入射光学系の整備を中心に行った。当該年度後半になって、Pr、Ce等の希土類元素の試料について青から紫外領域の発光が確認されたため、XPS、TEM等の分析を行う時間が不足した。次年度、速やかに分析を進め、研究を推進する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、Gd、Pr、Ce等の希土類元素導入し、紫外・可視領域での発光を示す試料を作製し、EL発光特性解析を行うとともに、酸化膜のXPS、TEM等の分析を進める。
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