2014 Fiscal Year Research-status Report
センサネットワークに高精度超音波計測を導入した介護環境等での動き検知システム
Project/Area Number |
25420340
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
疋田 光孝 工学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00407157)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超音波 / 超音波センサ / 動き検知 / 超音波モニター / 超音波距離計測 / 介護環境 / 介護環境モニター |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、センサネットワークをベースに病院や要介護者住宅のモニターを超音波を用いて行う研究を進めている。病室における患者のモニターや独居老人の住状況のモニター等は今後益々重要になる。現在は主に、①起床時前後での家電器具の電源のON/OFFをモニターするなど極めて間接的な検知方法、②CCDカメラ等により病人や住人の動きを監視する極めて直接的な手法が採用されている。前者は精度的な面で課題が多く、後者はプライバシーの面で用途は限定される。本研究は、これ等の課題に解決を与える。ON/OFFモニターに比べ精度は極めて高く、CCDカメラに比べるとヒト等の動きは検知するが人物像は示さない。手段は新しい高精度な超音波距離計測法を応用するものである。センサノードの一部として超音波送受信機能を搭載し、一対のノード間でIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)周波数に対応したCW超音波を送受信する。送信に対する受信超音波の相対振幅/相対位相を求めZigBee等でセンターノード(別電源で動作)へ送る。そこで一括IFFT処理を行うことにより、反射物体を介した送受信トランスデューサ(ノード)間のインルス応答を導出する。時間が若干異なる上記の2つのインパルス応答間の差を求めることで静止物体の影響を消去し、ヒト等の動きのみを抽出し、フォローする。シミュレーションと基礎実験により実現の可能性を示した。今後介護環境等を想定した実験系を構築し、更に具体的な評価を行う予定である。 従来のパルスエコー法による超音波距離計測の高精度化には、符合拡散方式、チャープ信号方式がある。しかし、どちらも送受信側で重い信号処理が必要で、電池1ケで数年の動作が要求されるセンサノードには採用出来ない。また、ヒト等の動きの検知には適用出来ない。従って、本研究はこれらの点からも非常に期待されるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
良く用いられる40kHzの超音波では、波長は8.5mmとなり、電波ではミリ波の領域に対応する。超音波の反射、散乱、回折等およびそれらによる減衰に関しては、電波と同様種々の検討が必要であるが、詳細な報告は無い。40kHzの超音波を想定し、ミリ波の車載レーダーの受信電力の概念を適用し、我々の提案の実現可能性をシミュレーションした結果、フィージビリティを確認出来た。一対のセンサノード間でIFFT周波数に対応したCW超音波を送受信し、送信に対する受信超音波の相対振幅/相対位相を求め、ZigBee等でセンターノード(別電源で動作)へ送る。そこで一括IFFT処理し、反射物体を介した送受信ノード間のインルス応答を導出する。時間差を置いた2つのインパルス応答間の差から静止物体の影響を消去し、ヒト等の動きをモニターする物である。シミュレーションでは、極めて正確に動きのみを抽出出来ることが分かった。 実環境に近い実験を行うため、疑似的な送受信用のセンサノードとIFFT処理を行う疑似センターノードを設計/試作した。構成の特徴は現実の複雑な住環境に対応出来る自動化された測定/評価系にある。①PCによりロックインアンプを制御し、38~42kHzの50HzキザミでIFFT周波数に対応する信号を生成する。②信号は増幅器を介してトランスデューサから超音波として送信する。③受信トランスデューサは受信信号を増幅後再びロックインアンプへ入力する。④ロックインアンプでは、送信信号を基準に受信信号の相対位相と振幅(I, Q成分)を抽出する。⑤相対位相と振幅データは、ロックインアンプからPCへ送られそこでIFFT処理し、インパルス応答を求め表示するものである。本装置を用い、実際に簡単な評価用環境を作成し動作実験を行ったところ、インパルス応答に関してはシミュレーション結果に非常に近い結果が得られ、本研究の基本的な方針が正しいことが確認出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、複数の反射物体に対する若干時間の異なる距離計測結果の差より静止物体の影響を消去し、動く物体のみを検知する実験を行い本提案の最終目標の達成を目指す。各センサノードでは、送信波に対する受信波の相対振幅と位相をZigBeeでセンターノードへ送るが、これには今年度開発したロッキングアンプをベースとしPCで制御する疑似センサノードとセンターノードを用いる。ただし、ZigBeeを用いたAir部分に関してはまだ構築しておらず、ケーブルを用いた直接接続で実現を図る。センターノードでは一括IFFT処理し、更に時間を追ってインパルス応答の差を蓄積し、これ等の差の変化からヒトなどの連続的な動きを特定する。これに関しては、ロッキングアンプ制御用のPCにロッキングアンプから、送信信号を基準に受信信号の相対位相と振幅を送り返し、疑似センターノードであるPCにてIFFT処理を行うことでインパルス応答を求める。PCでロッキングアンプを制御し、引き続き若干の時間を置いて同様のプロセスを繰り返す。更に、異なる時間のインパルス応答間の差をPC内に蓄積する。これにより、静止物体の影響を消去し、動物体のみを表示出来る。 今後は、上記の本研究の核心的な点のフィージビリティを確認する。これらが確認出来ると、本提案の手法では、IFFT処理は専用アルゴリズムをマイクロプロセッサで演算するため電力も消費するが、これは別電源で動作するセンターノードで行う。センサノードでは、信号生成、超音波の送受信、受信信号の相対振幅/位相の決定を行なうのみであり、極めて低消費電力化が可能である。センターノードに集約されるデータの変化から要介護者等の動きをモニターし、最終的には動きのディスプレー表示も可能である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、本研究の最終年度に当たるため、実験による大掛かりな確認を行う予定である。そこで必要となる費用を確保するため研究費の一部を次年度へ持越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品購入の一部に組み入れる予定。
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Research Products
(8 results)