2013 Fiscal Year Research-status Report
強度変調による光無線OFDM方式のための偏光を用いる省電力伝送法
Project/Area Number |
25420364
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大内 浩司 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50313937)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光無線通信 / 直交周波数分割多重 / 円偏光 / 背景光 |
Research Abstract |
光無線通信では光の強弱を利用した変調方式が主流である.そのため,負極性信号を伝送する際は直流成分の付加が必要となる.これは特に,振幅変動の大きい直交周波数分割多重(OFDM)方式を光無線通信に応用する際に問題となる.本研究では,この問題の克服を目的として,主に円偏光を利用する光無線OFDM方式(以下,本方式)の研究を進めている.平成25年度の研究実績の概要を以下に示す. ・本方式の基本性能解析として,ビット誤り率の解析を計算機シミュレーションに基づいて行った.その結果,必要な送信電力を従来方式よりも約7dBm程度少なくできることを示し,電力効率の改善が期待できることを明らかにした. ・本方式では,正極性と負極性の信号を分離してそれぞれを右回りと左回りの円偏光で伝送する.各信号は歪んだ信号となり,本来のOFDM信号よりも帯域幅が広がる.送信信号を低域通過フィルタで帯域制限したときのビット誤り率をシミュレーションにより解析した.その結果,約2.3[dBm]の送信電力の増加が必要となるが,正規化帯域幅を1.00に維持できることを明らかにした. ・本方式では,背景光の影響でビット誤り率が大きく劣化する問題がある.そこで,受信信号から背景光を推定し受信信号から減算する方法を考案した.この方法により,本方式における背景光の推定が有効に機能し,誤り率の劣化を軽減できることを明らかにした. ・本方式では,円偏光を利用して情報を伝送するため,偏光状態が伝送路でどのような影響を受けるかを考慮する必要がある.そこで,偏光が伝搬距離によってどのように変化するかについて,文献の調査を進めた.現在,この調査をもとに,伝搬による偏光状態の変化を考慮して,本方式の通信性能の解析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は,偏光を用いる光無線OFDM方式の基本性能の解析を計画した.当初,直線偏光の利用を想定していたが,解析を進める中で円偏光の利用が有利であることが判明した.そのため,円偏光を利用する光無線OFDM方式(以下,本方式)を研究の中心に位置づけた.本年度は主に以下の事項を行った. ・送受信機間の回転角の影響の解析:直線偏光を用いる場合,送信された偏光を受信側が正しく検出するためには送受信機間の偏光の方向が合うように正対させる必要がある.理論解析により,送受信機間に回転角が存在する場合に起こるビット誤り率の劣化を評価した.また,円偏光を利用することにより,回転角の影響を回避できることを理論的に示した.以上の通り,計画を達成できた. ・クリッピングの影響の解析:本方式では,OFDM信号を正極性と負極性の部分に分離して,異なる偏光で伝送する.そのため,各偏光で送られる信号は本来のOFDM信号の半分をクリッピングした信号になる.この状況をシミュレーションによって解析した.その結果,クリッピングによって帯域外輻射が起こるのを確認した.また,低域通過フィルタによって帯域外輻射を抑えた場合,抑制前と同等のビット誤り率を維持するには約2.3[dBm]の送信電力の増加が必要となることも判明した.しかし,従来方式で必要であった直流成分の付加が本方式では不要なため,上記の電力増加を加味しても,従来方式よりも省電力化が図れることを明らかにした.以上の通り,計画を達成できた. ・本方式の試作準備:本方式の試作のための準備・予備実験を行った.現段階では,PICマイコンによるLEDの点滅制御などによる簡易な送受信機を構成している.今後,高速に動作する機材によってOFDM方式の送受信機を構成することを考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は,平成25年度に行った基礎的な検討を踏まえ,円偏光を利用する光無線OFDM方式(以下,本方式)の応用的な検討に着手する.主に以下の事項に取り組む. ・偏光が受ける伝送路の影響の解析:本方式では円偏光を利用して情報を伝送するため,偏光状態が伝送路でどのような影響を受けるかを考慮する必要がある.現在,偏光が伝搬距離によってどのように変化するかについて文献調査している.これに基づいて,伝搬による偏光状態の変化を考慮した本方式の通信性能の解析を進める. ・ビット誤り率特性の理論解析:本方式におけるこれまでのビット誤り率の解析は,主にシミュレーションに依っていた.そのため,理論によるビット誤り率の解析も進め,シミュレーションの結果と比較検討を行う. ・ピーク電力対平均電力比の削減:OFDM方式では,送信信号の高いピークが発生するため,ピーク電力対平均電力比(PAPR)の削減が一つの研究課題となる.電波無線通信におけるPAPR削減方法を本方式に応用するなど,有効なPAPR削減方法を模索する. ・符号分割多重方式への応用:偏光を利用して正・負極性信号を分割伝送する本方式の原理は,OFDM方式以外のブロック伝送方式へも応用できる.強度変調・直接検波方式はパルス伝送技術との親和性も高いことに着目し,符号分割多重(CDM)方式へ本方式の原理を応用することを進める. ・複数の送受信機の活用:複数の光源を有効に活用する通信技術の検討を行う.空間変調技術やMIMO技術と本方式を組み合わせる研究に取り組み,通信性能の向上を図る.
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