2013 Fiscal Year Research-status Report
高信頼性通信ネットワークの構築に向けたマルチユーザ情報理論の精密化
Project/Area Number |
25420357
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
八木 秀樹 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (60409737)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 情報理論 / 通信路符号化 / 符号理論 / 通信路容量 / 2次符号化レート / 情報セキュリティ |
Research Abstract |
従来,定常かつ無記憶な条件付き確率によって特徴付けられる定常無記憶通信路において,漸近的な最適符号化レート(通信路容量)が,1時点あたりの相互情報量の最大値で与えられることが知られている.通信路容量が符号長には依存せずに表現できることは,符号化レートの最適値が実時間で計算可能となるという意味で実用上重要である.また,定常無記憶通信路においては,復号誤り率をε>0 まで許容したとしても,最適符号化レート(ε通信路容量)は,通常の通信路容量と変わらないことが知られている. 一方,有限個または可算無限個の定常無記憶通信路の混合確率分布によって与えられる混合無記憶通信路においては,ε通信路容量は通常の通信路容量よりも大きくなることが知られている.混合無記憶通信路は,無線通信システムで重要となるフェージング通信路の最も簡単な数理モデルであることが知られており,理論と実際の両面から重要である.本研究では,混合無記憶通信路に対してε通信路容量の符号長によらない表現式を導出した.導出した表現式により,各要素通信路の相互情報量の分布関数値がちょうどεになる閾値でε通信路容量が与えられることを示した.また,符号化定理の導出の際に,符号長を有限に留めた際の復号誤り率の上界式と下界式を示している.特に復号誤り率の下界式に関しては,meta converse 下界式と呼ばれる,現時点で知られる最もタイトな下界式の混合通信路に特化した形を与えた. また,各要素通信路間に相互情報量による順序付けが可能な混合無記憶通信路(Well-ordered 通信路)に対して2次符号化レートの解析を行った.ここで,2次符号化レートは最適な符号化レートが符号長の増大と共に通信路容量に近づく速度を表わす量である. これらの研究の成果は,マルチユーザ通信システムにおける符号化性能の精密化の基盤となると期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,マルチユーザ通信路における符号化の性能解析を目標としているが,マルチユーザ通信路における解析のための理論的道具が揃えられていない状態である.そこで,シングルーザ通信路を対象として,理論的道具を構築してからそれらの結果をマルチユーザ通信路に拡張するよう,研究予定を修正した. シングルユーザ通信システムにおける符号化定理の精密化に関しては一定の成果が得られている.特に,無線通信システムの数理モデルとして知られる混合無記憶通信路に対するε通信路容量の特性化に関する成果は,一方の符号器が他方の符号器の送信メッセージを観測できる2対1の多重アクセス通信路に直ちに拡張することが可能である.このように,マルチユーザ通信システムにおける符号化性能の解析に向けて,理論的道具が揃いつつあると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
シングルユーザ通信路に対して行った研究成果のさらなる精密化とマルチユーザ通信路への拡張を目指す.特に,シングルユーザ通信路システムにおいては,定常無記憶通信路に対する2次符号化レートの理論限界が既に知られている.本研究では,Well-ordered通信路と呼ばれる混合無記憶通信路の部分クラスにまで2次符号化レート解析を拡張している.今後は一般の混合無記憶通信路に対する定理の確立を検討する.まず,理論限界の可到達性を示す定理を先に解決する.定理の証明で鍵となるのは,理論限界の不到達性を示す定理の証明であるが,この証明は簡単ではないことが予想される. また,2送信機・1受信機の通信システムのモデルとして知られる多重アクセス通信路に対して,シングルユーザ通信路に対して得られたε通信路容量の符号長に依らない表現の確立,有限長解析,2次符号化定理の確立を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に使用できなくなると予想された物品がまだ使用が可能であったため,平成25年度は購入しなかった. 使用できなくなる物品が発生するため,平成26年度に物品費として使用する.
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