2014 Fiscal Year Research-status Report
高効率増幅・整流デバイス開発のための高調波インピーダンス自動最適化システム開発
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25420323
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
石川 亮 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (30333892)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高周波 / マイクロ波 / 無線通信 / 無線電力電送 / 高効率 / 電力増幅器 / 整流器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、爆発的な増加の一途を辿る情報量を扱う無線通信技術、および次世代の多様なエネルギー需要に向けた無線電力伝送技術に対し、これらの実用化に欠かせない超高効率動作を実現する電力増幅器および整流器の実用的な設計技術を提供するものであり、そのための、新たに考案したトランジスタ素子真性部最適負荷インピーダンス導出システムの確立・高性能化、および、それに基づく高効率のDC-RF変換(増幅器)およびRF-DC変換(整流器)の設計理論の確立を目指すものである。 研究開始の前年度に基本的な原理を提案し、研究初年度では、提案設計手法の汎用性を示すために、化合物半導体のGaAs HEMT素子を用いて、2.45 GHz帯および5.8 GHz帯で増幅器および整流器を設計・試作し、各々高効率動作が得られることを実証し、また、機器導入によるシステムの精度向上および高電力化を図ったが、今回の2年目の年度では、課題であったトランジスタ寄生容量の非線形特性の影響への対策に関して、その非線形特性をより実用的に設計に組み込んで最適インピーダンス値を導出する手法を新たに考案し、その手法の手順および基礎検討に関して、5.5 GHzで80%の高効率動作を実証したGaN HEMT 増幅器の設計・試作結果を用いて検証を行い、実現可能であることを確認した。また、実際に使用するトランジスタの寄生容量の非線形のモデリングを行い、それを本手法に組み込んで最適インピーダンス値を導出し、線形近似で得たインピーダンス最適値との間に差が生じることを確認している。さらに、種々の高調波処理回路を用いた高効率増幅器の設計・試作を通し、電磁界シミュレーションによる設計結果と実測結果との比較を行うためのサンプルデータの収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、主に寄生非線形容量の考慮に関する解析に関して検討を進めた。回路内に非線形要素が含まれると解析的に解を得るのは格段に難しくなる。そこで、非線形素子を含めた回路シミュレーションは容易であること、さらにトランジスタ素子真性部最適負荷インピーダンスの導出時の最適動作時での大信号電圧・電流波形が利用可能であることに着目し、真性部での電圧・電流波形が最適動作時と同形になるように基本波および高調波に対する信号源および負荷インピーダンスを調整することで、トランジスタ寄生成分に非線形素子が含まれていたとしても、外部に接続する回路の最適インピーダンス値を得ることが可能となる。先ず一連の手順を確認するために、従来手法で設計・試作した高効率GaN HEMT増幅器の結果を用いて検証を行い、トランジスタの寄生成分の抽出を経て、シミュレータの最適化機能による目標値の導出が可能であることが確認された。また、実際のGaN HEMT素子について非線形容量の回路モデル作成を行い、提案手法により外部回路の最適インピーダンスを導出し、線形近似である従来手法での結果と差が生じること、さらにはシミュレーションにおいて提案手法の方が高効率となるとの推測結果を得た。 もう一つの課題であった高調波処理回路の設計に関しては、設計精度向上が課題であったが、とりあえず問題点洗い出しのため、種々の高調波処理高効率増幅器を試作・評価し、検証のためのサンプルデータを集めた。傾向としては、基本波2.6 GHz程度では2倍波まで考慮した回路の設計値と測定値は比較的良く一致しているが、基本波5.8 GHzの場合は特に3倍波以上で差が大きくなることが確認された。 以上より、本年度は、一番の難関であった非線形を考慮した設計に関する見通しが立った、という点で本提案手法の実証に関して大きく前進したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては、残されている以下の課題を行う予定である。 トランジスタ寄生容量の非線形特性の考慮に際し、実際に増幅器・整流器を試作し、その有用性を確認する。シミュレーションでは非線形寄生容量を考慮した設計手法の有用性を確認したが、実測での評価はまだであるため、引き続き検証を進める。この検証には次項の高調波処理回路の精度向上も関わってくるため、並行して進めることになる。 高調波処理回路の設計精度向上に関する検討を進める。この検討内容の一番の問題点は、電磁界シミュレーションの結果と測定値との間にずれが生じる点である。こちらはサンプルデータが収集済であるため、測定方法の検証、種々の電磁界シミュレータを用いた比較検討(現状で3~4種類の異なるシミュレータでの比較が可能な環境である)を行い、両者に差が生じる原因の解明および、差をなくすための方法の検討を行う。また、回路構成の方法でも差が生じやすい場合と差が生じにくい場合があることが確認されており、差が生じにくい回路構成法に関する検討も行う。 以上の結果を基に、当初の目標であった、高出力GaN HEMT素子を用いた5.8 GHzでの高効率増幅・整流デバイスの設計・試作を行う。トランジスタを用いた増幅器および整流器の設計方法は、ドレイン側に関しては全く同じであるため、ゲート側の回路の調整を除き、設計は1つのトランジスタに対して1回で済む。 以上の課題に加え、真性部最適負荷インピーダンス計測システムの自動プログラム作成を行う。こちらは、システムの基本構成は確立済であるため、上記課題とは独立して進めることができる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究室経費の都合上、一部物品費および旅費を別経費で支出したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額はセラミック基板試作費にあてる予定である。
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Research Products
(2 results)