2013 Fiscal Year Research-status Report
フレキシブル・フェーズドアレイ・アンテナ要素技術の研究
Project/Area Number |
25420316
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
佐藤 史郎 山形大学, 理工学研究科, 教授 (80511980)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フェーズドアレイアンテナ / 移相器 / マイクロストリップ線路 / 可変容量デバイス / 可変インダクタンスデバイス / 電磁界シミュレーション |
Research Abstract |
高周波帯で用いる指向性の高いフレキシブル・フェーズドアレイ・アンテナ実現に向けての要素技術の開発にあたり、H25年度は、当初計画の(1)可変容量デバイスの開発、(2)可変インダクタンスデバイスの開発の他、(3)新しい可変移相方式の探索を進めた。(1)可変容量デバイスの開発では、誘電率可変材料および誘電率可変機構探索の一環として、フレキシブルなポリマーについてガラス転移点の制御や外部刺激方法などの新しい基本技術の検討を進めた。また、これらを基に材料構造や動作機構および製造プロセスに関する設計を行った。(2)可変インダクタンスデバイスの開発では、フレキシブルなポリマーフィルム基板をベースとした相互インダクタンスデバイスを考案し、電磁界シミュレーションによりその基本特性解明を進めた。しかし、デバイスサイズが大きくなり、他の可変容量デバイスとの混載など基板への実装効率が低くなるなどの課題があることが判明した。(3)新しい可変移相方式の探索では、フレキシブルなマイクロストリップ線路を応用した新しい方式を考案し、電磁界シミュレーションによりその基本機能を実証した。さらに、印刷法によりデバイスの一部を試作してその特性を評価した結果、設計した移相可変機能をほぼ実現していることを実証した。この可変移相方式は、これまでに例のない新しい方式で、フレキシブル・フェーズドアレイ・アンテナ用として有望で、(1)の誘電率可変機構との組み合わせ技術も考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H25年度計画の(1)可変容量デバイスの開発では、フレキシブルなポリマーの可変誘電率材料と誘電率可変機構の考案を中心に進めた。考案した機構は、誘電率可変範囲の拡大、挿入損失の低減など、従来の液晶方式などに比べて良好な性能を示すものと期待できるが、現状では具体的な材料の作製・特性・評価には至らなかった。この点で、やや当初計画からの遅れがあるが、H26年度にはプロトタイプを試作し、液晶方式に勝る特性を実証したい。(2)可変インダクタンスデバイスの研究では、電磁界シミュレーションなど、ほぼ当初計画通りに進めた。しかし、コンパクト化が困難なことや、可変容量デバイスとの組み合わせ技術など当初から予想された課題を克服できる新しい機構を提案することができなかった。(3)これらに対して、新しい移相可変機構の考案は当初計画にない成果である。現状は基本構造に対する電磁界シミュレーションとデバイスの部分的な試作・評価による機能実証レベルであるが、簡素な構造で低損失な特性が期待できる。H25年度はH26年度開発予定の、印刷法によるデバイス作製技術の研究を前倒しして、この新しい可変機構にかかわるデバイスを印刷法で作製することに成功した。(4)上記のフレキシブルデバイスの高周波特性測定に対して、計器を除く一般的な測定機構はなく特殊であり、今回その治工具類等の測定方法の確立・整備を行った。以上にように、総合的には研究は概ね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度の成果を踏まえ、今後は以下のように研究を進める(1)可変容量デバイスの開発では、これまでの材料・プロセス設計をベースに具体的材料・構造・プロセス技術の最適化を進めてデバイスの試作・評価を行う。H25年度ですでに印刷法でのデバイス試作が先行しているが、H26年度はこの材料のインク化技術の開発、このインクを用いた印刷(塗布)技術の開発も合わせて行う。容量可変範囲の拡大、低損失化、省電力化等の機能・性能の改善は継続する。(2)新しい移相可変方式の研究では、個々のアンテナ素子と今回の可変移相器を組み合わせたアンテナユニットの設計・試作を行う。作製技術についても、スクリーン印刷法に加えてグラビアオフセット印刷法などについても試作も行い、印刷作製プロセスの課題を抽出する。(3)また試作したアンテナユニットに対して、高周波受信実験を行い、指向性利得向上に向けた課題を抽出する。(4)これらのアンテナユニットをアレイ化した小規模なプロトタイプ・フレキシブル・フェーズドアレイ・アンテナのパネル構造を考案・設計するとともに、効率的な指向性制御方法およびその機構について検討を行う。(5)可変コンダクタンスデバイスの開発については、シミュレーションでデバイス構造と特性の概要を得たが、アンテナユニットに組み込む構造の着想が得られるまで研究を一旦凍結する。(6)以上の各要素技術を融合して、フレキシブル・フェーズドアレイ・アンテナの実用化に向けた技術課題の総合的な検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度の計画を実行するにあたり、電磁界シミュレーションによりデバイス設計と機能検証を行うとともにデバイス試作はスクリーン印刷法により進めたこと、また材料開発については、新しい構造の考案や加工法の設計に重点をおいたことなどにより、材料費・試作費は予想より大きく低減することができた。 H26年度は、これまでの研究で開発すべき材料・デバイスのイメージがより具体的になってきたために、(1)材料・デバイス特性の特殊測定系の整備、(2)材料機能開発ための材料加工・評価実験、(3)グラビアオフセット印刷などによる新しい作製実験、などに重点的に使用させて戴く予定である。
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